ベテラン冒険者ライラの奮闘
ライラ視点
ハリムと会った日から半年が近くが経ったよ。実はちょっと会いに来てくれるかと期待してたんだがよ。まぁまだ来ねぇな。まぁあたいらダークエルフに取っても、ハリムたちハーフエルフに取っても半年なんて一瞬だかんな。まだ可能性はあるのか?いやいや、もう諦めるって決めたんだった。気を抜くとすぐハリムのこと考えちまう。ミシビリアンの冒険者どもが不甲斐ねぇのがいけねぇんだ。ハリムの頼りがいのあるあの背中を見ちまうともうダメだな。
ある日ギルドに向かっているとなんか街の中が騒がしいなって思ったさ。武装した兵士に何回もすれ違った。なんだ?戦争か?
ギルドに着いたらここも大混乱だ。ギルドの職員たちが走り回っている。カシムたちがいたから捕まえて事情を聞いてみたらな、なんでも南の森の奥の方でドラゴンが目撃されたって言うんだ。しかも2頭。それはやべぇな。この国滅ぶかもな。ドラゴンに遭遇したことなんてねぇけどよ、噂話だけで十分だろ。ドラゴンに取ったらこの前の黒オーガなんて餌でしかねぇよ。あ、この前の黒いオーガは黒オーガっていうらしいんだ。そのまんまだな。オーガの最上位種なんだと。いや、マジでハリムがたまたま来てくれてよかったよ。
これは当分依頼受けられねぇかなぁ、当分休みかなぁ、若いやつらかわいそうだなぁって思たからよ、カシムたちに何かあったらあたいがいつも泊まってる宿に来てくれって頼んで宿に帰ってのんびりしたさ。
1週間くらい経ったかな。ある日、カシムがあたいの泊まってる宿にやって来たさ。どしたんだ?って聞いたら緊急依頼だと。なんでも西にあるパルテンの街が魔物の大軍の襲撃に合ってるんだと。なんなんだ、最近。黒オーガにドラゴンに魔物の大軍。あたいは生まれてからずっとミシビ王国に住んでるけどな、こんな大事が立て続けに来たことなんてねぇよ。この国マジで滅ぶんじゃねぇか?
それで今、王都はドラゴンの脅威があるから国軍は王都を離れられねぇ。だからあたいらミシビリアンの冒険者全員でパルテンに救援に行けってことだ。まぁそりゃ行くさ、パルテンにも何人も顔馴染みがいるしな。助けてぇ。ミシビ王国は大きな街がミシビリアンとパルテンしかねぇからな。あたいたちが助けに行くしかねぇんだ。西の山を迂回して馬車で6日くらいか。行くまで耐えてくれよ。
「よし、分かった。ミシビリアンの冒険者全員を早急に集めろ。全速力で行くぞ!」
「はい!姉御!」
西門前の広場に行くと大勢の冒険者とギルド職員、あと見たことあるミシビ王国の大臣が待っていたさ。馬車もたくさん停まってる。ギルドと国が用意してくれたんだな。
「何人集まった?」
ギルド職員を捕まえて聞く。
「ああ、ライラさん。お待ちしておりました。今冒険者の数は203人、まだ数人来ておりません。」
「すぐ出発するぞ。来たら順次送り出してくれ。」
「はい。ライラさんこの隊の隊長をお願いします。」
「ああ、任せろ。」
まぁあたいが適任だわな。あたいはカシムたちと1番前の馬車に飛び乗ったよ。大臣が近づいてくる。
「ライラくん。パルテンの命運は、いや、ミシビ王国の命運は君に掛かっている。頼んだよ。」
「ああ、頼まれた。ミシビリアンのことは頼んだ。」
あたいはそう言って馬車を全速力で走らせたさ。
パルテンの街が近付いてきたよ。ここまで5日で来たさ。途中馬が何頭か潰れたけどな、途中の村で換えてもらったり、3台の馬車を2台に詰め込んで潰れた馬を肉にしたりしながら、なんとか1日の短縮に成功したんだ。丘を越えるとパルテンの外壁に大量の魔物が殺到しているのが見えたよ。よかった。まだ破られてはいないみたいだ。飛ぶ魔物や大型の魔物なんかがいないのがよかったな。でも何万いるんだありゃ。凄い数だな。今度はあたいたちが門まで辿り着かないいけねぇ。
「みんな戦闘準備!」
「「はい!」」
「馬車はこのまま突っ込ませるから、魔物に辿り着く前に飛び降りろよっ。」
「「はいっ。」」
「気合い入れろっ。男を見せろっ。絶対に1人になるなよっ。生けて門まで辿り着けっ。行くぞっ!!」
「「おーーーーー!!!」」
馬車を魔物の大軍に突っ込ませ、その直前に飛び降り、立ち上がり様に火魔法を魔物の大軍に叩き込んでやった。後ろからも矢や魔法が魔物に向かって飛ぶ。魔物はゴブリンが大半か?あとはオークにリザードマン。どれも下級の1匹ならたいしたことねぇ魔物どもだ。だがこの数は厄介だな。カシムたちが魔物に突っ込みあたいが後ろから弓矢で援護するさ。矢はあっという間に尽きちまった。あたいは弓を放り投げ、今度は火魔法で援護に入る。少しずつ進んでいるのが分かる。だが、まだ遠いな。
「姉御!姉御だ!姉御が来てくれたぞ!みんな援護しろっ。」
外壁の上から声が聞こえ矢が飛んできて魔物に次々に刺さる。ああ、あいつはあたいが育てたやつだな。
