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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
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ハイエルフの森

転移魔法で『氷国』の近くにやってきた。

「ここからは寒くなるからこれを着て。」

私は亜空間から全員分の外套を取り出しみんなに渡し、自分も着る。

「寒い?ここけっこう北だよね?ここはけっこう暖かいよ?」

サラが疑問を投げ掛ける。

「ああ、『氷国』は文字通り氷の世界だからね。あまり近付きすぎると凍えちゃうし、降りると凍って死んじゃうよ。かなり上空から見ることになるんだけど、みんな高いところは平気かな?」

みなを見渡すと頷いている。みんな外套を着る。サラはリーユーに着せてあげている。ぶかぶかだな。でもリーユーサイズは持ってないから仕方ない。

「では、行くよ。」

みんなに重力魔法を掛け、かなり上空まで浮き上がらせたあと風魔法で平行移動する。『氷国』の真上にやって来た。

「きれー。」

「ね。」

サラとナタリアは言う。確かに見た目は綺麗だけど、内容は殺伐としたものだ。

「150年前、ここでたくさんの人が死んだ。みんな勇敢な戦士だった。」

目を瞑り黙祷を捧げる。サラとナタリア、ヤンも従ってくれている。チビッ子二人は氷の世界に目を奪われているみたい。


ゆっくりと上空を進みハイエルフの森の近くまでやってきた。『氷国』から少し離れたところに降り立ちみんなで外套を脱ぐ。

「どうだった。」

みんなに聞く。

「なんだか、感動しました。私、ハリムさんに会ってからずっと見たいと思っていたんです。『氷結の大魔導師』が誕生した地『氷国』。」

ナタリアの感想。

「ねぇねぇ。あれってハリムがやったんだよね?」

サラの疑問。

「ああ、そうだよ。あれの真ん中で氷魔法の『絶対零度』を全方向に放ったんだ。」

「放ったハリムはよく無事だったね。」

「無事じゃなかったさ。それまでの戦闘の怪我も酷かったしね。でも私には結界魔法があるからね。なんとか自爆せずに済んだ。手足は凍傷で大変だったが。」

そんな会話をしていたときであった。

「あ、誰かいる!おーい!助けてくださーい。上級魔族がひとりハイエルフの森に攻めてきましたー。」

森の方からひとりの少女は走ってきた。ひと目見て分かった。ハイエルフだ。恐ろしく整った顔をしているし、何より耳が私たちハーフエルフより長い。

「何!上級魔族!?それは大変だ。私が何とかしよう。現状は?」

「ハイエルフの男たちで対応しています。私がいる間に二人やられました。あなたは?ハーフエルフですね?上級魔族ですよ?大丈夫ですか?ヘルミナ王国に応援を頼んだ方がいいのでは?」

「私は魔導師のハリム。この子らは私の弟子たちだよ。私がいればなんとかなると思うよ?」

「魔導師ハリム?ハリム…もしやハイエルフの森の英雄ハリム様ですか?」

「ん?あ、ああ、そう呼ばれたこともあるね。」

「まあ、すごいっ、ずっとお会いしたいと思っていたのです。わたしはハイエルフの森の1番新しい子ルーチェと申します。」

「ああ、ルーチェ。よろしくね。ではすぐ行こう。案内してくれるかい?みんなはどうする?」

「付いていくよ!」

「付いて行きたい!」

「上級魔族見てみたい。」

みんないい顔。

「よし。でも危なそうなら上空から見ているんだよ。いいね?」

「「はいっ。」」

「じゃあルーチェ、重力魔法を掛けるよ。高いところは大丈夫だね?」

「はい。いつも木に登るから大丈夫です。」

ハイエルフには野暮な質問だったか。みんなに重力魔法をかけルーチェの案内で森の上空を飛ぶのであった。


「あっちです。」

ルーチェの案内で上空を飛ぶ。けっこう奥だな。ルーチェ小さいのに頑張って走ったんだな。

暫く飛んでいると倒れた木が3本ほど見え、ハイエルフの男たちがそれぞれの武器を持っているのが見えた。

「あそこです!」

ルーチェが指差す方向を見る。かわいいメイド服を着た女の子が座り込んでいる後ろ姿が見えた。

…ん?なんかあのメイド服見覚えがあるぞ?いや見覚えがあるどころじゃない。ほぼ毎日見ているぞ。あの後ろ姿も…なんか脇に嫌な汗をかいてきた。でも、まさか。シャーロットや他の吸血鬼で何回も試したけど、あの結界からは出られなかった。

