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29.食事


 亡くなった冒険者たちに哀悼を捧げる。

 ほどなくして顔を上げるギルドマスター。


「その。おっさん。マサキ。すまないが、彼らの武器防具は回収させてもらう」


 なんでも冒険者の最期を看取った者が、遺品を自由にして良いという。


 優れたアイテムを所持しようものなら、闇討ち上等。

 殺して奪い取ることも可能な理屈が成り立つのだが、大丈夫なのか?


「無論。明確な犯罪は処罰される。だが……表に出ない犯罪は、犯罪ではない」


 まあ。そのようなルールがあろうがなかろうが。

 欲しいとなれば、力で奪うのが悪党のやり口。

 心許せない相手とパーティを組もうものなら、戦闘中の事故が起きかねない。


 だからこその妖精契約。

 決して俺を裏切らない肉奴隷。

 心から信頼できる仲間とは、ありがたいものだ。


「今は非常時なのだ。彼らの装備は魔力を有した逸品。防衛のため活用させて欲しい」


 その見返りとして、俺には謝礼。

 金100万円が支払われるという。


「分かった。彼らの意志を無にしないよう。村の防衛に役立てて欲しい」


 安すぎるような気もするが、彼らと事を荒立てるメリットはない。


 どうしても必要とあらば、彼らが死んだ後に貰い受ければ良い。

 魔族の襲撃。悲しくも多くの人間が死ぬであろうから。


「それじゃ村まで戻るぞ。急いで防衛の準備だ」

「おう!」

「? お前は戻らないのか?」


 冒険者の遺品を手に、ギルドマスターたちが踵を返す中。

 俺とアリサはその場に立ち止まっていた。


「もう少し。ミーシャはアリサの親友だったのだ」


「……俺の見立てが甘かった。ギルドマスターの俺の責任。許して欲しい」


 頭を下げるギルドマスター。


「そうよ! 貴方が、貴方がミーシャちゃんを……ううっ」


 生き返ったとはいえ、ミーシャはアンデッド。

 今後一生、常人として生活を送るのは困難だろう。


 だから、アリサは悲しみ、怒るのだ。

 ミーシャを死においやった男に対して。

 親友の。ミーシャの未来を気づかって。


 ギルドマスターが。冒険者たちが去った後。

 惨劇の場に残るは俺たち4人だけ。


 ガサガサ


 いや。5人だ。

 藪に隠れるミーシャが姿を現した。


「アーウー……アリサ。アタシは大丈夫。戦うだけなら今のがよっぽど便利ヨ」


「ううっ……ミーシャちゃん」


 全く。いつまで泣いているのか。

 ゾンビになったのは不幸な事故だが、もはや過ぎたこと。


 そもそも泣く必要などない。


「アリサ。ミーシャ。私は国を作る」


「……?」

「ハア?」


 現在。人間の国では。

 街ではモンスターは奴隷も同然。

 その扱いは極めて悪いという。


 それも無理のない話。

 魔族の大半がモンスターで構成されている。


 モンスターであれば種別は関係ない。

 自分たちの敵であるという考えが一般的。

 自分たちを殺そうとする者に対して、優しく接するはずがない。


 だが、俺の作る国は違う。


「妖精キングダム。人も。モンスターも。共に手を取り暮らせる国だ」


 それは人とモンスターが共生する国。

 異世界に生まれた理想郷。神の作りし国。


「そこなら、ミーシャちゃんと、また一緒に暮らせるの?」


「もちろんだ」


 そもそもが、王となるのは精霊のシルフィア様。

 モンスターが王なのだから、モンスターが迫害されようはずがない。


 どちからというと、人間の住人が集まるかどうかの方が不安である。


「わたしも。わたしも妖精キングダムに住みたいです」


 その不安も杞憂に終わる。


「歓迎する。よろしく頼む」


 元よりアリサはすでに妖精キングダムの一員。

 何せ将軍なのだ。

 今さら嫌だと言われても、辞職は許されない。


「アーウー。アタシ。そんな変な国。住みたいなんて言ってないんだけド……?」


 元よりミーシャに選択肢などない。

 配下である妖精さんと契約したのだから、拒否することは不可能である。


────────────────────────────────────

妖精キングダム


現在の国力

 首都:─ 

 国力:0

 人口:5

 戦力:そこそこ強い


役職

 女王:シルフィア様

 軍師:マサキ

 将軍:アリサ

 肉奴隷:ミーシャ

 賑やかし:妖精さん

────────────────────────────────────


 かなり戦力が増した。

 が、激動の異世界を生き抜くには、まだまだ戦力が不足している。


 弱者は淘汰され、滅びるが定め。


 そうはさせない。

 そのためにも新戦力の増強が必要だが……

 すでにトータス村に俺の目に適う人材は存在しない。


 今は既存の戦力を鍛え、強化するのが優先されるわけだ。


 そんなわけで、俺がこの場に残った本当の理由。

 その本分を果たすとしよう。


 アリサ。ミーシャ。妖精さん。

 現地の人間、モンスターは、敵を倒してレベルを上げ、成長する。


 では、俺とシルフィア様はどうする?

 レベルの存在しない地球人である俺は?

 俺と契約した影響か、レベルの概念から外れたシルフィア様は?


 ──その答えがこれだ。


 ガブリ


 地面に横たわるスーパーオークマン。

 その身体に俺はかぶりつく。


「アーウー。美味しそう。アタシも」


 ガブリ


 俺に続いて、ミーシャもかぶりついていた。

 ……おのれ。

 お前は昨晩。さんざん食べただろうに。


「ミ、ミーシャちゃん!? はしたないよ……やめて」


 まあ良い。

 スキルを習得するのに、全部を食べる必要はない。


────────────────────────────────────

獲得スキル

槍術    :B ↑

体力自動回復:B ↑

肉食    :E ↑

────────────────────────────────────


 スーパーオークマンを食らい。

 俺のスキルが強化される。


 そして、その身体の中心。

 心臓に位置する魔石は──


 パクリ


 シルフィア様がたいらげる。


────────────────────────────────────

魔力:200 ↑90


契約スキル

 精霊アイ  :↑D

 精霊ボックス:↑D


魔法スキル

 光魔法:↑D

 風魔法:↑C

 水魔法:↑C

────────────────────────────────────


 1個で魔力90の上昇。

 強敵を倒した甲斐があったというもの。


 他者を食らい強化。成長する。

 それが俺とシルフィア様の能力。

 無限に成長する神のごとき能力。


 およそ人間業ではない。

 どう見てもモンスターに分類される能力。

 他人に見られるわけにはいかない能力。


 もしも知られたその日から、俺はモンスターとして迫害されるだろうから。


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