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大魔導師の育成  作者: 春夏秋冬
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2日目朝

※イカルディ王視点

余の名はマルセール=ド=イカルディ。歳は20歳である。王になる前は第5王子であった。最近兄弟での政権争いを勝ち抜き新たに王位に付いた。第2王子派は許してやるが、第1王子派は家族も含めて全員処刑してやった。見せしめのためである。ちなみに第3、第4王子は父上が亡くなる前に殺した。おっと、第1王子派のベロン伯爵の長女と次男が逃げたんだったな。ベロン伯爵の長女ナタリアか…天才と名高き少女であったが、美しかったな。捕まえたら拷問したあと犯しながら殺そう。今から楽しみだ。捕縛を命令した青龍騎士団は魔法による怪我を負って逃げ帰った者や死亡した者がいるらしい。まだ3人戻ってないらしいが強力な護衛でも雇ったのか?次は朱雀騎士団に命令するか。


ある日の明け方、殺気を感じて飛び起きる。ベッドの向こうにハーフエルフの男が1人立っていた。

「だれだ!おい!だれかっ!」

ベッドの中で王妃が眠っている。

「おい!起きろ!」

「起きないよ。私と君にだけ消音の結界を張った。外に声は漏れない。ちょっと君と話がしたい。いいかな?」

「いいわけないだろっ。」

そう言うとハーフエルフは腰に差した剣の柄をゆっくりと掴む。余も近くにあった剣に手を伸ばそうとしたときだった。いつ動いたのか、剣の刃が余の首に添えられていた。

「これで聞く気になったかな。この剣は魔剣ジュピター。軽く撫でれば君の首は飛ぶよ。」

ガタン

伸ばそうとしていた剣が置いてあった台ごと真っ二つの割れて倒れた。いつ切ったのだ。剣が真っ二つに切れるものなのか。我が家に伝わる宝剣だぞ。魔剣ジュピター…知っている。伝説の九魔剣のひとつだ。見るのは初めてだが。余は頷くしかなかった。

「私は魔導師のハリムという。知っているか?」

「いや、知らない。」

「では『氷結の大魔導師』というのは聞いたことがあるかな?」

「歴史で習った。いや、待てハリム…氷結の大魔導師ハリム!」

「それが私だよ。」

「そんな大物がなんの用だ?怒らせるようなことは何もしていないはずだが。余が王になったのが不満か?」

「いや、政治に首を突っ込む気はないよ。政権争い…仕方のないことだ。それがあるから良い王が誕生するのだろうし、優しいやつが良い王とは限らないからな。ちょっと頼み事だ。恐喝と取ってくれても構わないが。」

「なんだ。言ってみろ。」

実は漏らしそうなほど怖いが精一杯威厳を出して言う。

「ナタリアとエドワードは知っているか?姓は確かベロン。」

「我が国の貴族だった家の子供だ。知っている。国家反逆罪がかかっている。その二人がどうした?」

「私が保護した。」

「な、なに!?」

「死んだことにしてもう追っ手を向けるな。わかったか?」

半壊した青龍騎士団…こいつがやったのか?大魔導師相手では仕方ないか。

「追っ手に向けた騎士団が大半逃げ帰ったり死亡が確認されたりしている。見えないところから魔法の攻撃を受けたと報告があった。貴様がやったのか?」

「ん?ああ、私がやった。次の追っ手は向けるな。もうあきらめろ。わかったか。」

ちっ、ナタリア…楽しみにしていたのに。この状況では仕方ないか。

「わ、わかった。だが、死んだという証拠になるような物がほしい。」

何もなければ余の派閥の貴族たちが納得しない。余がそういうとハリムと名乗る男は空中を掴むような仕草をする。するとハリムの腕の先が消え、腕を引くと手に少女用のと小さな子供用の外套が掴まれていた。

