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25.急行


 アリサ将軍が冒険者となる条件。

 オークマンの珍宝は入手した。


「あの……手を、手を洗わせて……」


 多数のモンスターを狩り、魔石と肉を入手。

 時刻も夕暮れ。今日の狩りはここまでだろう。


────────────────────────────────────

名前:マサキ+シルフィア様

種族:地球人+精霊さん


体力:400 43↑

魔力:110 45↑


精霊スキル

 精霊アイ  :E↑

 精霊ボックス:E↑


魔法スキル

 光魔法: E↑

 風魔法: D↑

 水魔法: D↑


物理スキル

 槍術    :D

 ひっかき  :A↑

 かみつき  :A

 たいあたり :A

 パンチ   :A

 体力自動回復:C


その他スキル

 光合成: E

 草食 : F

 皮膚呼吸:C

 発光  :C

 肉食 : F(NEW)

 肉を食べた際の消化速度・栄養摂取量が上昇する。


特殊スキル

 暴飲暴食

────────────────────────────────────


 狩の最中。お昼の休憩と。

 肉と薬草をたくさん食べたおかげで、俺は新たなスキルを入手していた。


 サーベルキャットマンが肉食なためか、習得した肉食スキル。


 モンスターの肉を食べた際、すでに習得済みのスキルを有していた場合、スキル熟練度が上昇する。

 その上昇値が増えるのだろう。

 ひっかきスキルの練度がBからAへと上昇していた。


 そして、シルフィア様。


 魔力が大きく45上昇。

 加えてシルフィア様のスキル。全ての練度が上昇していた。


 これはサーベルキャットマンの魔石を食べた効果。


 これまでは高額で売れる魔石は売却。

 ゴブリンマンやウサギマンの安い魔石を主に食べていた。


 しかし、やはり安い魔石は安いなりの効果しかなかったということ。


 ある程度、所持金に余裕が出来た今。

 高額な魔石も、どんどん食べてもらうとしよう。



 食べきれなかった物など、全ての戦利品を精霊ボックスに収納。

 帰宅準備を整える。


「うちで買った普通の袋なのに……あ、ありがとうございます」


 シルフィア様の水魔法で手を洗いながら、アリサ将軍は不思議に呟いた。


 たかが珍宝ごときで、旅で貴重な水を無駄に使うとは。

 シルフィア様。甘やかせすぎもよろしくないですよ。


 ガサリ


 帰宅しようとする俺たちの元。

 藪をかき分け姿を現したのは1人の冒険者。


「た、大変だ……どうか援軍を……」


 この男……

 確かミーシャと一緒のパーティにいた男。


────────────────────────────────────

名前:熟練冒険者A


体力:30(550)

魔力:10(400)

────────────────────────────────────


 全身から血を流す重症。

 それなりの力を持つ冒険者がここまで。

 体力30と死の寸前まで痛めつけられるとは……

 何か異常事態があったのは間違いない。


「ス、スーパーオークマン……まさかこのような場所に……ぐふっ」


 口から血を吐き倒れ込む冒険者。

 その身体を抱き起こし、俺は治療魔法を詠唱する。


「癒せ。薄幸する光。シャイニング・ヒール」


 体力が10ポイントほど回復。

 Eランク光魔法。

 ないよりはマシといった治療だが、気絶した目を覚ますには十分。


「す、すまない……まだ仲間が……俺は援軍を呼ぶため……ここまで逃げて」


「妖精さん。この男に付いて一緒に援軍を呼んできてくれ」


「えー? おいらも戦うぞー」


 好戦的なのは、ありがたいが。


「魔力のないお前では役に立たん。急げ」


「ぐうー。分かったぞー」


 妖精さん1人で飛んでもらった方が圧倒的に早い。

 だが、仮にもモンスターである妖精さんの言う事。

 村の兵隊が聞くとは思えない。

 面倒でも冒険者と一緒に行ってもらう他ない。


「マ、マサキさん……ミーシャは? ミーシャがっ!」


 叫ばなくとも分かっている。


 冒険者としては駆け出しでしかないミーシャ。

 熟練の冒険者ですらこれ程の重症を負う相手。


 アリサ将軍の手前。言いたくはないが……絶望的だろう。


「急ぐぞ」


 本来なら危険を冒すべきではない場面。

 俺は救援を呼ぶだけ。

 後は兵隊なり、腕自慢の冒険者に任せるべき場面。


 熟練の冒険者6人のパーティが壊滅するとは、それ程の事態なのだ。


 そもそもが、俺以上の力を持つ冒険者が敵わない相手。

 今さら俺が行ってどうするというのか?

 俺が救援に向かわずとも、誰も俺を責めはしまい。


 冒険者が死のうが、それは自身の責任。自業自得。

 俺とて片腕を失いはしたが、それは自身を過信した己の過ち。

 誰を恨むでもない。あのまま食い殺されたとて仕方のない所業。


 だが……ミーシャはアリサの友人だ。


 ここで救援に向かわなければ、アリサはどう思うだろう?

 訓練された冒険者であれば、仕方のない判断と理解する。


 しかし、未だ平民でしかないアリサ。

 理性より、感情が優先するのは当然。


 生涯。俺を責め続けるだろう。

 今後。決して、俺に心を開くことはないだろう。


 そして……ミーシャを冒険者に仕向けたのは俺だ。


 ミーシャには素質がある。

 それは間違いない。

 そうでなければ、一介の少女がイノシシマンを一騎打ちで倒せようはずもない。


 しかし……村の外へ連れ出すのが早すぎたのだ。

 その才能が開花するのは、まだ先の話。


 かつての俺と同じ。

 自身の才能に溺れ、自信の才能を過信して……そして死ぬ。


 それでも、俺は生きた。

 シルフィア様のおかげで。


 俺は助けてもらった。

 冒険者のケインに。

 川で大勢の兵隊に。


 だから、藪をかき分け、冒険者が来た方角へと先を急ぐ。


 俺にとっての最優先事項は、妖精キングダムの建国。

 今は危険を避けるべき時……それは間違いない事実。


 それでも、国を作るのは人なのだ。

 今。助けを求める声を無視して、人心は集まらない。

 受けた恩を返さずして、信頼は得られない。


 人情の残る村。トータス村。

 俺が作る妖精キングダムもまた、人情あふれる国なのだから。


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