孤児院
オーティス家の朝食を皆で取ったあと、サラ、ナタリア、エドワードを連れて私の出資した孤児院にやってきた。
「あらぁハリム様ぁ。お久しぶりですぅ。」
玄関をノックすると出迎えてくれたのはこの孤児院の責任者レイラだ。レイラは丸顔でタレ目の愛嬌のある顔、間延びしたしゃべり方でなんか落ち着く。でも1ヶ所落ち着かない部分がある。胸だ。巨乳というか爆乳というか…
「やぁレイラ。今日もなんというか、凄いね。」
「ふふふふふ。ありがとうございますぅ。また機会があればお願いしましねぇ。ミラ様から聞いていますぅ。どうぞ中へぇ。」
バチンと私にウインクしたあと奥に入っていく。
「いてっ。」
付いて行こうとしたらサラにつねられた。
「ハリム。あのレイラさんって人ともなんかあったんでしょ。」
「なななんのことかな。ははははは。」
「もう。」
まぁ昔なんかあったよ。今もたまになんかある。
「おい、犬野郎。触るんじゃねぇ。」
「うるさいっ。お前らが先にリーユーに石投げたんだろうがっ。」
サラと戯れていたら奥から子供の喧嘩する声が聞こえてきた。奥の方を見ると大きめの子供数人に誰かが囲まれていてその周りで保母たちがおろおろしている。
「あ、こら、いじめダメ!」
サラが止めに行こうと走り出そうとする。ほんといい子だな。でもここではダメだ。
「待て待て。」
サラの肩を掴んで止める。
「どうして?とめなきゃ。」
「この国にはこの国の事情があるんだよ。一概にいじめている方が悪いとは言えない。」
「ん?」
「まぁ難しいよな。まぁいじめはダメだ。それは間違いない。でもあのいじめている子供たちは獣人に親兄弟あるいは住んでいた場所を奪われた子供たち。獣人を見たらちょっかいかけたくなる気持ちも分かってあげてほしいんだ。」
「いろいろあるんだな。」
「ああ、あそこは私がなんとかするからさ。サラ、ナタリア、エドワードは他の子供たちと遊んであげてくれ。」
「うん。わかった。」
「「はい。」」
私は亜空間から木で作られた積み木などの玩具を3人に渡す。
「これで遊んでやってくれ。頼んだよ。」
囲んでいる子供たちの方に向かった。
「やぁやぁこんにちは。」
「あ、ハリム様!」
「ハリム様!」
囲みは崩れ子供たちは私の周りに殺到する。囲みの中から現れたのは小さく膝を抱いて座る小さな狐人族の少女とその子を庇うようにして立つ犬人族の傷だらけの少年だった。新しい傷ではなく古傷だ。先に話したいがまずはいじめてた方から。
「何をしてたんだい?」
「獣人と戦ってた!」
「獣人は父ちゃんの仇なんだ。」
「そうかそうか。でもあの子たちがきみたちの親を殺したのかい?」
「ちがうけど…」
「見れば小さい子供じゃないか。君たちは大魔導師ハリムの孤児院の子だろう。その力をそんなことに使っていいのかい?弱い者を守るために使うんじゃないのかい?」
「そうだけど…」
「あの犬けっこう強いんだ。」
「そうかそうか。でも君たちは将来ミラやマイクの下で働きたいんだろう?こんなことしてる暇があったらもっと勉強したり木剣を振ったりした方が有意義じゃないのかい?」
「その通りです…」
「はい…」
「今日この二人は私が連れて行くけどね。今後また獣人の子供が入ってきても、街の人たちからその子たちを守るようになってほしいと私は思うよ。」
「はい!」
「ハリム様が言うならそうなりたいです!」
「よしいい子たちだ。今日のところはいいね。じゃあ解散っ。」
「「はいっ!」」
子供たちは四方に走って行く。ふぅ。周りを見渡すとレイラはまたウインクをくれた。他の保母とサラはぽーっと私の方を見ていた。私と目が合ったらそらされた。なんだ?ナタリアとエドワードは普通に子供たちと私が渡した玩具で遊んでいる。あの二人、貴族育ちなのにな。辛い逃亡生活がいい方向に出てるのかな?
