蕀の魔女の憂鬱
シャーロット視点です。
わたくしの名はシャーロット=シテインファンベルク。『蕀の魔女』という二つ名を持ちます。吸血鬼種族の王だったので『吸血姫』と呼ばれることもあります。なぜ『蕀の』かと申しますとわたくしは森魔法という魔法の使い手で、植物を自由に操れるからでありましょう。今、古城の庭で栽培しておりますブドウもわたくしがちょちょっと魔法をかけてございます。
少し魔族の話をしましょう。魔族とは人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族以外の知能のある種族の総称であります。他に竜族というのもありますが、あれは特殊で知能の低い魔物と変わりない者もおれば、人型に変身でき、知能のとても高いのもおりますので全く別物という考えが主流であります。
魔族はこの大陸の3分の2ほど占めます大森林『黒の森』に大半が居を構えております。なのでこの森は魔族領と呼ばれております。ちなみに残りの土地は人族領と呼ばれておりますが、人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、あと温厚な魔族や竜族も暮らしております。大半が人族なので人族領と呼ばれます。
『黒の森』に住む魔族の大半は好戦的であります。魔族には国という概念が存在せず種族で集まって生活する者が多いです。種族間や個人の争いが絶えません。ですが、他種族が『黒の森』に進攻してきたときだけは団結して対抗いたします。ですので、この『黒の森』こそが国と言えるのかもしれません。そういったとき、魔族を統べる者を事前に決めておきます。それが魔王という存在です。
わたくしが誕生してから300年ほど経ったころ、前の魔王が崩御いたしました。『黒の森』に住む有力種族の長が集まり次の魔王を決めることになりました。吸血鬼族の王であるわたくしもその会議に出席いたしました。話し合いが進み、わたくしと百目という種族の長の真っ二つに意見が分かれました。わたくしは魔王の座に興味がなかったため辞退したのでありますが、わたくしを押した他の種族長たちに許していただけず、二派に分かれて戦うことになりました。勝敗はあっさりつきました。百目の種族長と彼を押した種族長たちの力は圧倒的で、こちらに対抗できるのがわたくししかいなかったのであります。
捕らえられたわたくしは従者たちと一緒に魔族領外れの古城に入れられ山ごと強力な結界を張られ閉じ込められました。
そこからが地獄でした。生きていくために古城の庭にブドウ畑を作り収穫したブドウでワインを作りました。することはそれだけ。他にすることがありません。わたくしは趣味の魔法の研究に勤しみましたが、従者たちはワイン作りと古城の掃除だけの日々。暇です。生きているか死んでいるかわからなくなります。みな自分の寿命の来ない性質を恨み始めました。また吸血欲求にも苦しみました。やはりワインだけでは食欲しか満たせなかったのです。
閉じ込められて100年が過ぎたころから従者たちが耐えきれず消滅を選ぶ者が後を立たなくなりました。しかし150年を過ぎたころ1つの出来事がありました。1つの新たな命が誕生したのです。幼い吸血鬼にはミザリと名付けられました。ミザリが生まれて数年は古城も活気つきました。しかしミザリが生まれて100年も経てばまた従者たちは消滅を選ぶようになりました。ミザリの両親もわたくしにミザリを頼みますと言いながら消滅しました。
絶望でした。いつの間にか最大時100人以上いた従者はもうミザリを入れて10人になっていました。私はもう限界でした。多くの従者たちの消滅を見て耐えきれなくなっておりました。消滅を選ぼうとしたそのときでした。奇跡が起きたのです。
「たのもーーーーだれかいるかーーー」
