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31.A級スキル


 葬儀から帰った俺は、食事を終えて眠りについた。


────────────────────────────────────

体力:455 ↑55

魔力:230 ↑30

────────────────────────────────────


 夜半。

 草木も眠る丑三つ時。

 もっとも、誰もが眠るわけではないようだ。


「アオーン!」


 宿で眠る俺の耳にまで届く咆哮。

 騒音。悲鳴。剣戟の音。


「魔族だ。魔族の襲撃だ!」

「戦える者は武器を取れ!」


 どうやら魔族の夜襲というわけか。


「ワーウルフマンだ! 夜間の奴らは厄介だぞ!」


───シルフィア様の知恵袋───


ワーウルフマン。通称、狼男。


普段は異常に体毛が濃いだけの人間。

十分に汚らしいですが、月夜の晩は狼の外見へと凶暴化。

さらに汚らしくなります。


怪力。俊敏。魔力にも秀で、再生能力をも有する怪物。

中でも魔力サーチ。超感覚に優れ、隠れる獲物を逃がさず狩りつくす魔族のハンターです。


夜間の戦闘は避けるように。

遅くまで起きても、お肌が荒れるだけですから。


──────────────


 狼男。

 月夜に力を発揮するという。

 夜襲にはうってつけの魔物。


 バターンッ


 階下で扉が開かれる。

 宿の1階に侵入されたのか?


「た、たすけ……ギャー!」


 足元から轟くのは鳴動する悲鳴。

 馬鹿と煙というわけではないが、宿の2階を選んで正解。


 ギイィィ


 扉がきしむ音。

 ついに俺が眠る部屋にまで来たというわけだが……


 ベッドで眠る男。

 その布団の膨らみ目がけて、ワーウルフマンが飛びかかる。

 その途上。


 ドスゥッ


「キャイイーン!」


 ワーウフルマンの胸は槍に貫かれていた。


 夜襲は、相手の不意を突くのが肝要。

 準備が整わないうちに襲い始末する。


 布団を跳ね上げ、飛び出したのは俺の槍先。

 すでに迎撃準備を整えた俺を前に、狼男の夜襲は意味を失っていた。


「ガルッガルルッル!」


 胸を貫かれながらも、身もだえする狼男。

 ついには槍の柄を掴むと、自身の胸から引き抜き、投げ捨てる。


────────────────────────────────────

名前:ワーウルフマン


体力:100(960)【ブースト中】

魔力:750(800)

────────────────────────────────────


 あれだけの傷でも息絶えない。


 再生力を持つというが、なるほど。

 相対する狼男。

 その胸元から溢れる血が止まっていた。


「アオーン!」


 狼男は、魔力にも優れる魔物。

 その遠吠えは魔法。

 身体強化の掛け声。


 振るわれる前腕。

 瞬間的に鋭さを増した狼男の爪が、俺を襲う。


 ガシーン


 その爪を、俺もまた自身の爪で弾き返した。


 精霊アイ。

 夜目が利くのは、何も狼男の専売特許ではない。


 貴様の方が体力、魔力ともに上なのだろうが──

 俺の持つスキル。ひっかきの熟練度は脅威のA級。

 おそらく貴様程度であれば、よくてB級だろう。


 そして、何がアオーンか?

 何が身体強化魔法か?


「アオ──」

「飛べ。宙を舞う水塊。ウオーター・ボール!」


 再び吠えようとする、その口元へ。

 暇を与えない刹那の詠唱。


 バシャーン


 狼男の口腔に迸る水の塊。


「アグゥッ? ゴハァッ!」


 水を飲み込み咳き込む狼男。

 魔法の発動に失敗していた。


 対して、戦闘中の俺は常時、身体強化魔法を発動している。


 もっとも詠唱するのは俺ではない。

 シルフィア様が。だ。


「にゅ?」


 息を吸い、息を吐く。

 それと同様。全く意識せずとも魔法を発動できるのが精霊だ。

 詠唱せずとも魔法を発動できるのがシルフィア様。


 これまでも、ずっと無詠唱で魔法を発動していたのだ。


 怯む狼男に向けて、俺は大きく腕を振りかぶる。


 一流と二流。

 A級スキルとB級スキルの間には、決して越えられない大きな隔たりがある。

 そのことを今。お前の身体に教えてやる。


 そのまま、俺は勢いよく爪を振り抜いた。


 A級ひっかき


 ズンバラリン


「ギエエエアアアアア!」


 身体を両断され狼男が絶命する。

 体力自動回復といえど、死しては意味を成さないもの。


 これが本物のひっかき。

 丈夫な毛皮を見にまとおうが、まとめてスッパリ切断する。

 その切れ味こそがA級の証である。


 俺の危機は去ったわけだが、村に侵入したのは今の1匹だけではない。


 聞こえる女子供の悲鳴。

 奴は寝込みを。弱者を狙って襲う卑劣な暴漢。

 しかも、その戦闘力は折り紙付きである。


 煌々と照り返す満月の夜。

 奴は月夜において、力を発揮する闇の眷属。


 対して、俺が最大の戦闘力を発揮するのは真昼間。

 燦燦と太陽が照り返す中でこそ、光合成が生きるもの。


 先ほどの1匹は、油断から俺に先手を許しただけ。

 夜間に正面から戦うならば、勝算は乏しいだろう。


 だが、戦闘において夜襲が効果的なのは数々の戦史からの常識。

 天才軍師においては必須の習得科目。


 ならば習得してやろうではないか。


 ガブリ パクリ ゴクン


────────────────────────────────────


月を見た:F NEW!


月が見える間。体力が向上します。

特に満月において、最大の効果を発揮。


────────────────────────────────────


 天空に輝く今宵の三日月。

 その黄経差は約40°。月相は3である。


 体力:455

 ↓

 体力:500【ブースト中】


 今も村の各処で争う音がする。


「起きろ。行くぞ」


 あれほどの騒動にも眠り続ける妖精さん。


「うお?! なんだー?」


 叩き起こして宿を出る。

 三日月にも関わらず、煌々と照らされるトータス村。

 目に映るのは各処で灯るかがり火。炎上する家屋。


「どこに行った?」

「1匹はやったぞー!」

「1匹が孤児院の方へ」


 孤児院……そこはミーシャの出生の地。


 走る孤児院。

 辿り着いたその場所は、またもや血に濡れていた。


「アオーン!」


 血だまりの中で咆哮するワーウルフマン。


「……おいら。なんだか分からないけど……悲しいんだ」


 陽気で能天気。

 何も考えていないはずの妖精さんが涙を流していた。


 妖精さんとミーシャ。

 契約によってつながる2人は一心同体。

 その心は別ものだが、魂の奥底が共鳴するのだろう。


 孤児院に散らばるは、かつての孤児たちの姿。


「おいら……なんだかとっても──怒っているんだ! ウインド・カッター!」


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