さて獣人族の子供だな。
「やぁ初めまして。私はハリム。君たちは?」
「オレはヤン。この子はリーユー。」
「少し話が聞きたいんだけどいいかな?ん?」
「ああ、いい、あっ。」
私が犬人族の少年ヤンに話し掛けると近くから視線を感じたので目線を変える。狐人族の少女リーユーが、ジーっと私を見ていた。小さいのに凄い目力だ。私も見つめ返す。ヤンは何か言おうとしたがそれに気付き言葉を飲み込んだ。茶色の大きな瞳、吸い込まれそうだ。ん?おお!これは。まだ表面には表れていないが奥に大きな魔力を感じる。狐人族…魔法が苦手な獣人族の中にあって数少ない放出系の魔法を扱える種族で獣王国の中で優遇されていると聞いた。今の四獣将のひとりも狐人族だった気がする。
「え!?」
見つめ合っているとリーユーは私に両手を差し出してきた。えっと驚いたのはヤンだ。
「ん。」
なんだ?抱っこの催促か?私はリーユーを抱き上げる。リーユーは満面の笑顔。尻尾がふさふさもふもふで心地好い。
「り、リーユーがオレ以外になつくなんて…」
「さて、話が聞きたい。」
「ああ、いいよ。でもあんまり人に聞かれたくない。」
「わかった。おーい!レイラ。応接室使うよっ。」
「はーいぃ。いいですよぉ。どうぞぉ。」
「サラー。こっち来てくれっ。」
話している間リーユーを預けたい。サラにならなんとなくなつきそうな気がする。
「はーい。ごめん。みんな、また遊ぼうね。」
サラは子供に囲まれていた。大人気だな。さすがサラ。
サラはリーユーを抱いたままの私の隣にきて囁く。
「凄かったね。さっきのいじめてた方宥めたやつ。すっごくカッコよかった。」
「ああ、あれか。ここの子供たちは私やオーティス家をとても尊敬しているからね。他では使えないよ。」
「でもでも、カッコ良かった。惚れ直しちゃった。」
「ああ、そうか。ありがとう。嬉しいよ。」
4人で応接室に移動した。
孤児院の応接室はシンプルだ。安物の2人掛けのソファーが向かい合わせに置かれていてその間にテーブル。調度品も何もない。リーユーを抱いた私の横にサラが、向かい側にヤンが座る。
「その女は?」
「ああ、この子は私の恋人のひとりサラだよ。信用できる。ヤンと話している間リーユーを預けようと思って。」
「恋人のひとりって…まあそうだけどさっ。あたしはクリミド商国の冒険者サラ。ヤンくん、リーユーちゃんだっけ?よろしくね。」
「リーユー?いいかい?」
リーユーの目を見て聞いてみる。リーユーは私の目を見たあとサラに視線を移しジーと見つめる。サラもにっこり微笑みリーユーを見つめ返す。この子には私たちには見えない何かが見えているのだろうか?
「ん。」
暫く見つめ合ったあとリーユーはサラに両手を伸ばした。私はサラにリーユーを渡す。
「きゃ。かわいいー。ふわふわー。しっぽももふもふー。気持ちいいー。」
サラは受け取った瞬間、リーユーに頬擦りしながら首から見える黄金色の毛や尻尾を撫でた。リーユーも気持ち良さそうにされるがままだ。獣人族は正面から見ると人族などの他の種族と大差ない。顔の横じゃなく頭の上に種族特有の耳があるくらいだ。だが後ろは尻尾があり首から背中、尻尾まで毛でびっしり覆われているのだ。私も片親が獣人族だがそういう毛や尻尾は存在しない。
「どうなってんだ?1日に二人もリーユーがなつく相手が現れるなんて…」
ヤンは驚いているが、私はまだしもサラには子供はなつくだろ?なつかない子供がいるなら見てみたいもんだ。
「さて、ではヤンくん。話を聞こうか。」
「ああ。」
私は落ち着いてヤンとの会話を始めるのであった。
いじめの仲裁、難しかったです。私にはまだハードルが高いっぽい。




