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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
22/64

魔法少女サラの冒険 後

引き続きサラ視点

今日はいつも泊まってる安宿に泊まった。『月夜亭』に行ったら快く泊めてくれそうだけど、アレンの件があるから行きにくい。


暗い内に宿出てクリミドのギルド前に向かう。歩き慣れた道だ。

「おはよっ。」

「おはよ…」

3人はもう来ていた。でもなんか眠そうだ。

すでに屋根のない10人乗りの馬車が2台と鞍が付いた馬が2頭停まってる。馬車には食料が2台に分けられてもう積み込まれていて半分しか座れない。2台?なんで?馬も…あたし乗馬出来ないよ?

そんなことを考えていたらクリミドのギルドから8人の人たちが出てきた。先頭を歩くのは白い甲冑を身に付けたハーフエルフの男の人。金髪の長い髪の毛。なんかキザだ。同じ金髪のハーフエルフでも短く切ったハリムっちの方が断然カッコいい。その後ろは女性が4人。ひとり大きな弓を担いだダークエルフがいる。みんな白い防具で胸に黄色のバッジ。凄い!黄級の冒険者だ。その後ろ…あ、アレンたちがいる。向こうもあたしを見て驚いた顔をしている。あたしはふんっと顔をそらせた。

ハーフエルフの人がこっちに来る。

「俺はクリミド商国赤級冒険者アルセン=パトリオット。こっちの4人は俺のパーティー『白薔薇』のメンバー。こっちの藍級の3人は今回青級への昇格試験みたいなもんだ。俺はその試験官。今回の討伐は頭数が多いため、クリミド、帝国合同だ。」

赤級!聞いたことある!30年ぶりに出たって。シャワラムにいたんだ。アレンたち昇格試験なんだ…へー、へー、ふんだ。

「馬車の御者と馬は俺たち『白薔薇』が交代で勤める。さあ出発しようか。」

アルセンさんはそういうとひとつの馬車に乗り込み座った。『白薔薇』の人たちは御者席と馬に股がる。

アレンたちはアルセンさんと同じ馬車に、あたしたちはもう一方の馬車に乗り込み馬車は出発した。


道中あたしのパーティーの3人はご飯のとき以外熟睡…暇だ…

夜は夜営。3つテントを張ってパーティーで分かれて寝る。上級ひとりと下級ひとりがペアで交代で見張り。あたしの番、ペアはダークエルフの人。なんか『白薔薇』のテントからあんあん聞こえてくる。あれ?あたしたちのテントからもあんあん聞こえてくる。何やってんだ?

「『白薔薇』って全員アルセンさんの恋人なんすか?」

って聞いたら

「うん、そうだよ。」

って答えてくれた。…


二日目以降の道中暇じゃなくなった。アーノルドを挟んで二人の女の子が座りイチャイチャし出した。正面にひとりで座ってるあたしは目のやり場に困る。小声でこそこそ話してる。

「もう、魔導師の子に見られちゃう…」

「魔法少女なんでしょ…」

「魔法少女って…」

「しっ聞こえるよ。」

聞こえてるよっ!!


無事アッバの町に到着した。小さな町だ。規模でいったらランペドよりちょっと小さいくらいかな。町の門をくぐり中の広場に停まる。結局アレンたちとはひとこともしゃべっていない。

みんな馬車や馬を降りると太ったおっちゃんが走り寄ってきた。

「ようこそお越しくださいました。私はアッバの町長ギルシュと申します。」

町長さんだった。おっちゃんって話し掛けなくてよかった。

「俺は赤級冒険者のアルセン=パトリオットだ。俺が来たからにはもう安心だ。」

「はい。ここアッバの町は下級の冒険者しかおりませんからな。おお、そうでした。なんでも黒いのを見たと報告が。」

「黒いの?ブラックウルフか?上位種だな。俺が来て良かった。そいつは俺が相手する。『白薔薇』はグレーウルフを間引いてやれ。他は頑張れよ。ブラックウルフがいるとなると助けている余裕がないかもしれないぞ。」

