首を刎(は)ねる篭手(こて)<楽園編23話>
唐突ですが、おいわい野郎こと御祝七瀬のイラストを描きました。活動報告か、第2話「御祝七瀬の平凡な学園生活」に貼ってあります。マウスで描くという自殺行為をしたので、粗いです(笑) 調子に乗って、「挿絵あり」のタグまでつけてます(笑)
フェレスとかも当然描くつもりではあるんですが。ゴスってどう描けばいいんだろう……。
リーノは、新たに、<断頭の籠手>という魔法が使用できるようになったと言った。
「うん、それで?」
大嶋剛司はアテが外れそうな予感を抱きつつ、説明を求める。
『んーとね、そーだ! あっちを見せて!』
北の空を指さした。この幼女はまたしても、画面外のことを言ってのけた。剛司は弁当箱を置き、立ち上がって北の空にスマートフォンをかざす。
「これでいいか?」
空を見渡したリーノは、飛び去ってゆくカラスに目を止める。
『ゴメンね、カラスさん。リーノとおんなじ名前だけど』
画面の幼女は、犬型手袋の<クーちゃん>を突き出した。
『<クーちゃん>の活躍、見逃したらダメだよ。リーノと一心同体のワンちゃんなんだから』
「はいはい」
おざなりに頷いた。
リーノは、突き出した手袋を、斜めに振った。飛行中のカラスの首が、突然両断される。悲鳴さえ上げる間もなく。
泣き別れになった首と胴体が、住宅地に落下していった。
「す、すごいじゃないか! 本当にギロチンだな!」
凄惨な光景に目を奪われる。
『これで、ぜーんぶ解決だよ♡』
リーノは笑顔で言った。
だが、剛司は笑顔とは裏腹に、貴美の首が飛ぶ映像を想像してしまい、薄ら寒い気分に陥った。
ムシがいい話だが、特定の記憶を消すとか、そういった「穏便な」魔法を期待していたのだが。
それでも、心強い切り札であることには違いない。
いざとなれば、伊勢乃木貴美の首をこれで刎ねなければならないかもしれない。
大嶋剛司は冴えていた。だが、“ネオファイト”や“ヴィクティム”という語が何をあらわすのか、までは辿れなかった。
――そして。
「ランクアップ」という言葉の意味も。階級が上がることだけが意味ではない。
ランク(人生)がアップ(終わる)。つまり、リーノは。
剛司の死を予告したのだった。
――サイドN――
「……そこで、警邏の姿が、突然、大嶋剛司君の姿に変わったのだ」
伊勢乃木貴美が、先日の珍事を詳細に説明する。
「で、御祝書記の言うところの、“魔法”とやらで、それは可能なのだな?」
“魔法”があること、その所持者がこの町に多数いるかもしれないことは説明しておいた。5月1日については、「魔法所持者が、災厄を守らされた。願いをかなえた者がいる」程度の、非常に簡潔なまとめを話すにとどまった。「福主優雅」に関しては、おくびにも触れていない。
「はい。僕の見た限りでは、常識とか通用しません」
なにか共通点もあったような気がしたが、七瀬にはうまく言語化できなかった。
「魔法、か。なにやら、リリカルな響きだな」
「そ、そうですか?」
従前目を留めたことはなかったが、馴染みがないとそう考えるのかもしれない。
「この段階では、3つの可能性が挙げられそうですね」
生徒会長に叩かれて、まだ痛む背中をさすりながら、七瀬が仮説を立てる。貴美は生徒会室の備品であるホワイトボードを引き寄せた。
「3つ? 1つ目は、<大嶋剛司が警察官に化けていた>だな。2つ目は、<警察官が大嶋剛司に化けた>か。3つ目は?」
テキパキとホワイトボードに書き込んでゆく。とにかく手際が良い。
「<まったくの他人が、大嶋剛司と警察官に化けていた>です」
指を折りながら、3つ目の可能性を述べる。
「2つの姿がとれる、ということか?」
「分かりません。ですが、できない根拠がない以上、決めつけは早計だと思います」
“魔法”に法則は通用しない。地面から灼けた鉄柱が突き出たり、目や耳を封じる霧を出したり、といった現象に常識では説明がつけられない。
生徒会長は、ふむ、と七瀬の意見を肯定して、書き込んでいく。
「だが、今回は1つ目だろうな。貴美と話したときの反応が胡乱すぎる」
2と3に×印をつけた。
「そうですね。あのリアクションは怪しすぎます。よしんば正解が2や3だったとしても、何か知ってることは間違いない」
七瀬も同意した。
「魔法とやらは、個人で違うのだろう? ならば区別するため、大嶋剛司君の魔法に名前を付けておくか。“カメレオン”でどうだ?」
少々意味合いが違う気もするが、ミーニングは外していない気がした。そもそも、呼び名にこだわる必要もない。
「では、カメレオンで」
あっさり同意した。
貴美はとにかくリードが上手い。要点をまとめ、そこを見失わないように、物事の主眼から逸らさせない。“魔法”という、初めての産物に対して、修正を加えつつ的確に対応している。「分からないものは分からない」としておくことが如何に重要か、よく知っている。
「彼を尋問するのか?」
「放っといても、向こうからリアクションがありますよ。それより……」
生徒会長の説明で、気になる部分があった。
「大嶋君、スマホで話してたんですね?」
「ああ、歩いている最中もずっとだ。マナーが悪いな」
別の視点で怒っている会長。
(つまり、電話の向こうに“誰か”がいた……)
御祝優雅は、魔法を隠匿しているものたちが「いっぱい」いると言った。
黒い手紙は、模造魔女「たち」が目覚めると警告してあった。
いずれも複数形である。
今回の件は、大嶋剛司1人をどうにかして済む問題ではなさそうだった。
アナグラム問題正解者のヨンヒイ様リクエストが、「キャラクター絵描いてください」という無茶ブリでした(笑)
マウスで描くの初めて、ファイアアルパカ使うの初めて、レイヤーってなに?って状態で描いたので荒いです(笑) 次はペンタブ買います。