ギギギギギと音を立て門が開き、パルテンの街から騎兵と冒険者たちが躍り出てきた。もう完全に最終決戦の様相だな。1週間以上の籠城だ。パルテンのやつらも限界だったんだろな。パルテン側からと外側からの挟撃。魔物たちは慌てふためき、あたいらは攻勢に出る。ほどなくしてパルテン側のやつらと合流することが出来たよ。
「やった!」
あたいは声を出して喜んでしまった。外壁の上からも歓声が聞こえる。
「よし!このままパルテンに入るぞ!」
あたいが叫んだそのときだった。右の方から大量の石つぶてが飛んできたんだ。
「ぐわっ。」
何人かが直撃を食らって踞る。直撃して落馬した騎兵や、馬に当たって暴れているのもいる。
「まだ飛んでくるぞ!防御しろ!頭を守れ!ぐはっ。」
あたいが叫んでいる途中に石があたいの側頭部を直撃したさ。あたいは目の前が真っ暗になり倒れたよ。
「「姉御!」」
仲間たちの叫び声が聞こえるよ。視界が戻り倒れたまま、辺りを見回してみると、魔物たちの一斉攻撃を受けみんな魔物の群れに飲まれちまった。女の冒険者たちが裸にひん剥かれているのが見えたよ。
「まだだ!諦めるな!門はすぐそこだぞ!」
あたいは立ち上がろうとするが、魔物たちが襲い掛かってきてあたいの防具や服を1枚1枚破り捨てていく。
「またかよ…」
今度こそ終わりだ。あたいもミシビ王国も。
「ハリムーーーーー!!」
倒されたまま力の限り叫んだよ。
「おう。」
優しい声が返ってきたさ。
「へ?」
あたいが驚いていると、あたいに群がっていた魔物たちが、他の冒険者に群がっていた魔物たちが空中に舞い上がりやがった。あたいの横に降り立ったのはあの男。
「やぁライラ。今回もギリギリセーフかな。それにしても私に会うときはいつも裸だね。そんなに誘惑してどうする気だい。」
「ハリム…」
ハリムだった。ハリムはおもむろに空に舞い上がった魔物どもに向かって火球を撃ち込んだ。
ズドーーーーーン
そんな音が響いて魔物どもが爆散したよ。
「ほへー。」
呆けているあたいにまた外套を被せると他の裸の女たちにタオルを渡して回復魔法を掛けている。あたいはその姿を目で追ってしまったよ。気が付いた男の冒険者や外壁の上の冒険者、騎士たちもみんなハリムを目で追っている。あれ?なんか忘れてないか?
「ハリム!魔物が!まだいる!」
「ああ、大丈夫だよ。見てみて。」
ハリムが残ってる魔物の大軍の方を指差したよ。みんな釣られてその方向を見たさ。魔物たちはこっちに来ようとしてるんだけどな、何か見えない壁のようなものに阻まれてこっちに来れないみたいだ。石も弾かれているな。
「私の結界魔法だよ。あれくらいの魔物じゃどんなに攻撃してもここには入って来れないよ。」
そう言いながらハリムはあたいに近付いてきた。
「ほら、立って。頭を見せてごらん。」
あたいが立ち上がるとハリムはそっとあたいを抱き締め側頭部を見る。
「うん。キズは深くないね。大丈夫そうだ。回復魔法を掛けるよ。」
「あ、え、でも今、結界魔法ってのを使ってるんだろ?回復魔法を使うと消えちゃうんじゃ…」
「さっきあの子たちに掛けていたの見ただろ?」
「あ、そうか。」
「それに…」
ハリムはポケットから大きな透明の宝石を取り出すと地面に転がす。
「この結界魔法の核はこれだからね。まぁ私は4つまで同時に発動させれるが。水の癒し。」
ハリムの言っていることがよくわからん。魔法の同時発動なんてそんなこと出来るのか?あたいの側頭部から痛みが消えた。
「さて、今からゴミ掃除をするんだけど、素敵な裸を見せてくれたお礼にライラには特等席にご招待するよ。」
「へ?え?特等席?わっ!」
ハリムはあたいを左脇に抱えると空中に舞い上がったよ。
魔物の大軍の全貌が見える位置まで飛んださ。心地好い。魔物どもがこっちを指差し何かギャアギャア言ってるのが見えるな。
「火系の最上級でいいかな。派手だし。」
「へ?さ、最上級?」
「では行くよ。大爆発!」
ズドーーーーーーーーン!!!
さっきのよりさらに大きな爆発。きのこの形をした雲が出来てるな。
「パルテンにいる兵士、冒険者の諸君!撃ち洩らしは任せたよ。私は今から逢瀬だ!」
「「おーーー!!」」
パルテンから大歓声が上がり兵士や冒険者が残った魔物どもを葬っていく。
「ハリム!」
あたいは空中でハリムに抱き付いちまった。ハリムは優しく抱き締め返してくれたさ。
「よくがんばったね。ドラゴンよりこっちを優先してよかったよ。王には引き止められたけどさ。」
「ハリム!」
「なんだい?」
「あたいの、あたいの全てをもらってくれ!」
「ああ、いいとも。ライラ、愛しているよ。」
「あたいも。」
空中で二人で抱き合っていたらヒューヒューっていう口笛の音と拍手喝采が聞こえてきたよ。もう戦いは終わったみてぇだ。ハリムはあたいを抱き締めたまま、みんなに手を振ってる。
「姉御が女になったー。」
「姉御、おめでとう!」
「ハリムさまー、私もー。」
冒険者たちの方から聞こえてきて、笑いに包まれてる。
あいつらっ。でももう殴らなくてもいいかな。今はすごくいい気分なんだ。
なんかそろそろ違うパターンも考えないとなと思う今日このごろ。




