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「アタシ」と黒い手紙の正体<楽園編31話>

ついに100話に到達しました! コケの一念と言いましょうか(笑)

世紀末ガールズトークの後編ですが、秘かに100話に持ってくるように企んでいた回です。


「なぜ手紙は黒いのか?」

「同じようなズルで魔法を持ち越そうとした人間はいなかったのか?」


などの、今までに続いていた疑問に対する解答が出ている回です。

――サイドK 続行――

 

 最近あんまり近寄ってこなかったのは、それが原因かい。ひょっとして、見張られてたのかな? 



で、「タオル遊び」も見られた? ま、いーけどね。




 そこに、ショボい足音がした。ヤダなあ、また誰か来た。


「お、おう。お、お前らも来てたのか?」


 ちょっと、いや、かなりどもりながら話しかけてきたのは、ドロボーニートこと宇平うへいケンヂ。普段はヤドカリよろしく家に引きこもってるクセに、今日は出てきたのか。いや、お目当ては分かり切ってるんだけど。


宇平うへいちん、おひさー!」


 おー、いきなりハグしてますわよ、奥様。ケンヂの鼻の下がエラいことになってるわな。で、その隙に“水晶眼”をこっそり起動してる。速攻で値踏みしてんな。


 アタシは席を離れた。話が中断されちゃったケド、美園みそののショーバイの邪魔しちゃ悪い。って言うか恨まれるのヤダ。


「き、今日な、し、新作DVD買うんだ。み、見る?」


 小学生に近づく変質者のようだケド、本人は至ってシンケンだ。シタゴコロってのは偉大ですネ。


 この悪女は、やたらと相手にべたべた触れてくる図々し(フレンドリー)さを持ってる。だから、このケンヂと呼ばれると怒るケンヂみたいに、女に免疫がないオトコどもはイチコロだ。


 普段はここに来てもスマホや缶のラベルを眺めて過ごす置物(ボッチ)野郎のケンヂも、すぐにコロッとダマされちゃったんだな。美園が来るときはこんな風になけなしの勇気を振り絞って話しかけてくるのだ。




 でも、ちょっと意外。(利用価値)が無いオトコ筆頭のはずなのに。また親の財布からくすねたのかな?


「見る見るー! でも、後でね!」


 軽くいなすテクニックは達人並みだ。流水の動き。どーせケンヂは大しておカネ持ってないから、後に回したんだろう。


 で、何とアタシの方にやって来るではないか。おいおい、来るな疫病神。あ、支払いを請求しに来たのか。


 美園が、どっかりとテーブルに座る。ケンヂが背後で、ミニスカから伸びる足を食い入るよーに見てる。まるで3日間おあずけをくった犬であるな。







「さっきのネタ、無料ロハにしとこっか?」


 親指と人差し指で輪っかを作る。世の中、タダほど高いものはない。こんなヤツに借りを作ったら、骨までしゃぶられそーである。


「フライングした分の情報料ぐらい、払うわよ」


 アタシは財布から3万円を抜き出して、乱暴に突きつけた。3万に根拠はない。ケンヂのフトコロ具合から逆算すれば、こんぐらいが相場かなあ? と勝手に決めつけただけ。

 ううー、残り2千円ぐらいしかないやい。いや、確か500円玉が残ってたかも。……やめよう、悲しい気持ちになってきた。


 安っぽいドラマとかだったら万札を投げつけて「拾え!」とか言ってるトコだ。コラ、ケンヂ、後ろからしゃがんでスカートの中を覗き込もうとスンナ。


「まいどー♪」


 嬉しそうに福沢サンを数える畜生女。アタシは付き合ってられなくて、立ち上がった。さっさとオサラバしたい。





「……ねー、綺羅キラちん」


 アタシの背中を、声だけが追いかけてくる。


綺羅キラちんってばさ、何者?」


 振り返れば、眼を水晶眼で光らせている覗き屋が1匹。心の中が覗けないなら、服ぐらいいいや。


「ちょっと占いができるダケの、何の取り柄もないダメ人間、よ。アンタも似たよーなもんでしょ」


「ボクはダメ人間違いますぅー。お小遣いも自分で稼いでるんだから、いいっしょ」


 ダメ人間がほほを膨らませてる。



「アンタの水晶眼がウラヤましいわ。随分荒稼ぎしてんでしょ?」


「うん、しゃーわせ♪ この眼のお陰で、今までよりラクに、しかもドバッとお金が入るよん。ホントにこの魔法(もら)ってラッキー♪」


 アタシは皮肉で言ったんだケド、美園は珍しく本心で答えてるっぽかった。






――この女は、やはりバカだ。頭が回るのは男を振り回すときと、おカネを数えるときだけ。


 なぜ送り付けられた手紙が黒かったのか? とかすら、考えたことはないんだろな。




  黒い手紙ってのは、もともと死人に送られる手紙だ、ってコト。



 つーまーり、黒い手紙を送ったお人――カミサマ、ホトケサマ? 分かんない――にとって、アタシらは死亡認定されちゃってるニンゲンなワケだ。



 「でも生きてる」? 「魔法を持ち越したことがカミサマの想定外だった」? 

