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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
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抜刀術

2018.9.3修正

ゴンゾウに連れられて城の北側にある抜刀術道場にやって来た。ちなみに武術道場は東側にある。

「こちらがナルミ抜刀術の家元シロウ=ナルミ師範です。」

「ナルミ=シロウでござる。よしなに。」

そこには全身からオーラを発した老人がいた。一目で強いと分かる。世の中は広いな。

「私は魔導師のハリムだ。この子はリーユー。こう見えても凄腕の魔導師だ。」

「あたしはエマ。双剣使いだ。」

「ほぅ。魔導師に双剣使いでござるか。」

「私は魔導師だが、多少剣は嗜んでいる。最近、カタナに出会って惚れ込んでしまった。是非ご教授願いたい。」

「ハリム殿からは強者の匂いがするでござる。あとで手合わせ願えるのであれば、拙者の抜刀術をお見せしよう。」

「それは願ってもないこと。是非に。」

「では、こちらへ。」

道場に上がる。武術道場は畳とか言う草をあんだ絨毯であったが、こっちは板の間だ。道場には庭があり木や石や岩、白い砂で綺麗に整えられている。池はない。壁の近くで腰を下ろし隣にリーユーを座らせる。その隣にエマが座った。この道場には今、私とリーユーとエマとシロウ殿しかいない。

「では。」

シロウ殿が集中していくのが分かる。空気が重い。と思った瞬間鞘から抜きながら空中を切り両手に握り直して斜めに切り下ろした。速いっ。

「なっ。」

エマは驚いている。エマには抜いた瞬間も両手に握り直したところも見えなかったのかもしれない。私にもギリギリだった。鞘の内側でカタナを滑らせて加速させているのかな?私にその発想はなかったな。刃の返し方も参考になる。それにしても動きが清廉され尽くしていて最早芸術である。

シロウ殿はカタナを抜いたまま庭に降り、ひとつの大きな石の前に行き上段に構えた。

「さすがにあれは無理だろ。」

エマ言うが切れるんだろうな。と割りと軽く考えていた。起きたことは予想の斜め上をいっていた。

シロウ殿はゆっくりとカタナを振り下ろしたように見えた。私もそのスピードでは無理だと思ってしまった。シロウ殿がゆっくりと振り切ったあとカタナを鞘にカチンと収めた。すると大きな石が真っ二つに切れたのである。

「なっ。」

今度は私が言ってしまった。

「そんな馬鹿な。あんなにゆっくり振り下ろしたのにどうして?」

エマは言う。私もそう思う。だが、たぶんゆっくりに見えただけなのだ。どういう原理なのだろう?

「どうでござったかな?」

「これは素晴らしいものを見せて頂いた。予想よりはるかに凄かった。感服いたした。」

「ああ、すげぇ、すげぇよ、じいさん。」

エマも大興奮だ。

「ではお手合わせ願えるでござるか?ここでは真剣での戦いは禁じられているので木刀でになり申すが。」

「是非お願いする。」

私は立ち上がって外套を脱いだら、シロウ殿が木刀を1本渡してきた。

「ハリム、頑張れよ。」

エマが応援してくれる。いつの間にかリーユーはエマの膝を枕にして寝ている。リーユーには早かったかな。


道場の真ん中に行っていつも剣を構えるように中段に構える。さすがに身体強化は使わない。シロウ殿は私の正面で先ほど見せた抜刀の構えだ。よし、こちらからと思ったときだった。

カーン

木と木がぶつかる音がして私の木刀は飛ばされていた。いつ動いた?

「もう1回お願いする。」

「いいでござるよ。」

私は飛ばされた木刀を拾い、また中段に構えた。シロウ殿は今度は上段だ。さっき石を切った構えだ。シロウ殿がゆっくり切り下ろしてくるのが見える。避けないとと思う。だがなぜか身体が動かない。気付いたときには左肩を打たれていた。真剣だったら死んでいたな。

「強者の匂いがしたと思ったがこんなもんでござるか?それとも拙者を老人と思って侮られたか?」

「いや、失礼した。次こそ本気を出させて頂く。」

私は身体強化の3段階目、魔力循環法が1段階。武器に魔力を巡らせて2段階目。3段階目、脳のリミッターを外す。これを使うと全てがスローモーションだ。使いすぎると廃人になるだろう。