「く、空間魔法?」

「ああそうだ。これでなんとかしろ。」

ハリムは外套をベッドの上に投げる。

「わ、わかった。」

服だけだと少し弱いが仕方ない。

「今後追っ手を見付けたら命がないと思え。こうやって簡単にここまで侵入できるし、魔法でこの城を吹き飛ばすこともこの街を更地に変えることも出来る。」

「ま、待て。まだ3人騎士が帰ってきていない。そいつらが接触するかもしれない。」 

「そいつらは大丈夫だ。もう処理した。今ごろここに向かって帰ってきてるんじゃないか。」

「では、大丈夫だ。約束する。」

「それはよかった。彼らの両親はどうなった?」

「ベロン元伯爵夫妻か?国家反逆罪だ。長男と合わせて3人しょ、処刑した。」

「ふむ。では宮廷魔導師の女性はどうなった?たぶん雷魔法を使える人だ。名前は知らない。」

「ビアンカかな。彼女はまだ宮廷魔導師だ。彼女に何かあったのか?」

「雷魔法の使い手は貴重だ。大切に扱えよ。」

「ああ、分かってる。彼女の働きには期待している。」

けっこういい女なので手込めにしてやろうと思っていたが止めた方が良さそうだな。

「以上だ。いい時間が持てた。感謝する。今回快諾してくれたのだ、こちらも何がひとつイカルディ王国のために働こうじゃないか。仕事は選ぶが。何か頼みごとがあったらロマニコフ商会か帝国の冒険者ギルドに伝言してくれ。」

なにが快諾だ。完全に脅したじゃないか。

「ああ、わかった。では何か依頼があったら伝言する。」

「次会うときは謁見を申し込むとするよ。ではな。」

ハリムはそう言うとふっとその場から消えた。

余はその場に尻餅をつく。はぁーよかった。魔導師ハリム、ヤバいやつだったがなんとか命を繋いだ。王になったのだからあんなやつとも付き合っていかなければならない。今回は奴と繋がりが出来ただけでもよしとするか。余は気を引き締めるのであった。


※ハリム視点

明け方ふと目が覚めた。横にアンナはもういなかった。もう仕事を始めているのだろう。相変わらず働き者だ。ベッドでは3人がすやすや寝息を立てながら気持ち良さそうに眠っている。

「今のうちに用事をひとつ済まそうかな。」

桶に水を入れ直し新しいタオルを搾って顔を拭き、黒いズボンをはきベルトをとめ、白いYシャツを着る。腰に剣を差し黒い革靴を履いて準備完了。いつもの私のスタイル。楽でいい。

出発しようとしてふとあることを思い付き脱がれていたナタリアとエドワードの外套を亜空間に放り込んだ。

転移魔法でイカルディ王国にちゃっと飛んで用事を済ませてちゃっと帰ってきた。この子らの両親と兄は残念だが政権争いなら仕方ない。この子らが仕方ないと思えるかは難しいだろうが。兄がいたのか。優秀だったのかな?騎士団を半壊させたのはエドワードだよな?思ってた以上に派手にやってたんだな。普通の子供が1騎士団相手に1ヶ国またいで逃げて来られるわけないか。末恐ろしいな。エドワードに魔法を教えたのはビアンカでいいんだよな?雷魔法を教えられる人間がそうそういるとは思えない。さすが雷魔法の使い手、罪に問われなかったんだな。うまくやったもんだ。

もう夜は明けていて明るい。

「おはようございます。」

「おはようございます。」

ナタリアとエドワードは起きていて出掛ける用意をしている。サラだけまだベッドで眠っている。これは当分起きないな。

「おはよう。君たちに謝らないといけないことがある。君たちの外套、勝手に貰ったよ。イカルディ王を納得させるのに必要だったんだ。でもお陰でもう大丈夫。追われることはないはずだ。勝手に事を進めたが良かったかな?」

「え、もうおわったんですか?」

「父上や母上や兄上はどうなりました?処刑ですか?」

「ああ、残念ながらね。ビアンカという宮廷魔導師は生きているらしいが。」

「そ、そうですか。私たち貴族でしたから、こういったことはよくあります。仕方ないですね。」

「び、ビアンカ先生だけでも生きていてよかった。」

二人とも気丈に振る舞っているが、まだ子供。辛いだろう。私は腰を落とし両手を広げる。

「辛いときは泣いてもいいんだよ。さあおいで。」

すると二人は私に近付いてきた。目から涙が次々と溢れてくる。私は二人いっぺんに抱き締める。すると二人は堰を切ったように泣き出した。

「うううう、お父上…お母上…兄上…」

「わーんわーん、みんな死んじゃったー」

私は二人の頭を撫で泣き止むのを待つのであった。

ナタリアとエドワードはまだ幼くイカルディ王国の情勢を詳しく把握していなかったので、イカルディ王の視点を作ってみました。イカルディ王、実はけっこうイケメンです。

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