♠地獄の記念イベント♠
西暦 2095年。
日本はコンピューター技術、精密技術を異常なまでに向上させた。
昔では夢で終わった、幻想。
――ゲームの中に入りたい――
今になっては、こんな願いも現実になってしまった。
そう。
VRゲームが開発された。
そして、日本中が熱狂に包まれた。
僕もまた、熱狂の渦に飲まれていた。
あの悲劇が起こるまでは……。
「やっばああ!!! ギャンブル大会の決勝の時間まで、後七分だ!! 遅れちゃう!! 急いでログインしなきゃ」
僕は、急いで家に帰った。
「ただいま」も言わず、階段を駆け上がり、二階の部屋に入った。
そして、部屋に設置されている、VRオンライン接続カプセルに入った。
カプセルの中は暖かく、体に悪影響はまず、ない。
そして、ディスプレイを操作して、僕の今ハマっているゲーム。
――MAGIC・LIFE・ONLINE――を起動させた。
そして、お知らせのアナウンサーが鳴った。
「MAGIC・LIFE・ONLINEの世界へようこそ! お知らせがあります。今夜、十時に中央広場で一年間記念イベントがあります。是非、来てください」
おお、そいえば、もう一年経ったのか!!
すごいな……一年経っても、ランキング数、プレイヤー数共にトップだしな。
このイベントは逃せないな……。
って、やばいやばい。急いで、ログインだ!!
速く、ロード終わってぇぇぇ!!
「ロードが完了しました。では、意識を転送させます」
おお、速い。実に四秒だった。
僕は眼を閉じ、意識を飛ばした……。
眼を開けた……。
そこは、ゲームの中の世界。かつて夢見た世界……。
おっと、速く行かないとっ!
僕は急いで走り、町中へ入っていった。
町の風景は、ファンタジー世界のように綺麗で、洋風を漂わせる。
そして、まさに。ゲーム=リアルになっている。
町中を駆け巡り、とある酒場に足を止めた。
ボロい木材が素材となっている。独自な感じがあり。
これはこれで、好きだ。
そして、この酒場は、安酒が飲めることで結構人気だった。
まぁ、僕は、酒を飲みに来たんじゃない。
ギャンブル大会・種目ポーカーの決勝のために来たのだ。
僕は、一呼吸して、酒場に入った。
「よぉ、ロキ! 遅えぞ! 決勝始まるぜ」
「あ、ごめん、ごめん」
この、短髪の赤毛は、ゴウ。
職業は、アーマーナイト。前線に出て、皆の盾となり先陣を切る事が要求される職業。
僕が一番なりたくない職業だ。
そして、ロキと言うのは、僕の名前。
この世界では、キャラネームと言った方がいいのかな。
「ロキ。この大会、優勝したら、俺の熱いハグをしてやんよ」
「そ、それは遠慮しとくよ……」
「ちぇっ。連れねーなぁ」
そう、この大会には僕も出場している。
しかも、今日は、僕VS前回の優勝者だ。
優勝賞金は、百万ゴル。円単位では、百万円の価値だ。
ギャンブルなら、リアルでやれよ。っと言いたいところだが。
これまた、普通のギャンブルとは違う。
「おい、ボウズ!! さっさと座れ、やんぞ」
前回の優勝者が椅子に座って、机の上のトランプを叩いて言った。
僕も椅子に座り、対面して言った。
「僕の名前はロキです。ボウズではありませんよ。このほどよく長い銀髪が視えません?」
「ああ、悪かったな。つか、おまえ、何だその猫耳? もしかして、ビーストのモデルキャットなのか!?」
「はい。そうですけど……」
この世界には、種族がある。
――人類、エルフ、ビースト、シルフ、ドラゴンスレイヤー。
それぞれ、長所があり、例えば、人類。
彼らは、筋力や知能が他の種族より優れている。
エルフは、魔法力が絶大。
シルフは、空を飛べる。
ドラゴンスレイヤーは、簡単に言うと自らの体が、属性化される。
つまり、口から火を吹いたり、体が火で出来たり。
けど、唯一の弱点は、属性が一つに限定されること。
そして、僕の種族、ビースト。
軽やかな身体能力と五感が鋭い。そして、動物と話せたり。
けど、ビーストには最大の弱点があり。
シルフの命令には絶対服従の、縄に縛られている。
けど、シルフを選ぶ人はそうそう、いないらしい。
また、ビーストには、耳と尻尾がある。
「おい、そろそろやろうぜ! 子猫ちゃん、ウアッハッハッハッハ!」
「では、やりましょう。スタートッッ!!」
――十分後――
「僕の勝ちですね」
僕の手札には、スペードの10、J、Q、K、A。
これの示すもの、それはつまり……。
「ロイヤルストレートフラッシュだとっっ!?」
「そうですね……」
「い、イカサマだっっ!! こんなはず……」
僕は疑いを晴らすために、ステータスウインドウを表示させた。
――ステータス――
ATK(攻撃力):421 DEF(防御力):327
