表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

1(編集1回目)

「これはこうして・・・次にこれをいれて・・・」

  男は、苦心していた。物語の始まりというのは重要だ。それこそこれからの展開をワクワクさせるようなものを作るのも大事だがそれ以前にこの世界を理解してもらわないといけない。踊り手と指揮者の関係、舞台のあれやそれ、緊張に満ちた第一回目だ、一回理解させればそれでいいのだ。


男は、懐に手を差し伸べて懐中時計をカチリと開いて時間を見た。1時間みっちりとつけたこの世界の事を登場人物を描いては、組みなおした。間違いは、ない。

 気合を入れて第一発声―――

「わ」


 「釣りしてたら娘が釣れたぞえー!獲ったどー!」


「は?」

 唐突な始まりにこれからの物語の説明とか舞台とか説明しなきゃならんのに目の前のちびっ子お嬢様は、猟師のように大物吊り上げて意気揚々と凱旋してきた、ずがんとドアを開けてそれをずるずる引きずりながら居間へと入ってきた。


「どんな味がするか楽しみだのう」


 ニコニコ顔でちびっ子はそれを部屋へと連れて行こうとしている。おそらく食べるのであろうが明らかにその物体は人形ではなく生き物だった。ついでに言えばちょっと唸ってたりしてるし生きてる。


「はい、お嬢様、ストップ、それ食べちゃダメ生だからダメ」


  ここに生き物が釣れるというのも珍しい話ではないが人が釣れたというのはかなり珍しいことであった。加えてこの偏食我侭お姫様は、なんでもかんでも食べたがるものでその犠牲者は数知れず


「生?お刺身にしてくるのかえ?良かったのう、ノブ今日は、お魚が食えるぞい」


 眼をいっぱいに輝かせながらちびっ子は脇に着いている猫に喜びいっぱいで好物のお魚が今夜の夕飯に出るのだと勘違いした。

 

「そう、そう、だからそれをよこしなさい」

 

 最優先項目の対象を確保しなければ、まともな話ができなさそうだ、それに今日のゲストであるはずだ。


「えー仕方ないなー」


 勢いよくぶんっと娘さんを投げてきました。それこそ自力ではなし得ない様な空中回転をしているのである。


「おっと」


 私は、それを受け止め―ずに避けた。危ない危ない怪我をするところだった。飛んでいった先は、屋敷の外。特に壊れてダメなものは無いので気にせず避けた。


「お嬢様?いいですか大きな物を渡すときは投げずにちゃんと手渡しでお願いしますね?怪我すると危ないですからねー?」


「はいはい、それよりもご飯早くしてねー」


 何事も無かったようにちびっ子は二階の自室へとどたどたと駆け出していった、その姿を見送りため息を吐いて僕も先ほどの続きを修正する為に席に戻ったのであった。


「まったく困った人だ、予定を組みなおさないといけませんね、どうせまたあとで何かしでかすのですから早めに修正しないと・・・あれれ?」


 僕は視線を感じた。居間には私一人、お嬢様は二階、ノブもお嬢様に着いて行っている・・・少し離れた、いや近くにいるようなそんな感覚。

  眉をひそめながらその視線を探る、しかし見当たらない・・・敵意も感じない。

 

 「ま、どうでもいいか、早く書ききってしまってそうだ夕飯の支度もしないと・・・」


 手早く予定を書ききり席を立つ、開けたままの扉をしっかりと閉めて奥の厨房へと歩みだす。何かを思い出したように扉に戻った。


「あ・・・どうしようか」


 少しうろうろしながら考えて二階のお嬢様へと聞こえるように大声を上げた。


「お嬢様ー?」


「なーにー?」


「食料のストックが切れてるので後で開いてくださいませんか~?」


「はいはい、わかったよー」


「後ですね、小説もう始まってしまうみたいですからちゃんと準備してくださいよ?普段のままですと皆さん絶対、引いてしまうのですからね?行儀よく、嘘でもいいですからまじめにお願いしますねー」


「はい、はいでいつから写すの?」


 とことこと一階に戻ってきたお嬢様は、いつのまにかしっかり着替えていた。さっきまで白いワンピースの寝巻き姿だったくせに外用の服装でいた、本来は着物という和服なのだが下部分が動きにくいという理由で短くスカートのようにされている。服だけでなく装飾品もしっかりとつけられている。


「ああ、もう準備できてるようですね、いいですか始めが肝心と言います様に最初がよければ後はどうなろうと構わないのです、普段、我侭で色々終わってるようなお嬢様でも最初がよければいいんです、わかりました?」


「はい、はい、でさっきの食べて開くぐらいでいいのかえ?」


 心底めんどくさそうにちびっ子は頭をかきながら聞いている。ちゃんとやってくれるか心配で仕方が無い。


「ええ、ここがどんな所か私達がどんな人なのかこの台本どおりやっていただければ間違いは無いでしょう、読みながらでいいんで話してくださいね?それじゃ私は、外に捨ててある娘を拾ってきますから」


めんどくさいーという声や私に対する罵倒を聞きながら扉を開いた。


「さてそれでは、はじめましょうか?」


 これからこの長い物語が始まるのだ。何度も言うが始めが肝心だ、まずはこの瀕死の娘を解放して良いイメージをつくってそれから・・・


「ねぇねぇ」


そしてそこからこの世界の仕組みや・・・


「おーい、ばかー執事ー」


色々脚色して最後には・・・


「冷血漢、顔が良くて頭がガッカリ、ミジンコサイズー」


「誰がミジンコサイズだって?さっきからうるさいですがなんですか?読めない文字でもありましたか?」


 ちびっ子が私の服をぐいぐいと引っ張りながら私を呼んでいる。この大切なときに一体何を・・・


「いやいや、もう始まってるぽいよ?」


「何が?」


「小説」


「はい?」


「だから小説、どこから話し出せばいいのかわからんのだがこれか?この部分かえ?」 


 むむっと顔をしかめながらお嬢様は、台本とにらめっこしている。それなりに用意したことに関してはしっかりやる気はあるようでいいのだが、だが


「何処から写っていたのでしょうか?皆様方?」


 必死に取り繕った笑顔でこの状況を打破しようと試みたいが無駄のようだ。


「あーアレもって来てたときぐらいにはもう始まっていたぞ」


 ビシっと先ほど投げ捨てられたまま、放置されていた娘を指差した。


「あーはいはい、今日の鍵だからちょうどいい時にでも介抱して使おうかと思ってた娘から・・・ですね」


 男は、前途多難な始まりに頭を抱えてしまうのであった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