古城の玄関の外から聞きなれない声が聞こえて参りました。わたくしは窓から外を見るとエルフ族の男が立っているのが見えました。そこから玄関までどのようにして行ったのか記憶が曖昧です。気付けば玄関ホールに11人全員集まっておりました。全員期待と不安の入り交じったような顔をしておりました。
「開けますよ。」
従者の1人が言いました。わたくしは頷き少しでも威厳が出るようにみなから1歩下がり服を整え背筋を伸ばして待ちます。
「やぁやぁ初めまして。私は魔導師のハリムという。これはこれは美男美女の集まりだね。もしかして吸血鬼かな?」
玄関ホールに迎え入れられたエルフ族の男はそう挨拶しました。わたくしは後ろから、彼の前まで進み出て
「わ、わたくしは吸血姫シャーロット=シテインファンベルク。エルフ族の」
震える声をなんとか押さえながら挨拶いたしますが、そこまでしか言えませんでした。
「な、なんと美しい。この世のものとは思えない美しさだ。」
ハリムと名乗ったエルフはわたくしの前に跪くと右手を取って手の甲に口を付けたのです。
「ななななな。」
顔が熱いです。動悸が激しいです。
「とりあえず宴会ですかな?」
従者のひとりが言う。
「おう、食い物いっぱい持ってきたぞ。提供するよ。」
「なんと、何年振りの食事でしょうか。」
「あ、あの血を少しいただけないでしょうか?」
「おういいぞ。私吸血鬼にならないよな?」
「はい。ならないように飲みます。」
ハリムは従者たちにあっというまに囲まれそのまま宴会に突入いたしました。そこから三日三晩宴会でした。あんな楽しい時間は生まれて初めてでした。
宴会が終わるとハリムはわたくしに弟子入りを志願してきました。わたくしは彼と離れたくない一心で住み込みの条件を出し、ハリムは快諾してくれました。
そこからわたくしたちの古城での生活が一新されました。彼の修行に魔法や魔導具の研究、彼のために料理を作ったり、服を作る者もおりました。従者の中で1番変わったのはミザリでした。ミザリはなぜか魔法が苦手でした。ミザリが生まれてもう100年以上経ちますが基本四種を初級程度しか使えません。吸血鬼は基本的に魔導師。ミザリにそれ以上教えられる者がいなかったのです。ですが、ハリムは接近戦もこなせる魔導師だったので、ミザリに体術や武器の扱いを教えたのです。いまではミザリは吸血鬼とは思えないような体術を使いこなします。
またハリムは買い出しや仕事と行って少しの間古城を離れいろいろな人間を連れてくるようになりました。なにかわたくしが吸血鬼族の王をしていたころにもどったようです。
コンコン
ハリムが古城を出た日の夜、昔のことなどを回想しておりましたら、わたくしの部屋のドアがノックされました。
「どうぞ。」
「シャーロット様!どこを探してもハリム様がいません!」
ミザリは部屋に入ってくるなり言います。ミザリはハリムのことが大好きで、わたくしの目を盗んではハリムの部屋を訪れています。隠す気はありませんか?
「ハリムは朝から出かけましたわよ。2週間ほど帰らないでしょう。」
「えー、またですか?失礼しました。」
ミザリは絶望した顔をして部屋を出て行きます。ハリムを吸血鬼にしたら、わたくしより先にミザリが子を作りそうです。
「はぁー。」
ため息が出ます。今回の外出ではいったい何人の女性を落とすのでしょうか?ハリムは顔がいい上、物腰が柔らかく優しく、それでいて強く、お金と地位をもっていますが偉ぶりません。今までは1回に1人くらいでしたが今回はなんだか嫌な予感がします。ハリムは口説き落とした女性を古城に連れてきてわたくしに紹介するからたちが悪いですわね。宿屋のハーフエルフはまだいい方でした。帝国の女帝や白竜姫を連れてきたときは腰がぬけるかと思いました。
「はぁー。」
悪いことばかり考えていてもいいことはありません。そう考えわたくしはまたハリムが来たころの回想をするのでした。
ハリムは魔族に興味なさそうなのでシャーロットに説明してもらいました。
説明しましたが魔族はまだまだ出て来ない予定です。
女性視点難しかったです。