ブラックウルフは1頭でグレーウルフ20頭の群れに匹敵すると言われている。そんなんがいるのか…アルセンさんがいてよかった。

「まだ日が高い。早速行こうか。」

アルセンさんは門の外へ歩き出す。あたしたちも後に続く。なんか嫌な予感がする…


門を出てちょっと歩き草原を歩き森近くまでやってきた。アルセンさんは持ってきた肉を置き、少し離れた。半刻ほど待つ。

森からブラックウルフ5頭を中心に両サイドにグレーウルフ10頭ずつくらいがゆっくりと姿を現した。5頭…悪い予感が当たった。怖い…

「ちっ、5頭もか…『白薔薇』は全員でブラックを迎撃!他は二手に分かれてグレーを迎撃。死ぬなよっ。」

その声に『白薔薇』のひとりがブラックウルフに向かって火系の中級魔法を放ち、ダークエルフの人が弓を放つ。アルセンさんを筆頭に3人が剣を抜き、ブラックウルフに走り寄る。

「ボクたちも行くぞっ!」

アーノルドが叫び、あたしのパーティーの3人も右サイドのグレーウルフに向かって走る。

「風の刃!」

あたしはグレーウルフに向かって風系の中級魔法を全力で放つ。今まで燃費が悪いのであまり使ってこなかった魔法だ。ハリムっちが収束率がどうとか言っていたから使った。するとグレーウルフ5頭が真っ二つに切れた。え?

「お、使えるやつがいるな。その調子でいけ!」

アルセンさんがブラックウルフと戦いながら誉めてくれる。よし!ありがとう、ハリムっち。あたしは握っている黒い杖をひと撫でしてもう一回風の刃を放つ。また5頭が切れてこっちサイドは全滅した。3人は死体を前にポカンとしている。

「よし、左の援護に回れ!」

アルセンさんの指示が飛ぶ。4人で左サイドに走る。アレンたちは苦戦していた。2頭倒しているが7頭に囲まれアレンとフロルは満身創痍だ。

「アレン!」

あたしはそう叫び、グレーウルフに風の刃を放ち、アレンとフロルに風の癒しという回復魔法を放つ。4頭グレーウルフが切れ、アレンたちの傷が癒えていく。

「サラ!助かった!」

「うん!」

あとの3頭は7人で協力して倒した。アルセンさんのたちの方を見るとブラックウルフをすでに4頭倒し最後の1頭と戦っていた。アルセンさんの剣がブラックウルフの胸を貫く。ブラックウルフはその場に倒れる。やった!終わった。と思ったときだった白い巨大なウルフが森から走り出て来てアルセンさんに体当たりした。アルセンさんは凄い勢いで飛んでいき見えなくなった。

「アルセン!」

ダークエルフの人が叫ぶ。白いウルフの体が今度はバリバリ鳴り出した。次の瞬間白いウルフの周りに雷が落ち『白薔薇』の人全員倒れた。白いウルフはゆっくりとこっちに近づいてきた。ヤバい、あたしが1番近い。その時だ。あたしの前にアレンが剣を構えて立った。

「サラ、好きだ。」

「え?」

「サラは死ぬなよ。なんとか生きろ。」

え?え?え?え?

ウォーーーーーーーーン

あたしが混乱していると白いウルフが遠吠えをあげた。そしたらアレンはその場に座り込んでガタガタ震え出した。振り返ると他のみんなも座り込んでガタガタ震えている。なんであたしだけ平気?あ、このコート!精神魔法を完全シャットアウトって言ってた!うん、あたしハリムっちに守られている。あたしがみんなを守らないと。アレンと白いウルフの間に立ち杖を構え白いウルフを睨む。なんかこいつどこかで見たことあるなぁ。あ、あたしが見た夢に出て来た。その瞬間指輪のことを思い出した。あたしは指輪に魔力を込め地面に押し付ける。床って言ってたけど地面でも大丈夫だよね?ハリムっちがくれた魔導具よ、どうかあたしたちを守って!

