♠コロシアム開幕♠
最弱職業とか言って、ロキ結構強いです!!
「ええっと……僕、トイレ……」
「逃げてもダーメッ!」
僕は、そっと逃げようとしたが、呆気なく捕まった。
首根っこを掴まれ、そのまま会場の中に送り込まれた。
「あ、アリス。僕、戦闘向きじゃ……」
「あら、そうかしら? あなたの思考と知恵なら、大丈夫じゃないの」
「そ、それは……」
「自分で、「それは」って、自分の強さに自身あるじゃない」
そうだけど……。
ギャンブラーは、最弱だけど、最も危険な職業なんだ……。
「あれ? アリスは、僕の強さを何で知ってるの?」
「そ、それは……」
まあ、いいけど。
僕とアリスは、選手の待機室に入った。
設備はそれなりで、シャワールームもある。
中には、剛腕無双の名称がつく程の筋肉野郎がたくさんいた。
うん、汗臭い。VRもここまで、リアルにしなくても……。
時代の凄さかな。
「おい、ガキぃ! ここは、てめーみたいな弱い奴が、来る所じゃねぇ。とっと帰れ」
その、筋肉野郎の一人が俺の胸倉を掴み、突きあげた。
たかい、たかい、してもらっている、幼児の気持ちが分かった気がする。
「ガキですみません。ですが、多分あなたより、僕の方が強いですよ?」
「ガキぃ、この状況見て言ってんのか? ああ!?」
「なるほど、あなたは、相手をたかい、たかい、できたら強いと思っているのですか、それは、またユニークのある発想だ、珍しい」
周りの選手が僕の発言を聞いたようで、大笑いし始めた。
うむ、滑稽だ。
アリスは、表情を変えず、冷たい顔をしていたが、自らの手を摘まんでいたので、堪えているのだろう。
すると、筋肉質だが、ハンサムな奴が出てきた。
話が合いそうだ。
「おい、ジャガー。止めないか、コロシアムと言えど、紳士の心がけだ」
ジャガー。めちゃくちゃ合ってるよ。顔とかジャガっぽい。
「ハリー、このガキうぜんだよ!! ぶっ殺してんだよ」
「なら、コロシアムで戦うんだ。対戦表を見ろ」
ハリーが指した方向に、大きなウインドウが出ていた。
そこには、トーナメント式で対戦表が記されていた。
運がいいのか、悪いのか、僕は第一試合で、しかも。
一回戦から、相手はジャガーだ。
なるほど、いい機会じゃないか。
「へっへっへ、ガキぃ運が悪かったな」
ジャガーはそう言って、待機室を出て、闘技場に出た。
運が悪い? そんなはずない。
なぜなら、僕は運のステータスがマックスだから。
これは、むしろ運が良かったのだ。
「ロキ、頑張ってね! 応援してるよ」
「自分から連れてきて、応援しないなんて言われたら、僕泣きます」
僕は、そう言い残し、闘技場に出た。
観客席は、満席近くになっていて、凄い盛り上がりだ。
客にはそれぞれ、賭けをする権利があり、どっちが勝つか予想し当てたら儲けるシステムらしい。
そして、賭けの集計は、会場の電光掲示板に表示される。
――賭けの集計――
ジャガー:2999人
ロキ :1人
おお、皆ジャガーじゃん。
僕を賭けた人。今日は焼き肉ですね!
「両者、整列!!」
審判の発声に従い、整列し一礼を交わした。
「へっへっへ、おまえの負け姿が浮かぶぜ」
「奇遇ですね。僕もジャガーさんが浮かびました」
「てんめぇ……」
「試合開始!!」
僕は、接近戦はまずいので一旦バックステップで、引いた。
ジャガーは背中の大剣を出し、こちらに走って来た。
スピードはそこそこだった。
僕は、胸ポケットからトランプを取り出した。
「トランプ・マジック!! キング!」
トランプが一斉に、空中で綺麗に並んだ。
そして、トランプの剣ができ、ジャガーに向かって飛んだ。
「うお、何だこりゃ!?」
「驚きましたか? 僕の職業はギャンブラー。扱いにくさ故に最弱とされた職業。ですが、使い方次第で強いんですよ、結構」
五本の剣が四方から、一斉にジャガーを襲った。
捕えた。かに視えたが。
「へっへっへ。そんなもの俺の神器レクイエンには、勝てねーよ」
ジャガーは、大剣を横に振りまわし、全ての剣を弾いた。
バケモノかっ……。
「次は、俺の番だぜえええ!!!!」
ジャガーは、大剣をこちらに投げつけた、気が狂ったのか?
しかし、ジャガーはニヤニヤしている……。
まさかっ!
「トランプ・マジック!! クラブ!」
そのまさかだった。大剣は、急速に回転し始め、僕の方へ飛んできたのだ。
とっさに、クラブのカードでガードしたが……危なかった。
よし、僕はまだ、本気を出してないだけ、こっからが本番だ。
「スキル――ドロー・ジョーカー!!」
このスキルは、カードからジョーカーを出し、煙幕を発動させる普通のスキル。
そう、ギャンブラーのスキルは、大抵しょうもなく、せこいスキルばっかだ。
「げほっ、げほっ! んだ、こりゃあ!?」
「煙幕だよ? 僕はどこかなー?」
「そこじゃあ!!」
ジャガーは、大剣を無作為に振り、僕を探し始めた。
うむ、実際僕は、煙幕の外に出て休憩しているのだが。
煙幕も次第に消え、僕の姿は視えてくるだろうね。
だけど、もう遅い。
「ねぇ、ジャガーさん。このゲームの煙幕って何で出来てるんだっけ?」
「ああ!? そりゃ、ただの粉に煙を加えたもんだろ? 粉と煙で視界は閉ざされるからな」
「そう、このゲームの煙幕は粉だ。そして、僕が持っているのは、アイテムのマッチ」
おっと、そろそろ粉が尽きる。
僕は、マッチを点け、煙幕の中に放り込んだ。その瞬間。
「うがっぁ、ぐぎゃあああああ!!!!」
「そう、これは、粉塵爆発と言って、粉状の物が空中にばら撒かれる中で、火を入れたら凄まじい爆発を生む。僕が最初にバックステップで逃げたのは、風上の位置を確保するため、その時から君は負けていた。このゲーム、何故か、科学の法則もリアルらしくてね。残念だけど、僕の…………」
「そう、俺の勝ちだな……」
「うあああっっっ」
ジャガーの神器 レクイエンが俺の背中に突き刺さった。
ゲームの中とは言え、GMは痛覚までリアルに設定した、これはキツイ。
激痛が背中に走り、僕は膝をついた。
煙と共に、中から、ジャガーが出てきた。
クソっっ!!
「残念だなあ、レクイエンは、追跡型の神器だ。敵が視えてりゃ、いつでもグサリよ」
ジャガーがレクイエンを背中から、引っこ抜き。
さらに、僕に刺そうとレクイエンを振り上げた。その時。
「スキル――投げナイフ」
グサリと、ジャガーの腹部に一本のナイフが刺さった。
ジャガーは、悲鳴を上げずに、後ろに一歩二歩と下がった。
「おっと、そこには……」
ジャガーが下がった先には、トランプ・マジック キングの剣が待ち構えている。
完全に、ジャガーは包囲された。
「ぐっ……この、がきゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
パチンと、指を鳴らすと、キングの剣が一斉にジャガーに刺さった。
――人物紹介――
ジャガー
職業:アーマーナイト
種族:人類
容姿:筋肉ムキムキのゴリラ。
顔はジャガイモ。髪はない。ハゲ。