 たぶん、ダメ人間ズはそう考えるんだろう。



 でも、カミサマっぽい人の、「死亡確認!」はそんな甘いモンじゃない。

 やっぱりカミサマにとってアタシらは、“死ぬニンゲン”なんだなコレが。




「魔法貰ってラッキー」って? そりゃそーだよ、ラッキーと思わされてんだもん。黒い手紙の送り主(カミサマ)にさ。



 こんだけダメ人間と魔法のカップリングをたくさん見てきて、気付かないかな?

 例えば、ドクサビの肉体強化。美園アンタの覗き見。ケンヂの人避けの結界。アタシの占骨術。などなど。


 どれもこれも、持ち主の欲望をちょっとばっかしかなえるような組み合わせじゃない?

 

 そりゃ気に入るわ。幸せだって思うわ。やりたかった、でもできなかったことができるよーになるんだもん。

 ドクサビはもっと派手に暴れられるよーになるし、美園アンタは知りたかったコトがカンタンに手に入るよーになるし、ケンヂは人に会わないですむよーになる。




 コレが、黒い手紙を送ったおヒトの善意、なワケがない。




 むしろ、底の抜けた悪意だ。「このアタシ」の背筋が凍り付くほどの。




 ドンヨクに米を食べ過ぎた雀は、お腹が重くなって飛べなくなるそーだ。で、動きの鈍ってるウチに、猫とかに食べられちゃう。


 欲で身を滅ぼすってコトだわね。



 アタシらもイッショ。

 生き延びて、魔法を持ち越す。そしたら、使いたくなる。現に、ココの連中はそろそろ使いたくて仕方がない。せっかく持ち越しても、使えないんじゃフマンに決まってる。暴発寸前。


んで、一度使うと、どーなるか? エスカレート・悪化の一途・下げ止まらなくなる。坂道ゴロゴロ、止まんない。



 ドクサビはケーサツに捕まるまで過剰な暴力におぼれ、美園は「知ってはいけない秘密」にまで首を突っ込み、ケンヂは存在を忘れられるまで孤独を貫く。



 待ってるのは破滅だ。




 飛べなくなって食われる雀とイッショ。カミサマは、魔法を持ち越そうとするズル賢いニンゲン対策に、一等悪質なワナを仕掛けてたワケだ。

 時限式で、必ず発動して、しかも「自滅」という、あまりにもタチの悪いワナをね。


 結果ワレワレは、北斗神拳伝承者と戦うモヒカンと同じぐらい確実に死んじゃう。



 魔法ってのは何のことはない。毒とか、呪いと同じなんだ。アタシたちは5月1日を乗り越えた願いに、毒や呪いを抱え込んじゃった。笑い話にもなりゃしない。

 しかも、おメデたいヤツらはそれを「オレたちは特別なことができる、選ばれた人間だ!」とか思い込んでんだから救えないったら。






 心の中までは見通せない水晶眼の持ち主は、アタシにキョーミを失ったのか、キープしておいたケンヂの方に移動していった。


 美園は自惚うぬぼれ屋だ。きっと、「自分ならうまいこと立ちまわって金にできる」とか考えたんだろう。


 世界を得と損、欲と金でしか色分けできない貧困な思想のオンナ。




 だから、引き際が見定められず、しまいには自信をおもり溺死できしする。本人が思ってるほどカシコいワケがない。



 だって、黒い手紙が届く(死亡認定される)ぐらいなんだもの。







 さて、大事なコトを考えねば。美園コヤツは、アタシのことをリーダーにしゃべったかな?




――うん、バラしてないな。情報は独占しとかないとおカネにできない。第一、リーダーにしゃべったら、決定権が美園の手を離れる。カネ勘定が得意なコヤツが、そんな“損”をするはずがない。


 前にリーダーと話したトキも、アタシに不信感を持ってるよーには見えなかった……気がする。





 喜寿美園きじゅ・みそのは、このグループの、いや、リーダーの“目”だ。あらゆる綱を握ってる存在。





 でも、仕方ないか。





――目障りになってきたなら、沈めてしまおう。沼に――





 我知らず、アタシは大きなため息を吐いていた。



 こんな心の踊らないことはない。

 ハズレと分かってる宝くじを、わざわざおカネを払って買うよーなもんだもん。




 あー、つまんない。





メリークリスマス! サンタさんにはハンターハンターの連載再開を祈っておきました。


問題:「宇平ケンヂ(うへい・けんぢ)」の語源アナグラムはなんでしょう?

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