MTK(魔法攻撃力):306 MEF(魔法防御力):245
SPD(素早さ):853 LCK:1000
HP(体力):82000
HPの限界値は、100000で、それ以外は、1000が限界、つまり。
「おまえは、これまで、運で勝ち残って来たのか……?」
「運だけじゃないよ。いろいろと工夫したよ」
「なるほどな、俺はマルコ。優勝おめでとう」
「ありがとう。いい勝負だったよ」
うん、こういうのがいいんだ、ギャンブルは、友情が生まれる。
まあ、リアルだと裏切りの連続だが……。
「おい、ロキ。そろそろ、一周年記念イベント始まるぞ」
「おっと、じゃあ。僕は失礼します! 行こう、ゴウ!」
「おう!」
僕達は、酒場を飛び出し、中央広場へと向かった。
そして、大きな時計塔のある広場に着いた。
中央広場だ。
そして、大きなラッパと、クラッカーの音が鳴り響いた。
辺りは歓喜に包まれ、騒いでいた。
「おお、すげーな。あれ見ろよ!」
ゴウが時計塔を指した。
その先には、GMを名乗る、天使がいた。
そして、天使は言った。
「皆さま、MAGIC・LIFE・ONLINE一周年記念イベントに来て下さり、ありがとうございます。率直に申し上げます。皆さまは今日から、ログアウトができません」
「…………はあぁっっ!?」
ゴウが拍子抜けた声を出した。
GMは、何を考えてんだ。
「はは、随分とスリルがある、設定だな……」
僕はビビって、変なことを言ってしまった。
待て待て、ありえない。
ログアウトできないなんて……。
「おい、ロキ。……ログアウト押しても、できねーぞ……」
「…………え?」
辺りは騒ぎ始めた。
だが、さっきとは違い、絶望的な表情する者が多かった。
「もう一度いいます。ログアウトできません。このサーバーは本社の管理下から、完全に隔離され、内側や外側からの、一切の情報を受け付けないよう設定されてます。また、設定はパスワードで保存されており、一流ハッカーでも千年かかります、つまり、皆さまは、このゲームからの帰還は不可能になりました」
「おい、ごらぁっ!! ふざけたこと抜かしてんじゃねーぞ!!」
さっきのギャンブル大会の決勝の相手だった人だ。
来ていたのか……。
残念だけど、いくら言ったて……。
「「そうだ、そうだ!! 俺達を帰せ!!」」
周りのプレイヤーも加勢している。
皆、希望を捨ててない……。
なら、僕もっっ……。
「ああああ!!! うるさいですね!! そこのあなた、死になさい!!!」
GMが怒鳴った後、さっきの決勝の人の体に異変が起きた。
足元から、どんどん。光のエフェクトと共に、消えていく。
「う……、ああっっ。何だこれ!? ああああああ」
男は消えた……見る影もなく。
空気中にわずかに残った、エフェクトが消えていくのが見えた。
静寂の中、一人微笑んでいる、GM。
「今のは、私に逆らった罰です。彼は死にました。ゲームでも、現実でも」
「おい、おまえ! 一体何が目的なんだ!!!」
ゴウが言った。
ゴウの表情は次第に険しくなった。
さっきの男と顔見知りだったのであろうか……。
GMは、依然と微笑み言った。
「目的、そんなのありませんよ……。ただ、遊びたいだけ」
「そんな理由で、ふざけるな!!!」
「へえ、さっきの見てなかったの?」
「ぐ…………っっ」
ゴウはさっきの死を見て、息詰まったのだろう。
そう、あれは死と断定できるはずだ。
なぜなら、あれは、死亡エフェクトだったから。
そして、GMは嘲笑って、言った。
「ここで、嬉しいお知らせです。このゲームの最終ボスを倒した種族には、ログアウト方法を教えます」
このゲームは、数々の大陸のボスを倒し、最終ボスを倒せば、ゲームクリアとなっている。
そして、大陸の数は十個あり、現在、つまり一年間で、わずか二つまでしか、行けてない。
状況は絶望的だ……。
「そして、データを排除して、一から大陸制覇頑張って下さい! さらにさらに、ゲームモードをアマチュアから、ハードにしたいと思いまーす」
「おい、こんなの……無理だ……」
「ゴウ、ボスってそんなに強いの?」
「ああ、レベルの問題以前の話だ。やつらは純粋に、戦闘能力が高い。ステータスが高くても意味ねーよ」
ゴウがここまで言うなんて……。
僕のレベルは、85。ゴウは、98。確か最高レベルが、100。
ゴウは充分強い、いや、強すぎると言っても過言ではない。
なのに、ここまで……。
「以上で。説明終わりまーすっ。皆さん、頑張って下さい。
希望を捨てずに…………」
――人物紹介――
ロキ
職業:ギャンブラー
種族:ビースト
容姿:銀髪、黒眼。猫耳と尻尾がある。
ゴウ
職業:アーマーナイト
種族:人類
容姿:赤髪、黒眼、筋肉質。わりとイケメン。