また中段に構える。シロウ殿は抜刀の構えだ。木刀が向かってくるのがはっきり見える。3段階目を使ってもこんなに速いのか。速いというより極限まで無駄を省いて最短で切るといった感じか。普通じゃ見えないわけだ。シロウ殿の木刀を避け、脇腹に私の木刀を叩き込んだのであった。


戦い終え、シロウ殿と道場で話す。

「いや、お強い。あんなに綺麗に1本取られたのは何年ぶりでござろうか。」

「いや、シロウ殿も強かった。先に2本取られましたからな。人族でこの領域に達するとは感服いたします。」

いや、本当に強かった。いい経験が出来た。

「今まで刀のために生きてきたでござるが、拙者もあと10年も生きられまい。しっかりとした後継者がいないのが心残りでござる。」

「後継者がいないのか?」

「今のところ免許皆伝できる者はござらん。18歳になる孫娘が今までで1番素質を見せておるが、拙者の命が尽きるまで教えきれるかどうか…」

「大丈夫。きっと間に合うでしょう。それより孫娘とは?」

シロウ殿は老人だが渋くてカッコいいからな。孫娘もさぞかし美人だろう。

「じいさん、ダメだ。この男はドラゴンまで孕ませる危険なやつなんだ。孫娘がかわいいなら絶対に紹介したらダメだぞ。」

ちっ、エマめ。余計なことを。お前はリーユーをあやしていろ。

「はっはっはっ。ドラゴンを孕ませるとはなんと豪胆な。孫娘が連れてくる男もそれくらい豪胆であってほしいものでござるな。」

「シロウ殿の孫娘なら大丈夫ですよ。」

「25になっても貰い手がなかったら貰ってやってくれませぬか?」

え?いいの?

「まじか、じいさん…」

エマもびっくりしている。

「拙者から1本取れる者はなかなかいませんからな。拙者としてはハリム殿に貰ってもらいたいのでござるが、25までは言うこと聞かないでしょうからな。」

「じいさん。こいつ女も子供もいっぱいいるぞ。考え直せ。」

「はっはっはっ。大陸は一夫一妻制でござるか?ここは一夫多妻制であるから問題ござらん。」

「あちゃー。」

「まぁまだ会ってないからな。シロウ殿と孫娘さんの顔を見にたまに訪れるよ。」

「待っているでござる。」

シロウ殿に魔王の話をしておこうかな。

「実は15年後に魔王と喧嘩することになったんだ。」

「ほぅ、魔王でござるか。1度お手合わせ願いたいものですな。やはり強いのでござるか?」

「私は戦ったことないのだが、私の師匠に当たる人が昔負けている。強いのだろう。」

「なんと。それでは拙者では歯が立ちませぬな。」

「いや、シロウ殿が私の考案した身体強化魔法を使えば、たぶんいい線行くのではないだろうか。私がシロウ殿から1本取れたのもそれのお陰。地力では負けていた。」

「ハリム殿が考案したならそれはハリム殿の力でござる。しかし、それならば是非ハリム殿から身体強化魔法とやらを習って付いて行きたかったでござるな。30年いや20年拙者が若ければ…」

やっぱり15年後は難しいよな。

「拙者、これから孫娘を本格的に鍛えますゆえ、7年後連れて行って身体強化魔法とやらを教えてやっては貰えぬか?」

「孫娘さん大丈夫なのか?」

「まぁ7年後を楽しみにしていてくだされ。拙者の夢を孫娘に託すででござる。」

「あんまり無理しないようにな。」

私とエマと完全に眠ってしまったリーユーは外で待っていたゲンゾウと合流して武術道場へ向かったのであった。


「ゴンゾウはどうして入ってこなかったんだ?」

気になったので聞いてみた。

「いや、某も昔シロウ師範に教えてもらってたんですがね、なんというか苦手で。無口ですからな。」

「無口?」

「じいさん、最後の方はめっちゃしゃべってたぞ。」

エマは言う。私もそう思う。

「ええ、話し声がかすかに聞こえてきました。ハリム殿は気に入られたんでしょうな。」

「まぁそうだろうな。孫娘を嫁にやるって言われたし。」

「な、キキョウ殿をですか!?」

「キキョウっていうんだ。綺麗なのか?」

「それはもう。この『フジ』の国1の美人だって噂もあるくらいですよ。」

「ほぅ、それはいいことを聞いた。会うのが楽しみだ。」

そんな話をしている間に武術道場に着いたのであった。

重畳という言葉は使うのに畳を知らないとはこれいかに。

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