魔王参上 ①
翌日の朝、目が覚めると、サラがいつもの装いとは違い、頭に白いとがり帽、白マントに、魔法のステッキを持っている。どうやら魔女の正装らしい。
あたしは急いで身支度を整え、彼女の元に近づく。
「ショウ様、いま、お迎えの呪文をつかいました。いよいよ、魔王様がおいでになられます」
と、床にいつの間にか描かれた魔法陣を指した。
とうとう来るのか。あたしは、それを凝視すると、魔方陣が光を放った。やがて陣の中央の黒い影のようなものが浮かび、次第にはっきりしてきて・・・
陣の中央に人がいる。その人物は、すくっと立ち上がると、あたりを見回した。
えっ!誰?
そこにいたのは、長身の美少年。サラの弟さんでも来たのかな?あたしと同じくらいの年にみえるけど。
「サラ、大義であった。礼を申すぞ」
その弟さんは、容姿に似つかない言葉で話しかけた。
「ああ、魔王様。お懐かしいお姿で・・お待ちいたしておりました」
え~、魔王!全然違うじゃない、なによこれ!詐欺でも始まるの!
「おう、小娘。こちらの世界のことはしっかり学んだか」
あたしの方を振り向いた、魔王と呼ばれたその人物が声をかけてきた。
う・・言葉がすぐにでない。やっぱりこの人魔王なの?
「あ、あんた魔王?そ、それにしては、ずいぶんな化け方ね」
「いいえ、ショウ様。魔王様は変身ではありません。若返りの秘術をつかわれたのです」
「そうだ、この術は、日にちがかかるゆえ、今の参上となった次第じゃ」
若返り・・。こいつは元はこんな美少年だったってことなの!どこをどう間違えれば、あんな赤鬼みたいな姿に育つわけ。
「ところで、ワシの名は決まったのか?」
「はい、赤井真央様と名付けていただきました」
魔王の問いにサラが答える。
「そうか、真央か。よかろう」
こんなにあっさりしてるなら、悪井奴太でもよかったんじゃないの?
「おぬし自身は、なんと名づけた?」
「翔・・早井出 翔だよ」
魔王の問いにあたしが答えた。
「そうか、翔か。おぬしとワシとは、これから3年は、この世界の住人だ。おぬしとワシは対等であり、愛を生じさせるための無理強いはせぬつもりだ。心せよ」
「いいよ、わかった。遠慮しないからね、真央」
「ワハハハハ、早速、呼び捨てか。面白いやつだ」




