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3.森で戦闘


 暴飲暴食。


 いくら食べても大丈夫とはいえ、やはり生で食べるのはキツイものがある。

 おまけに少し食べればスキルを習得できると思ったが、そんなに甘くはなかった。


 それでも、せっかく最強の魔法使いとなったのだ。

 シルフィア様との契約を解約されてはたまらない。


 結局、クラッシュドッグを3割近く食べるはめになるとはな……げっぷ。


 その甲斐あって、習得したスキルが、かみつき。

 文字通り相手の身体に噛みつき、肉を食い千切る力が増すという。


 ……わざわざスキルとして習得するような事だろうか?

 噛みつくなど誰でも出来る行為である。


 だが、スキルを習得。

 ランクを上げることで、同じ噛みつくにも威力が増すという。

 顎の筋肉でも発達するのだろうか?

 まあ強くなるなら良いか……気にしないでおこう。


「食べ終わったなら、モンスターの魔石を回収なさい」


───シルフィア様情報───


 魔石は、魔力の源となる物質です。

 対象の強さや種別により、回収できる魔石の大きさ、種類が異なります。

 魔道具の燃料や武器防具の素材など、多数の使い道から冒険者の主な収入源となります。


──────────────


 魔石を取りだすには、モンスターを解体する必要がある。

 といっても、ナイフなんて便利な物は持っていない。

 が、俺にはシルフィア様の魔法がある。


「いでよ。凍結の刃。アイシクル・ナイフ!」


 魔力によって生み出された氷のナイフ。

 切れ味抜群。さらに切断面を凍結させる凄い奴だ。

 解体中、熱で肉がダレることもないから便利である。


 ばらした結果、得られたクラッシュドッグの魔石。

 そこそこの大きさで、お店に売却すれば良い金額になりそうだ。


「回収した魔石は、精霊ボックスにしまいなさい」


 謎空間にアイテムを収納する便利スキルだが、スキルを所持するのは天然記念物なみの存在という。

 精霊様だからこそ成し得る、まさにレアスキルの筆頭である精霊ボックス。

 街中で使おうものなら、一躍スターの仲間入りである。


 異世界デビューも魅力的ではあるが、出る杭は打たれるという。

 あまり目立たない方が良いだろう。

 後ほど適当な鞄を見つけて、誤魔化しながら使っていくとするか。

 異世界デビューは、またのおあずけだ。


「良いでしょう。ですが、魔族と戦うにはまだまだです。この森でモンスターとの戦闘に慣れておきなさい」


 それではと、魔力感知でモンスターの反応する場所へと移動する。


 そこで出たのは……でかいカブトムシ。

 どう見ても昆虫。動物ならまだしも昆虫とはな……

 それも2メートル超はあるデカブツ。


────────────────────────────────────

名前:マウントビートル

体力:900

魔力:200

スキル:

 たいあたり:B

────────────────────────────────────


「えー……モンスターと戦うのは良いのですが、別に食べなくとも構わないですかね?」


「そんなに解約したいのかしら?」


 ですよね。


「おらー! ウインド・カッター!」


 空気を圧縮した刃が、マウントビートルの魔力バリアを突き破る。


 ズカキーン


 しかし、外殻にひっかき傷をつけるに留まり、ダメージを与えた様子はない。


「見た目どおりとはいえ、やはり固いか」


 単純に、物理的に外殻が固い。


 マウントビートルは外殻の下から薄い羽を広げると、空へと飛び上がる。


 空中から重力、重量を乗せた たいあたり 攻撃だ。


 図体に見合わず、かなりのスピード。

 並の冒険者ならひとたまりもないであろう攻撃。


 だが、シルフィア様と契約した俺には通用しない。


 精霊の目は、対象の能力を調べるだけではない。

 目に魔力をとおすことで高機能カメラのように。

 遠距離、近距離を見渡し、高速カメラのように対象の動きを捉える。


 俺の目には、飛びかかるマウントビートルの動きがスローモーションに見えていた。


「轟け。水の奔流。ウオーター・ジェット!」


 俺の手の平から放たれた水流が、空を飛ぶマウントビートルを直撃。

 地面から空中に向けて。

 角度をつけたジェット水流が、マウントビートルを斜めに吹き飛ばす。


 ドシーン


 お腹を見せて地面に落ちるマウントビートル。

 ひっくり返ったカブトムシなど、ただの的にすぎない。


「切り裂け。真空の刃。ウインド・カッター!」


 足を全て切断、外殻のないお腹をぶち破って戦闘終了。

 またも完封である。

 やはり俺は最強の魔法使い。自分の才能が怖いな。


「……なんか体液が漏れているんですが……」


 チラッ


「は? 解約?」


 シ、シルフィア様ばんざーい!


