『フジ』発見
「ここは?」
「ああ、ここは私が大規模な魔法の実験に使っている島だ。」
私がマリアムと飛んだのはクリミド商国から南南東、大陸の南東の端にあるアルバヤ連邦の東の沖、船で1週間くらいのところにある大きな無人島だ。私が何も考えず魔法をぶっぱなすにはちょうど良い。お陰で島の大半は草木も全く生えない。
「なんか見覚えがあるな。」
「そういえば、たまにはドラゴン型で戦いたいって言ったときに連れてきたんじゃなかったか?」
「ああ、そうだったそうだった。思い出したのだ。うっすら『神龍山』が見えるもんな。」
「私の視力では見えないよ。」
『神龍山』はアルバヤ連邦の南にある大きな森の中にある山脈の中の1番高い山だ。確か標高は1万メートルを超えていたはずだが、ここからは見えないはずなんだが…竜族の視力恐るべし。
「ここでするのか?」
「早速かよ。」
「その…もう我慢出来ないというか…その…」
マリアムの上目遣い。強烈だ。
「仕方ないな。そんな顔されたら私も我慢出来ない。おいで。」
草むらに寝そべり、私とマリアムの愛を育む戦いが始まったのであった。
「暗くなっちまったじゃないか。」
「仕方ないではないか。30年ぶりだったのだぞ。ハリムはいやだったのか?」
「いやじゃないよ。凄くよかった。しかし、この島は生き物も全くいなくなっちゃったから、食料がな。」
見付けたころは自然豊かな島だったのだが、悪いことしたな。
「ランペドで貰ってただろ?空間魔法で仕舞ってたじゃないか?」
「節約したかったんだが仕方ないか。なくなったらランペドに飛べばいいだけだしな。」
亜空間から食料を出す。まだ熱々だ。亜空間では時間が止まるのか、空気がないからかよく分かっていないが、死体の腐敗や食料の鮮度の劣化が進まない。マジックバッグでもそうだ。
「相変わらず空間魔法は便利だな。」
食料を食べながらマリアムが言う。
「マリアムも覚えればいいじゃないか。」
「実はもう覚えた。わらわも30年間遊んでいたわけではないぞ?」
「まじか。竜族が空間魔法とか強烈だな。」
「いや、まだ攻撃に転用は出来てない。亜空間を作れるようになっただけだ。」
「そうか。私もまだ小規模しか切れないから、一緒に練習しよう。対魔王のいい武器になるよ。」
空間魔法の攻撃はまさに空間ごと切り裂くため、たぶん防御は不可能だ。ただかなり難しい。私やシャーロットでも小規模の空間しか切れない。せいぜい指1本切れるくらいなもんだ。それでも急所に当たれば致命傷を与えられるだろうが、魔王はそんなに甘くないだろう。
「これからどうするのだ?」
食べ終わったマリアムが聞いてきた。
「ここを拠点に『フジ』を探そうと思ってたんだけど、暗いうちは無理だな。明るくなってから探そう。」
「ハリムの目は軟弱だな。暗いと探せないとは。」
「竜族や吸血鬼たちの目と一緒にしないでくれる?こうなるとミザリも連れてくれば良かったか?いや、ダメだ。あいつは必ず問題を起こす。まぁマリアムも起こすが二人だとフォローしきれない。やはりマリアムだけで正解だった。」
「何をぶつぶつ言っておるのだ。では、明るくなるまで時間があるからもう1回してから寝ようではないか。」
「ちょ、まだするのか?」
「当たり前だ。ハリムなら余裕なのだろ?」
「余裕だけど、さっきさんざん…あっ。」
「うるさい。」
マリアムに竜族の力で押し倒され1回戦ったあと、二人で抱き合って眠ったのであった。相変わらずマリアムは強かったよ…
明るくなったので二人で固まって飛んで『フジ』の捜索を開始する。海の真ん中ではぐれると私たちでもなかなか会えないからだ。マリアムは人型のまま。ドラゴン型で飛び回って人のいる島に見付かったら大騒ぎになってしまう。ミシビ王国みたいにまた謝罪するのは勘弁だ。
「どうだ?なにか感じるか?」
「んー。人族や獣人族の気配あるところもあるが、小規模だな。割りと人が多いのだろう?」
「木造建築が発達してそうな感じだったから多いんじゃないか?」
「じゃあ、違うな。」
マリアムの感覚は私より数倍優れているのでマリアムに探して貰っている。私は太陽の位置と島の配置を頭叩き込む。こうしないと転移魔法で飛んでこれないからだ。マリアムが来てくれて本当に助かった。
