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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
33/64

ベテラン冒険者ライラの災難

ライラ視点

あたいの名前はライラ。今年で、んんん…180歳は過ぎたなっ、200歳にはなってねぇと思うぞ。ミシビ王国って小さな国で冴えねぇ冒険者なんてやってんよ。相棒はこの弓とナイフ。魔法も多少使えっけどあんま好きじゃねぇ。弓でスパスパっと動きを止めてナイフでとどめを指すのがあたいのスタイルだ。100年くらい前にB級になったんだけどさ、あたいにはここらへんが限界かなぁって思うよ。もう100年B級のままだしな。最近は筋の良さそうなのや、気合い入ってるやつなんかを鍛えてな、そいつらをB級まで上げてやんのがあたいの仕事だって思ってんよ。お陰でみんなあたいのこと「姉御」なんて呼びやがる。まぁ悪い気はしねぇな。男?いねぇよ、そんなもん。ダークエルフだかんな、顔は悪くねぇとは思うんだけどな。こんな性格だろ?胸もねぇし。そもそもあたいより弱いやつに興味ねぇ。口説いてきても殴って追い返してやんよ。


あたいの本拠地はミシビ王国の王都ミシビリアン。ある日ギルドに行ったらよ、あたいのパーティーの指名依頼がありやがった。なんでもオーガの亜種が西の山の方に出たってんだ。オーガの亜種?オーガなら何回か倒したことあっけどよ、亜種ってのは知らねぇな。でもこの国ではあたいのパーティーが最上位だかんな。仕方ねぇ行ってやんよ。あたいは剣士のカシム、斧使いのサーム、槍使いのプラトを連れて西の山に向かったさ。この3人は今まであたいが育てたやつん中でも1番筋がいい。まぁなんとかなんだろ。


西の山の麓の村に4日掛けてやって来た。疲れた、けつ痛ぇ。一晩ここで休ましてもらうことになった。そしたら出やがった、オーガ亜種。夜中に村に襲撃掛けて来やがった。しかも10匹。10匹って普通のオーガでもやべぇよ?亜種って普通のより強ぇんだよな?弱くあってくれよ。そう思いながら村長に村民の避難誘導を頼み、あたいたちは村からちょっと離れた草原になんとかオーガの亜種どもを誘導したさ。オーガ亜種ども身体が黒でありやがんの。村から離れたらすげぇ見え辛ぇ。大きさは普通のと同じくらいの4メートルくらいなんだがよ、動きが速ぇのな。オーガっては鈍重な魔物じゃなかったのかよっ。

3人になんとか食い止めさせ、あたいも必死に弓矢を放ったんだけどよ。みんな簡単に吹き飛ばされるし、あたいの弓矢もオーガの皮膚に刺さらねぇ。試しに火系の初級魔法打ってみたけどぜんぜん効果ねぇ。あっと言う間に3人は気絶してあたいは10匹のオーガに囲まれた。オーガは他種族の女を犯すっていうからな。これから犯されんのかなぁ。そんなことよりあの3人、大丈夫かなぁ。サームのやつ両手ぶらんぶらんだったな。ありゃもう使いもんにならねぇな。せっかくB級になってこの3人ならA級もって感じだったのにな。可愛そうなことしたな。

そんなことを考えているうちに1匹のオーガが近づいてきて強引にあたいの防具と服を破り捨て、真っ裸にさせられたさ。オーガが巨大な一物を隆起させる。こんなん入れられたらあたいは死んじまうな。まぁ悪い人生ではなかったな。好き勝手やって生きてきたし。でも最後がこれか…と思ってオーガの野郎を睨み付けてやろうとしたら、首から上がなかった。

「へ?」

「ああ、無事みたいだね。よかった。こんな美人がこんな醜悪な魔物に犯されたんじゃ目覚めが悪い。君がみたいな美人は私みたいないい男に抱かれるべきだ。」

よくわからないこと言ってあたいの近くの降り立ちあたいに外套を被せたのは金髪のハーフエルフの青年。

「おい、逃げろっ。こいつら強ぇ。まだ9匹も居やがる!」

1人じゃ無理だ!せめてあたいが万全なら…

「この状況で私を逃がそうとするなんて貴女はいい女だな。ますます好きになった。名前を伺っても?」

「ライラ…」

この状況で何言ってんだと思ったけどよ、なんかこの男の余裕ある態度に安心しちまって名前を言ってしまった。

「ライラかいい名前だ。私はハリム。まぁそこでゆっくり見学していてくれ。」

そう言ってハリムと名乗った男は黒いオーガたちに向けて両掌を突き出した。そこから始まったのは戦いとは言わねぇ。一方的な蹂躙。あるオーガは見えない何かに押し潰され、あるオーガは風の刃で首をちょん切られ、あるオーガはあたいのとは比べ物にならないくらい大きな火の玉に首から下を消し炭にされ…あっと言う間に終わってしまったよ。

「ハリム…ハリムハリム…どっかで聞いたことあんな…」

その間あたいはそんなことばっか考えていたもんさ。

戦いが終わるとハリムは3人を水系の最上級回復魔法極大の水の癒しって魔法で治療してくれた。最上級魔法だぜ。初めて見たよ。両腕ぶらんぶらんさせていたサームも元通り。

「欠損がなければだいたい治せるよ。」

とか言っていた。なんかすげぇな。

あたいたちの治療を終えたハリムは黒いオーガの2本ある角を全部切り落とした。オーガの角って硬ぇんだよな?どうしてあんなバターみたいに切れるんだ?10本は自分で持ち、残りの10本は好きに使ってくれって渡された。太っ腹だな。半分もくれるなんて。討伐はハリムのもんだからよ、成功報酬はもらえないけどさ、この角だけでもいい武器の素材になるんじゃねぇかな。


「あ、あの…」

ハリムが帰りそうな気配があったからついつい呼び止めてしまった。

「なんだい?」

「今日はその…なんだ、助かったよ。ありがとう。」

「さっきからお礼は散々聞いたよ。私もクリミドの帝国ギルドで依頼を受けたんだ。お互い様だよ。」

ああ、もう!

「また会いてぇんだ。次はこういうんじゃなくて、その…デート…」

勇気を出して言ったら、サッと優しく抱き締められた。顔が熱い。胸がドキドキする。こんな感覚、長く生きたけど初めてだ。

「嬉しいよ。では、今度ミシビ王国に来たときはライラを訪ねるよ。ミシビリアンで良かったよね?」

「ああ、ミシビリアンだ。ずっと待ってる。」

そう言うとハリムはあたいの頬にチュッと軽くキスをして、あたいから離れるとパッと消えてしまった。

あたいはぽーっとハリムが消えたあとを眺め続けた。

「姉御が女の顔になってるー。」

カシムたちが茶化すもんだからガツンと殴ってやったさ。


ミシビリアンまで帰って来て分かったこと。ハリムってあの有名な『氷結の大魔導師』じゃねぇか。綺麗な女いっぱい侍らせているとも聞く。あたいじゃ相手にされねぇな。あたいはハリムへの気持ちを諦めることにした。でも今でも考えちまう。

「あー、また姉御がぽーっとしてるー。また、ハリムさんのこと考えてるんですか?」

って冒険者連中に茶化されるもんだからな。

「ち、違ぇよっ。」

って言ってガツンと殴ってやるんだ。

黒オーガに遭遇したことも、ハリムと出会っちゃったことも災難なので、このタイトルです。

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