表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/43

28.レベルアップ


 すでに時刻は深夜。


 今から村まで戻るには難しい時刻。

 今晩は山中で夜を過ごすことにする。


「アーウー……アタシが見張ってアゲルワヨ」


 ミーシャはアンデッド。

 睡眠を必要としないのだから、夜の番に最適。


「おいらも夜更かし得意だぞー」


 ……こいつはただの駄目な奴だ。

 早寝早起きが健康の秘訣だというのに。

 早死にしてもしらないぞ?


 とにかく2人に見張りを任せて、俺たちは眠りについた。


 程なくして、夜が明ける。


 辺りに散らばるのは、獣の山。アンデッドの山。


「ぐーぐー……」


 そして、予想通り途中で寝落ちしたであろう妖精さん。

 まあ、元から当てにはしていない。


「ミーシャちゃん大丈夫? 怪我してない?」


「アーウー。カイチョウよ。アンデッドも悪くないワね」


 ミーシャはいうなればフレッシュゾンビ。

 新鮮なうちにゾンビになったのが幸いしたのだろう。

 病的なまでに青白い顔色。

 胸に開いた大穴を除けば 外見はさほど人間と変わらない。


────────────────────────────────────

名前:アンデッドミーシャ+妖精さん


LV:20  ↑5

体力:400 ↑100

魔力:550 ↑50


スキル:

 ひっかき:F NEW

 かみつき:F NEW

 肉食:  F NEW

────────────────────────────────────


 お?

 おおお?

 レベルだと!?


 昨日は気づかなかったが、ミーシャの能力にレベルが存在した。

 しかもレベルアップしている。


 昨晩。夜中の間。

 モンスターと戦ったことでレベルが上がったのだろうが……


 問題は、俺には存在しないレベルが、ミーシャには存在する。

 そのことだ。


 ──となれば、答えは簡単。


 異世界の人間には、レベルが存在する。

 地球人である俺には、レベルは存在しない。


 そういうことか。


 俺はあらためて精霊アイでアリサを確認する。


────────────────────────────────────

名前:アリサ将軍

LV:5

体力:75

魔力:85

────────────────────────────────────


 案の定、アリサにもレベルが存在。

 村の外に連れ出してから、何度か止めをさせていたからだろう。

 レベルの上昇に伴い、体力、魔力が上昇していた。


 レベルが見えるようになったのは、精霊アイの熟練度が上がったためか。

 情報を制する者が戦を制する。

 軍師の俺にとって、この上ない成長といえよう。

 後は所有するスキルを確認できれば文句なしなのだが、それは今後の成長を待つとしよう。


 しかし……ミーシャのやつ。

 スキルを習得したのは良いが、いずれも品のないスキルばかり。

 加えて肉食だと?


 よくよく見れば、地面に転がる死体。

 いずれも、ほうぼう肉をかじられ骨がむき出し。

 人間に似てはいても、その習性はゾンビなのだ。

 ミーシャが快調なのも納得。お腹いっぱいというわけだ。


 まあ、俺が手綱を握っておけば良いだけだが……

 ミーシャ。うかつに人里に入れるのはマズイことになった。


「おーい。無事かー。生きてるかー」


 遠く藪をかき分け、こちらに迫る声がする。

 逃げ延びた冒険者と共に、捜索隊が到着したのだろう。


「ミーシャ。すまないが、君は隠れていてくれるか?」


「ええ!? そんな……どうして? マサキさん」


「アーウー……ワカッタわ」


 熟練冒険者パーティは全滅した。

 その中で、もっとも力の劣るミーシャだけが生き残る。


 どう考えても不自然である。

 普通に考えればありえない。


 疑われるのは確実。

 そうなれば、ミーシャがアンデッドになったことなど、即座に判明する。

 一見。人間に見えるといっても、よくよく見れば人間でないのは明白だ。


「ミーシャ。家族はいるのか?」


 俺の質問に、ミーシャは答えずらそうにそっぽを向いた。


「ミーシャちゃん。孤児なの。だから孤児院のみんなが、院長先生が心配するよ」


「アーウー……必要ない。家族なんていないわヨ……」


 何かと複雑な事情があるようだ。

 が、ミーシャには悪いが、家族がいないというのは俺にとって都合が良い。


 家族と引き離す罪悪感を感じる必要もない。

 何より、連れ去ったとしても。

 行方不明になったとしても、騒ぐものがいないということだ。


「ここか! うっ……これは」

「……ひでえ血だまり」

「お前は……マキナが担当する冒険者か。他の者は?」


 救援に訪れた冒険者パーティ。

 その中にはギルドマスターまでもが含まれていた。


 ミーシャの担当。

 自分の担当する冒険者の安否を気遣って来たのだろう。


「俺が来た時には全滅していた。相手は……これだ」


 俺は地面に転がるスーパーオークマンの死体を指さした。

 ミーシャにかじられ骨が露出しているが、巨体の大半はまだ残っている。


「!? こいつはスーパーオークマン」

「まじか。てことは……」

「魔族の尖兵。その隊長が村の近くに来るってことは、いよいよか」


 何がいよいよなのか?


「魔族の襲撃や」

「ここ数か月、動きがなかったので油断していたようだ」

「死にはしたが、魔族侵攻の兆候を発見できたのだから大手柄や」

「ああ。王都へ急を知らせよう」


 魔族の襲撃を逃れ、辿り着いたトータス村。

 だが、この村にも魔族がやって来るという。


 まあ、ここは魔族と接する前線の村。

 遅かれ早かれ、こうなるのは必然か。


「しかし、熟練冒険者パーティが全滅するほどの相手」

「スーパーオークマンを倒すとは」

「もしかして、おっさん強いのか?」


 今さらすぎる疑問。


「腕に自信はある。アリサ将軍の助けもあった」


 そして何より。


「冒険者たちのおかげだ。俺が相対したその時。すでにスーパーオークマンは瀕死だった」


 無傷の状態で相対したなら、勝利は難しかっただろう。


「……そうか。彼らは?」


「燃やした。アンデッドになられては困る。問題あったか?」


「いや……それで正解だ」

「しかし、アリサ将軍って誰だよ? まさかその少女のこと?」

「……少女といえば、ミーシャちゃん」

「可愛そうに……まさかスーパーオークマンが現れるとは」


 まだ幼いミーシャの死を悼んで、冒険者たちが頭を垂れる。


 ガサリ。


 ミーシャが身を潜める藪が揺れていた。


 死して辛いのは、存在がなくなること。

 誰からも忘れ去られること。


 だから、葬儀を行うのだろう。

 だから、お参りするのだろう。

 忘れられるのが辛いことを、知っているから。


「なんだ? モンスターか?」


 だから、嬉しいのだろう。

 自分の存在を覚えていてくれる人がいて。


「……いや。ただの風だ」


 茂みでうずくまるミーシャ。

 その身体が小刻みに揺れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