「獣人?獣人の島があるのか?珍しいな。」
私たちが住む大陸では獣王国以外で獣人を見掛けることは滅多にない。母みたいな放浪癖のある獣人もいるにはいるが少数だ。
「なんだ?獣人を抱きたいのか?」
「な、バカ。そそそんなわけないだろっ。」
実は抱きたい。私は長年たくさんの女性を抱いたがまだ獣人だけはないのだ。ハイエルフもだが。ドワーフの女性はある。女性は毛むくじゃらじゃないしな。ちょっと小さめな普通の女の子だった。
「ふん。あのリーユーとかいう狐人族でいいではないのか?今は小さいが5、6年も経てば大きくなるだろ?獣人だしな。あれはきっと美人になるぞ?」
「ば、リーユーはそんなんじゃないよ。それに抱いちゃったら魔王との戦いに連れて行きたくなくなるだろ。」
「わらわはいいのか?」
「現時点で私と本気で戦える仲間はマリアムとシャーロットだけだからな。仕方ないだろう。」
「まぁ置いていくと言われても付いていくがな。」
まぁバトルジャンキーだしな。
「むっ。」
1回食事をして東の方を探索しているとマリアムから反応があった。
「ん?どした?見付かったか?」
「人族の小さい反応が多数。あと大きな反応がちらほら。これは魔族…鬼族だな。」
「鬼族?初めて聞くな。」
「ああ、昔は『黒の森』にも少数いたが今はいない。角がありなかなか強い力を持った種族なのだ。」
「力が強いのか?オーガとは違うのか?」
「ちゃんと理性がある。力も強いが魔法も得意だったはずなのだ。」
「戦ってそうなのか?」
「いや、戦っていない。普通に生活しているみたいだぞ。」
「人族と魔族が共存しているのか?一段と面白そうだな。」
「ハリムとシャーロットもそうだろう?」
「でもあの大陸では私たちだけじゃないか?人族領には少数魔族がいるんだっけか?」
「ああ、いたと思うぞ。」
そんな話しながら反応があった方に翔ぶ。すると見えてきた。木造建築の数々。大陸と言ってもいいくらいの大きな島の平地に木で出来た家が建ち並んでいる。大きな城みたいな家は、土台は石で組まれ木造の建物の斜めの屋根の上には薄い陶器のような物は無数に並べられている。これで雨漏りを防ぐのだろう。庭なんかも見たことない木や岩、砂、池などで飾られていてとても美しい。なんか見ているだけで和む。
「これは凄いものだな…」
マリアムも言葉を失っている。
私たちが上空に来ると気付いた人たちが私たちを指差して見上げている。本当に鬼族と共存しているのだな。頭に2本の角のある身体の大きな人がちらほらいる。女性の鬼族はなんというか…グラマラス?人族は男も女も黒髪で長い。男はその長い髪を頭の上で結っている。服装は模様の付いた布?を前で重ね合わせ太めの紐で結んでいる。まさに独特な文化だ。
どこに降りるか迷った挙げ句、町の真ん中に広場を見付けたので二人で降りた。広場にいた人たちは急いで広場の外に逃げる。なんか悪いことをしたな。
「そこの者!何者だ!その服装。ここの者ではないな!」
町民たちより少し豪華な服を着た男が兵士を4人引き連れて広場に飛び込んで来た。兵士たちはこれまた独特の鎧を身に付け手には槍、そして腰にはカタナだ。やっぱりここだった。
「ああ、すまんな。私は魔族師のハリムという。この女性はマリアム。数ヶ月前、この国の船が遭難したのではないか?」
「ああ、その報告受けている。クリミド商国というところの船に助けられたと。」
「無事戻れたのか。それは重畳。私はその助けた船の持ち主と古い付き合いでね。話を聞いて興味が湧いたので訪れてみたのだよ。」
「船で1ヶ月掛かると聞いたぞ。どうやって来たのだ?」
「飛んできたのだ。見ていなかったのか?」
「いや、見てはいたがそんな距離飛べるものなのか?いや、待てハリム?聞いたぞ?船が持ち帰った本の中に書いてあった。大魔導師ハリムと…」
「ああ、そのハリムだ。こっちは白竜姫マリアム。載っていたのではないか?」
「は、白竜姫…ドラゴンじゃないかっ。大丈夫なのか?」
「ああ、私の妻だ。大丈夫だ。」
「そうか、では城に案内する。付いてきてくれるな?」
「ああ、もちろんだ。」
私たちは兵士長らしき人間に付いて、兵士4人に囲まれながら城に向かって歩いたのであった。




