『フジ』の国の謁見
「私はクリミド商国の者ではありませんが、関係者、魔導師のハリムと申します。この立って座ろうとしないのが白竜姫マリアム。私の妻です。」
城に着くと1階にはある謁見の間?みたいな広い部屋に通された。ここで『フジ』の国の王…殿様というらしいがその人に挨拶をしている。この部屋の床は草で編んだ絨毯のようなもので出来ていて座って謁見するスタイルの様だ。私は部屋の両側に座る立派な服を着た騎士?たちの真似をして座ったのだが、マリアムは頑なに座ろうとしない。郷に入れば郷に従えだよ?
「よいよい。余の名は『フジ』の国の支配者、ヨシカワ=ミツムネと申す。以後良しなに。そちらの言い方ではミツムネ=ヨシカワであったかな?」
「この国ではファーストネームが後なのですか?」
「そうじゃそうじゃ。して、その可愛らしいおなごはドラゴンなんだとか?」
「はい。ですが、何もなければ大人しいやつです。なっ。」
「ふん。子供じゃないんだ。むやみやたらと暴れたりするもんか。」
「すみません。態度がでかいやつでして…」
「よいよい。種族の格で考えたら余が頭を下げねばならぬところじゃからな。」
「ご理解頂きありがとうございます。こちらをお納めください。」
私は魔導具や宝石、剣などを献上する。
「魔導具の使い方はここに案内してくれた兵士…に説明してあります。」
「おお、ゴンゾウよな。彼らは兵士ではなく武士と言うのじゃ。この両脇に控えるのは侍。そちらの大陸では騎士だの。この品々有りがたく頂こう。して、ご用件は?」
「大したことはありません。仲間を連れて観光致したく思います。」
「そんなことであれば存分に観光するがよい。ゴンゾウを案内に着けよう。して仲間とは?そこのマリアム殿だけではないのか?」
「ええ、一旦帰って仲間を連れて戻って来ようかと。」
「それであったら二ヶ月後かや?いや、飛べるのであったな。1週間後くらいかや?」
「いえ、転移魔法というので往復するので明日の朝には帰ってくるつもりです。」
「なんと、そのようなことが可能なのかや。魔法というのは便利よな。この国では鬼たちが多少使う程度で人間は使わぬ。その代わり抜刀術や武術が発展しておってな。」
「な、なんと。抜刀術とはカタナを使った剣術でしょうか?是非お教え願いたい。武術も習わせたいやつがいます。このマリアムも…マリアムには必要ないか?」
「いや、武術というのは侮れぬ。身体の使い方を合理的に突き詰めたものであろう。是非教えろ。」
「マリアム、お前それが人にもの頼む態度か?」
「よいよい。城の横にある道場に武術の達人がおる。1度見ていくとよい。」
いい殿様だな。
「わらわは早速習ってくるぞ。ハリムはひとりでみなを連れてこい。」
「おまっ。いいですかね?」
「よいよい。マリアム殿の寝床も用意させよう。普通の寝床でよいのかや?」
「ええ、普通で大丈夫です。本当にありがとうございます。マリアムっ、絶対に人殺すんじゃないぞ。半殺しもなしだ。」
「わかっておる。わらわはミザリではないぞ。型を習うだけじゃ。」
心配だが、マリアムがこうなったら聞かないからな。
「では帰ります。明日はここに来ればいいですか?」
「いや、武術道場でゴンゾウを待たせておくゆえ、そちらへ。」
私は一旦城を出てランペドの屋敷へ飛んだのであった。
「じゃあ、ヤンとリーユーとミザリとエマな。ナタリアとエドワードとカミールはいいのか?」
ランペドの屋敷で夕食の際、行きたい人を聞いたらこの4人が勢い良く手を上げた。アンナやサラとはゆっくりデートしたいからまた後日。エマはいいのか?とクリスを見たら仕方ないという感じで首を振っていた。
