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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
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ランペドの屋敷にて 前半

シャワラムに行く際、転移魔法で一気に飛べば一瞬で着くのだが、私はランペドの町に飛んでそこから馬車を使って向かうことにしている。一応私が住んでいるとされている家がランペドにあるからであるが1番の目的は母のお墓参りである。


ランペドの私の家は母と移り住んだ際、クリミド商国からもらったものでランペドの町では町長の屋敷の次に大きい。玄関ホールに広いリビングに食堂。応接室以外に部屋10部屋ある2階建ての洋館である。庭も冒険者が5対5で模擬戦ができるほど広い。といっても、古城よりずっと狭いのだが、年に2、3回、泊まることもほとんどない家にしては広すぎる。だが国からもらったものだし、母の晩年に一緒に暮らしたところなので、手放すに手放せない。


私は転移魔法で家の2階にある自室に到着した。10メートル四方の部屋にベッドとクローゼット、あと机と椅子が1脚。

私は机に近づき、上のある呼び鈴を鳴らした。するとすぐ廊下をドタバタと走る音が聞こえ、勢いよく部屋のドアが開いた。

「旦那様!お帰りなさいませ!」

部屋に飛び込んできたのは、尖った耳を持ち褐色の肌を燕尾服に包んだ小太りな男だ。

「ああ、ただいま、クリス。また太ったんじゃないか?燕尾服がパツパツじゃないか。ダークエルフに見えないよ。」

「ははは、年のせいですかな。最近贅肉が落ちないのです。」

「君は食べ過ぎなのだよ。」

私はこの家の管理をこのクリスとその家族に任せている。住み込みで雇っているのである。

「ははは、ここに雇われるときの条件ですからな。どんだけ食事してもいいと。」

私は割りと有名な冒険者なので、泥棒や強盗が後を絶たないのである。なので、普通の人間だけに任せるわけにもいかない。また私は長命種族なので、出来れば管理人は強くて長命種族であってほしかった。なかなか条件に合う人が見付からず、クリスと出会ったとき雇い入れるのに必死でそんな条件を提示してしまった。

「今回のご予定は?」

「今回は正午に出る駅馬車の最終便に乗ろうと思っている。」

「正午ですか。それはまた短い滞在ですね。お昼はここで召し上がられますか?」

「いや、外で何か食べるよ。」

「承知しました。」

「報告を聞こうか。」

「はい。この半年で入った泥棒は15人。全員無事捕らえ町長に引き渡しました。被害はありません。」

「ん?半年で15人か。ずいぶん少なくなったな。」

「それはここ数年、旦那様がクリミドで派手な活躍をしていないからではないでしょうか。」

「ああ、まぁそうか。この屋敷を贈られたのももう250年以上も前だしな。」

最近は古城でのんびりしてることが多い。冒険者として一応活動しているが、優先的に回してもらう高難易度の依頼やちょっと派手目な戦いもクリミドから離れた場所が多いのでクリミドでは目立たなくなったのだろう。

「最近、新たに赤級の冒険者が誕生したのでそちらに視線がいっているのかもしれません。」

「へぇ、赤級が。それは楽しみだ。」

「ええ、30年ぶりだそうです。」

クリミドの冒険者ギルドのランクは下から紫級、藍級、青級、緑級、黄級、橙級、赤級で最上位に金級の8段階になっている。

だいたいの国はデギル帝国が運営する冒険者ギルドがあり、F級からA級の上にS級とSS級というのが一般的であるが、冒険者ギルドはお金になる上、スパイ活動の疑惑もあるので、大国は一応は義理でデギル帝国の冒険者ギルドも置いているが、国独自の冒険者ギルドも持っている。ちなみに私はクリミドの方が金級でデギル帝国の方もSS級である。あと活動の多いヘルミナ王国でも最上位の1級になっている。みな混乱を避けるため、等級の呼び方を変えているのである。

「手紙は?」

「指示通り中身を拝見させていただいていますが、たいした内容のはありません。デギル帝国の皇帝陛下から時間があったら訪れるようにという手紙が来ていました。あと、手紙ではありませんが、ランペドの町長と商業ギルドの長が1度お目通りをと、再三この屋敷を訪ねてきています。」

「ああ、時間が空いたら顔を見せようかな。」

まぁ時間はあるんだけどね。なんかめんどくさい…

「お金は足りているかい。」

「ええ。あんな莫大な金額、なかなか使いきれるものではありませんよ。」

私はロマニコフに魔道具を売ったり、商品のアイデアを提供してそこから出た儲けの何割かを商業ギルドにある口座に毎月振り込んでもらっている。その口座をクリスでもお金を引き出せるようにしてある。ロマニコフというのはロマニコフ商会という大商会の会頭でこのクリミド商国の評議員の1人。人族であるが2代前、今のアンドレイ=ロマニコフのじいさんの時代から贔屓にしている。

「エマは元気かい?」

エマとはクリスの奥さんで二人ともダークエルフという種族だ。

「ええ、元気ですよ。あいつは見た目も性格も昔のままですよ。」

「ああ、それはそれは。」

エマはすごく気が強い。ちょっと私も怖く思うときがある。

「そういえば息子のジークなんですがね。」

クリスが急に真剣な顔をした。

「ん?なんだ?何かあったのか?」

「いや、実は私たちには優秀すぎまして、もう教えることがなくなりました。」

「ほう、クリスが教えることがないとはすごいな。」

「旦那様に教えていただいた魔力循環法を小さいころからやらせた影響でしょうか。成長率がすごいですね。」

「ほう。」

「今、庭にいるので見てやっていただけないでしょうか。出来れば弟子にして頂きたく思います。」

「そういえば庭に強い魔力の反応を感じていた。これがジークか。」

私がこの部屋に着いたときから感じていた庭の魔力反応。てっきりエマかと思っていたが、なるほど。

「ジークはまだ9歳じゃなかったか?」

「まだ8歳ですね。あと1ヶ月ほどで9歳になります。」

約9歳でこの魔力か。将来が楽しみだ。

「まぁ1度話をしてみようかな。」

「わかりました。」

私たちは部屋を後にした。


クリスの先導で部屋を出て廊下を歩くと何人かの使用人とすれ違う。

使用人たちは私たちを見ると廊下の端に寄り頭を垂れる。

「ご苦労様。」

私が声を掛けると皆涙ぐみうつ向いてしまう。なんか悪い気になる。

「あまり見れない雇い主を見れて感激しているんですよ。」

「雇ったのはクリスだろう。」

「お金は旦那様のなので雇い主は旦那様ですよ。皆には旦那様に会ったとき粗そうがないように、旦那様の肖像画を見せて教えています。」

「肖像画って…そんな物あったのか。」

「昔、旦那様が有名だったころ、クリミドで旦那様の肖像画が流行ったことがありまして、そのときに出来がいいのを購入しまして使用人の待機室の壁に飾ってあります。」

「まじか…知らなかった…」

恥ずかしいじゃないか。

「今、使用人は何人いるんだ?」

「男5人女5人の10人ですね。」

まぁこの屋敷だとこんなものなのかな?

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