アタシと、信号機トリオの漫才<楽園編8話>
話の都合で、今回ちょっと短めです。キリのいいとこまで載せると、3700字超えちゃってたので。
毒錆の取り巻きが、ちょっとのタイムラグで我に返った。おお、早い。
「ああ、さっすが、ドクさん。ナイスアイデアっスよ!」
リーダーの機嫌を窺いつつも、山刷はすぐにヒネリのない言葉でドクサビを持ち上げる。ハタから見物してるとシラジラしいけど、持ち上げられてるほーはウレシい、ってのはどこのソシキでもいっしょ。
ま、太鼓持ちも立派な才能なんだけどね、徹底できてれば。
でも、ヤマスリはちっっとも徹底できてない。ドクサビのいないトコでは、散々文句言ってバカにしてるもん。アタシが知ってるぐらいだから、ドクサビ以外はみんな知ってるんじゃないかな。
もっとも、黒いお手紙をもらっちゃったアタシも、目くそ鼻くそに違いない。シモの感想多いな、アタシ。やだ、お下品。
ドクサビは、“手下でも気付いたリーダーの怒り”には、気づいていないっぽい。夜宴の前でも後でも、暴力だけを基準にして生きてきた男だもんね。身体がゴリラみたいにゴツイし。ザ・愚連隊。
中年男は、部屋の隅にいたアタシを親指で差した。
「分かってると思うが、彼女の“占術”は、道具の調達が必要なんだ。おいそれと使えるものじゃないんだよ」
こら。急に振らないでほしい。ほら、愚連隊が睨んできた。気弱な人間なら寿命を縮めるよ、きっと。不意打ちだったのでアタシも強張った顔をしていたと思う。まあ、愛想を振りまくような面子でもないし、いいか。
「アンタ、とっとと占いなさいよ」
猪寅カヲルが凄んでくる。話、聞いてた?
「おっと会話が成り立たないアホがひとり登場~」ってアタシの好きなマンガ風にバカにしたい。しないけど。
ちなみにこのイノトラ、顔が細長くて、目が細い。で、茶けた金髪なもんで、キツネに見えて仕方がない。モンダイは、キツネほどカワイくも賢くもないってこと。
アタシは「派閥」に属してない。だってメンドーだし、ダメ人間成分が感染しても困る。いや、冗談じゃなくて、空気感ってヤツか、ダメ人間は空気を澱ませるのだ。普段から親しくなんかしたくない。
んだけど、しょっちゅういろんな連中に「俺らの派閥に入れや」とか、「お前は入ってくんな」とか言われたりする。イノトラは後者だった。何かにつけて目のカタキにされてる気がする。
リーダーはドクサビを優しく言って宥めているケド、ユダンしてはいけない。言葉の裏には「お前には“道具”が用意できないんだから、大人しくしておけ」という威迫があるんだもん。大人って怖い。
リーダーが、ゆっくりと男の肩に手を置いた。
「お金の方は、できる限り用意するから……」
言葉だけだと、大人な世界。実態は、くたびれた中年とマウンテンゴリラだから、ちっとも絵にならない。
乱暴者は、邪険に手を払う。無駄に荒々しいな、コイツ。
「ケッ、わーったよ! 50万は用意しろよ!」
衝突寸前だったけど、どうにか回避できた……のかな?
それにしても、50万円稼ぐのに、どんだけガマンとガマンとガマンが必要か、分かってるのか、コイツ。どーせ、「他人が汗水たらして稼いだ50万を、脇からかっさらえば楽」とか思ってるのかな。種モミ奪いそーなモヒカンだし。実際、似たようなことしてるのは見たことある。
ああ、さっき言ってた「名案」も同レベルだった。つまりコイツにとってお金は、「稼ぐ」モノじゃなくて「奪う」モノなんだろう。右から左にシフトさせるだけで、生産性がない。
ドクサビは床を蹴りつけるようにしながら、出て行った。ああ、良かった。絡まれずに済んだ。
「あ、待ってくださいよ、ドクさん! 昨日、ケッサクだったんっスよ! 俺に“コーラ買ってこい”とかいきなり命令してきやがったバカがいてですね……」
「うっさいよ山刷! そんなことよりドクさん、この後飲みに行きましょうよ!」
取り巻き2人が後に続く。……なぜ出てくイノトラに、アタシは舌打ちされにゃならんのか? キツネならキツネっぽく、トリマキじゃなくてエリマキにでもなってればいいのに。
扉が壊れるほど強く閉じた。でっかい音で耳が痛む。
嫌われる天才かな、コイツら。
解答3:「伊勢乃木貴美」⇒いせのぎたかみ⇒せいぎのみかた⇒正義の味方 でし た。
「色麻」様に解答をいただきました。ありがとうございます!
解答4:「山刷吾郎」⇒やますりごろう⇒ごますりやろう⇒ゴマスリ野郎 でした。
性格を表してるって言うより、単なる悪口かも(笑)
後書きばっかり長くなりそうだったので、猪寅カヲルは次回に回します。すいませ ん。ヒントはことわざの一部であることと、本人が狐っぽいことです。
毒錆右近は四文字熟語のアナグラムです。濁点移動あり。