「私は魔力循環法が少し分かってきたところなのでここでクリスさんに教えて貰いながら集中したいです。」
「僕はハリムさんの書いた魔導書が面白いからもうちょっと読みたいです。また連れて行ってもらえるんですよね。」
「ああ、サラたちも連れて行ってやりたいしな。カミールは?」
「あい。ここにいる。興味ない。」
子供なのに冷めてるな。いや、もう30歳だったか。
「ミザリ。」
「はい。なんですか?ミザリは付いていきますよ?」
「もめ事起こすなよ。」
「起こすわけないじゃないですか。ミザリがもめ事起こしたことありますか?」
あるよ。ハイエルフの森でも起こしたばかりじゃないか。
「では、明日の朝出発するから行く人は今夜はゆっくり休むように。」
みんなに伝えると『月夜亭』に飛んでアンナに明後日空けておくように伝えてランペドの屋敷の自分の部屋に戻った。
「うわっ。」
「うわっとはなんですか。ミザリもそろそろ愛されたいです。」
「古城でさんざん愛し合ってるだろうが。」
「ミザリに何も言わずに出ていくハリム様が悪いのです。」
ミザリが抱き付いてくる。ミザリを抱き締め返しながら思う。今回の外出はいつも以上に激しかったなと。私枯れてしまわないよな?そんなことを考えながらミザリを優しくベッドに押し倒すのであった。
「では行くぞー。」
「「はーい。」」
私は『フジ』の昨日降り立った広場に転移した。ここから武術道場まで歩く。いい観光になる。町民たちは見慣れない服を着た私たちをジロジロ見ている。ここの服を借りた方がいいかな?仲間たちもオール木造いや、屋根にだけ陶器や植物を乾燥させたものを使っているが、自分たちの国ではまず見れない建物の数々にキョロキョロしっぱなしだ。まさに異世界だもんな。植物の屋根、雨漏りしないのかな?
「おーい。」
武術道場らしき大きな建物の近くに行くと昨日の武士ゴンゾウが手を振っているのを見付けた。
「昨日は名乗りませんでしたな。某はゴンゾウと申す。ミツムネ様に案内役を賜った。」
「ああ、ミツムネ殿から聞いている。よろしく頼むよ。で、マリアムは?大丈夫だった?」
「大丈夫なようです。この中です。どうぞ。」
ゴンゾウが扉を開けてくれる。横にスライドさせる木の扉だ。
「やっ。やっ。とう。」
中からマリアムの掛け声が聞こえてきた。中を覗くとマリアムがこちらの白い服に身を包み。武術の型をやっていた。動きが止まると武術の達人らしき中年の男性が悪かったところを指摘する。マリアムは汗びっしょりだ。
「オレもやりたい。」
ヤンは見ていてウズウズしたのか参加したいようだ。
「ヤンとミザリは教えてもらいなさい。」
「え?ミザリも?」
「ミザリも型を覚えるともっと強くなるよ。観光は午後からにしよう。」
ミザリは残念そうに抱いていたリーユーを私に渡した。
「オレはここだけでいいな。観光に興味ねぇ。」
「そういうと思って胴着を何着か用意してありますよ。」
ゴンゾウが言ってくれる。ヤンとミザリはその場で服を脱ぎ出す。
「こら、ミザリ。ヤンはいいが。お前はここじゃダメだろう?」
「え?ダメなのです?」
「女性が着替える場所があるだろう。あるよね、ゴンゾウ?」
「ええ、ありますよ。おーい。」
ゴンゾウは道場の女性を呼び、ミザリはその女性に連れられ着脱室へ向かって行った。
「では残りの方は抜刀術道場に行きますか?興味おありなのでしょう。」
「おお、是非お願いする。マリアムー。ヤンとミザリを頼むよー。」
「ああ、任せろー。」
マリアムから返事が来たので私とリーユーとエマは抜刀術道場に向かったのであった。