「みんな絶対に攻撃するなよ。絶対だ。」

私のお願いに皆は無言で頷く。ハイエルフたちがこちらを見ているので手で挨拶する。どの顔も1度は見たことある顔だ。

座り込むメイド服の女の子の真後ろに降り立つ。近くで見ると分かる。間違いない。

「ミザリ?ミザリじゃないか?」

女の子は落ち込んだ顔で振り返り、私を確認すると喜色満面の笑顔になった。

「ハリム様!」

凄い勢いで突っ込んできて凄い力で抱きしめられたのであった。


「いやはや、『迷いの古城』の従者であられましたか。その可能性も考えなかったわけではないのですがね。吸血鬼は他にもいますし好戦的だと聞きます。なので警戒させていただきました。いや申し訳ない。」

「いや、ハイエルフの対応は間違いではなかったと思うよ。ちょっと話を聞いてあげて欲しかったと思わなくもないがそれで被害が出たら目も当てられない。ミザリも疲れただけだし、ハイエルフたちにも大怪我以上の者はいなかった。痛み分けでいいんじゃないか?なんかハイエルフたち最後の方は楽しそうだったと聞いたが?」

「はっはっはっ。そうですな。150年前のあのとき以来獣王国ともヘルミナとも不戦協定を結びましたので、なかなか戦う機会がなかったのです。東の方では多少小競り合いはありますが、やつらはあまり強くありませんからなぁ。いい戦闘訓練になりました。ありがとうございます。」

私たちは今、ミザリと戦ったハイエルフたちの集落に徒歩で向かっている。なんでも私が救援にきたお礼とミザリと戦ったお詫びに宴会を開いてくれるのだそうだ。

歩いている途中、仲の良いハイエルフを見付けたので話している。名前はクラース。ミザリは私に抱き付いたままリーユーをまだ抱いているサラと話している。

「あたしはハリムの恋人、サラだよ。ミザリもハリムの恋人?」

「なんです?恋人?恋人はシャーロット様です。ミザリは…ミザリはなんなんですかね?ハリム様?」

「恋人でいいんじゃないか?」

恋人じゃなかったのかよ!

「え?おお!やった!ミザリも恋人でした。サラ、お揃いですね。よろしくです。」

「お揃いっていうのかなぁ。まぁいいや。よろしく、ミザリ。」

「その狐はなんですか?私にも触らせてください。」

「この子?リーユーっていうの。かわいいでしょ。ね、リーユー。」

「ん。」

「なんですか、すごくかわいいです。ミザリもほしいです。ミザリにください。」

「んー。どうしようかなー。ハリムに抱き付くの代わってくれたらね。」

「えー。それは出来ない相談ですねー。」

二人は仲良くなれそうかな?そんなことより

「ミザリどうやって迷いの結界を越えたんだ?」

「んー。どうやってですかね?普通に通れちゃいましたけど。ミザリの愛が結界を凌駕したということでしょうか。」

なんだそりゃ。

ん?視線を感じた。これはリーユーじゃないぞ?視線を辿る。ルーチェだった。ルーチェは目が合うと反らせてしまった。


少し歩くとハイエルフの集落に着いた。木で作られた門を潜るとそこはまさに別世界。はえたままの木の中身をくり貫いて作られた家々に光が灯りなんとも幻想的だ。

「きれー。」

「ね。」

サラとナタリアの乙女コンビはまた感嘆の声を上げる。他のみんなもほげーと見とれている。分かるよその気持ち。私も初めて来たときはそんな顔をしたもんだ。

ベンチが何脚か置かれている。広場にやってきた。

「ハリムさんとそのお連れさん方、我が集落へようこそ。私たちは宴会の用意して参りますので少々ここでおくつろぎになってお待ちください。」

ハイエルフたちはそう言ってどこかに行ってしまった。

「じゃあ、ここでのんびり待とうか。」

ベンチに腰掛けみんなでゆったり待つのであった。

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