すると魔方陣が現れハリムっちが召喚されてきた。

「ハリムっち!?」

「やあ、サラ。今日もかわいいね。ちっ、フェンリルか、こんなのがクリミドにいるのか?竜巻!」

いつの間にかあたしを呼び捨てしてる。なんかうれし。ハリムは白いウルフを一瞥すると風系の最上級魔法を放つ。呼び捨てされたんだからあたしも呼び捨てでいいよね?この魔物フェンリルっていうのか…フェンリル!?ウルフ系の最上位種で出現したら大きな街も滅ぶと言われるドラゴン並のあの?

フェンリルはハリムの放った竜巻に傷付きながらも耐えきったみたい。フェンリルはゥゥゥゥと唸ると大きな口で噛み付いてきた。

「きゃっ。」

「意外にかわいい声出すね。」

ハリムはあたしを左脇に抱えて空中に飛びフェンリルの噛み付きをかわす。飛行魔法かな?空中でハリムはあたしを抱えたまま右掌をフェンリルじゃなくアレンたちの方に向けた。アレンたちも『白薔薇』の人たちもみなふっと消えた。転移魔法で安全なところに送ったのかな?

「サラ。風系の最上級を超える魔法を見せてあげるよ。」

あたしの耳元で囁く。きゃん、くすぐったい。

ハリムはこっちを見上げているフェンリルに右掌を翳すと魔法を放った。

「ダウンバースト!」

上空から空気の塊?が落ちてきてフェンリルを押し潰す。空気が見える!?こっちまで余波がっ。あたしは目を瞑る。しばらく立つと静かになった。目を開けると眼下でフェンリルが平べったくなって死んでいた。ハリムはフェンリルの死体の側に降り立ちあたしを降ろす。

「こいつは金になるぞ。ロマニコフ商会に送るか。」

「ハリム!」

あたしはハリムに抱き付く。ハリムは優しく受け止めてくれる。

「おや、呼び捨てで呼んでくれるんだね。」

「ハリムがあたしを呼び捨てにしたから。いや?」

「いや、うれしいよ。かわいい女性に呼び捨てにされるのは距離が近付いた気がするから大歓迎だよ。」

あたしは抱き付いた腕の力を強める。

「ハリム、ありがと。」

「ああ、間に合ってよかった。」

「ハリム、大好き。」

「ああ、私もだよ。」

アレンごめんね。やっぱりあたし守るより守られたい。

「ハリム、愛してる。」

「ああ、私も愛してる。」

あたしとハリムは見つめ合った後、唇と唇をあわせた。長い口付け。ああ、幸せ。ずっとこのままならいいのに。唇と唇が離れる。

「ハリム、もう離れたくない。」

「私もだ。ナタリアたちと一緒に私の元で修行するかい?」

「いいの?」

「ああ、いいとも。サラなら大歓迎だ。」

「アンナさん許してくれるかな。」

「もう、サラちゃんを大切にしなさいよって言われた。」

「さすが、アンナさん。」

抱き合ったまま会話する。夢の通りになった。

「あ、そういえば赤級冒険者のアルセンさんが吹き飛んでいったよ。助けなきゃ。」

「赤級なら自分でなんとかするだろ。」

「でも心配。」

「では私があとで回収するよ。」

「アレンたちはどうなったの?」

「シャワラムの冒険者ギルドに転移魔法で送った。あそこなら治療を受けられるだろう。」

「アッバの町長さんに報告しなきゃ。」

「回収したら赤級にやらせるよ。」

「あたしこれからどうなるの?」

「どうなりたい?」

「ハリムの好きなように。」

「では、どこかの宿屋にでも行こうか。」

こうしてあたしは大人の階段を登ったのだ。これからあたしは魔導師として生きていく。

サラ視点、なんとか書けました。最後の会話が書いていて楽しかった。ハリムが羨ましい。

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