────────────────────────────────────

獲得スキル 

たいあたり:B(NEW)

────────────────────────────────────


 せめて炎魔法が欲しい。切実に。

 あと調味料もお願いしたい。


 マウントビートルの魔石を回収。

 ついでに無事だった攻殻も解体してアイテムボックスに収納する。


 シルフィア様情報によれば、モンスターの部位。

 マウントビートルであれば、攻殻を売ればお金になるという。

 シルフィア様は精霊だけあって、お金は持ってなさそうである。

 ここは俺が稼がねばならない。


「魔力ゼロの割には、なかなかのセンスを感じます。次は、もう少し大物を狙ってみなさい」


 俺も覚えた魔法をもっと試してみたい気持ちはある。

 せっかくだし次は大物を探してみるか。


────────────────────────────────────

名前:クレイジーベア

体力:1800

魔力:600

スキル:

 ひっかき :B

 かみつき :A

 たいあたり:A

────────────────────────────────────


 でかいクマだ……大物すぎるだろう。


 こいつかなり強いんじゃないか?

 体力1800という事は、俺の30倍もありやがる。

 しかも、A級スキル かみつき たいあたりを有している。


 A級スキルは一騎当千スキル。

 シルフィア様がS級スキルを多数習得しているため微妙に感じるが、B級とは桁違いの威力を誇る危険なスキル。

 おまけに、俺の姿に気づいているときたもんだ。


 それでも、まだ距離はある。

 ならば魔法使いらしく、接近される前に攻撃あるのみである。


「ウインドカッター! 4連!」


 四肢を狙って4本のウインドカッターをブーメランのように放つ。

 2本は避けられてしまったが、脚を狙った2本が魔力バリアをぶち抜き命中。


 ……思ったより効いてないな。

 バリアで威力が減衰されたか? それとも体毛が固いか?


 とにかく、クレイジーベアは4つ足になり俺に向けて猛ダッシュ。

 たいあたり 攻撃を狙っている。

 このまま接近を許すわけにはいかない。


「穿て。風の弾丸。ウインド・バレット!」


 風魔法の一つ。

 空気を圧縮した弾丸を発射する、燃費、精度、連射性に優れた魔法である。


 ズダダダダダダ


 クレイジーベアの接近まで、ざっと100発は打ち込む。


 カンカンカン


 しかし、全ての弾丸がバリアに弾かれる。

 取り扱いに優れる分、ウインド・バレット一発ごとの威力は低くなる。


 だが、それで問題ない。


 バリアを展開する度に。バリアで魔法を防ぐ度に、クレイジーベアは自身の魔力を消費する。

 そして、相手の魔力を削るのが俺の狙い。


 直前まで迫ったクレイジーベアの たいあたり 攻撃を飛び越える。

 頭上の枝につかまりながら、さらにウインドバレットを連射した。


 ズダダダダダダ


 魔法戦闘においては魔力こそ力。

 魔力が減少する。それは、すなわち身を守る魔力バリアも薄くなるという事。


 ドスドスドスッ


 バリアを貫いたウインド・バレットがクレイジーベアの体毛を削り、鮮血をまき散らす。


「グググゴアアアア!」


 咆哮一発。

 クレイジーベアは俺がつかまる枝の高さまで。

 5メートルの距離をジャンプで急襲。

 捨て身の ひっかき 攻撃を仕掛けていた。


 そういえば、普通の熊じゃなかったな。

 魔力による身体強化。木の上に退避しても安全とはいえない。


 俺は捕まっていた枝を手放すと、風魔法で地面へ加速。急降下する。

 誰もいない枝をぶち折ったクレイジーベアは、着地するまで慣性の法則に従うしかない。


「貫け。烈風の槍。ウインド・ジャベリン!」


 真空の刃を槍状に束ね上げた凶悪な魔法。

 半面。風魔法にしては、その投擲速度は遅い。


 だが、今。重力に引かれ落下するだけのクレイジーベアに避ける術はない。

 ウインド・ジャベリンは、魔力の低下したバリアを容易く貫き通し──


「ゴギャアアアアア!」


 その胴体を串刺しにしていた。


 魔力の尽きたモンスターは、もはやただの木偶の棒でしかない。


「拘束せよ。零下の氷結。アイシクル・フリーズ!」


 氷の鎖で地面と両手両足を拘束。

 完全に動きを封じたところで、脳天へアイシクル・ナイフを突き立て戦闘終了である。


 地面に転がるクレイジーベアの巨体。

 昆虫の後だからか、動物なだけマシに思えるな。


「シルフィア様もどうですか? 熊の掌は珍味だそうですよ」


「クーリングオフを希望したい。そういう事ですか?」


 俺にシルフィア様の知識が流入したように、シルフィア様にも地球の知識が流入している。

 それにしても、地球の知識から余計なものを覚えたようだ。


 とにかく、シルフィア様ばんざーい。


 ぱくり


────────────────────────────────────

獲得スキル 

ひっかき :B(NEW)

かみつき :A(UP)

たいあたり:A(UP)

────────────────────────────────────


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