16.人材収集
調子に乗って壁に大穴を空けた代償に、またも折れた俺の右腕。
痛い。
「にゅ!」
そんな俺の右腕を、シルフィア様は光魔法で治療していた。
なんとお優しい……このマサキ、感涙の極みである。
「ふーん。それが光魔法ね」
「はえー。マサキさんモンスターを使役するんですね。凄いです」
凄いと賞賛を受けるのは嬉しいこと。
だが、俺がモンスターを使役するというのは過ち。
「間違えないでいただきたい。シルフィア様がご主人。使役されているのは私だ」
「は、はあ……?」
「なんでそんな誇らしげなんだか……とにかく、さっきはありがとう。シルフィア……さま?」
俺の頭上で座り込むシルフィア様を物珍しそうに見つめる2人。
衣料品店の少女。
アリサとミーシャ。
少々おかしな出会いであったが、戦いを通して俺たちは友情を育む事に成功した。
「あ、あの……お店の壁と床に大穴が開いているんですけど……」
「これ……アリサの親父さん見たら怒るわよ?」
成功したのだ。
が、少女を前に少々ハッスルしすぎたようである。
「あんた。モンスター退治で稼いで修理しなさいよね」
腕の治療に1000万円必要なのだ。言われずとも稼ぐ予定である。
今さらその額が100万や200万円。
多少増えたところで誤差のようなもの。
それよりも。
「床の大穴は貴様だろう。稼ぐ当てはあるのか?」
天才の俺とは異なり、ただの少女でしかないミーシャ。
100万円を稼ぐとなれば、身体を売るしか無理だろう。
やれやれだが、少女を助けるのも貴族の義務。
初めては、心優しい俺が買ってやるとするか。
「ふん。モンスター退治で稼いでやるわよ」
おのれ……さすが異世界。
余計な金策手段があったものだ。
「じゃさ。あんた。マサキ? 明日、アタシと一緒にモンスター退治に行かない?」
「駄目だよ。ミーシャちゃん。村の外へ出たら駄目だって」
「へーきへーき。子供だけだとダメだけど、大人と一緒なら大丈夫だって」
ようは外へ狩りに連れて行ってくれと。
そう言いたいのだろう。
精霊アイで覗き見るその能力。
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名前:ミーシャ
性別:美少女
体力:190
魔力:90
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一般成人男性の体力、魔力はおおよそ100だという。
未だ少女の年齢にして、すでにミーシャの体力はその数値を大きく上回っていた。
おまけに、スキルだろう。おかしな蹴り技を持つときたものだ。
これは掘り出し物かもしれない。
俺が人里で成すべきは人材収集。
天才軍師といえど一人で戦争に勝つことはできない。
軍師の策に従い手足として働く配下が必要。
いうならば五虎猛将軍。
まだまだ未成熟なミーシャではあるが、今後の成長にも期待できるとあらば、今のうちに唾をつけておくのが得策というもの。
「外は危険だぞ? 私の指示に従ってもらうなら同行しよう」
「指示? おかしな命令には従わないわよ?」
俺は天才軍師。現代に甦る諸葛亮孔明。
その知力は某三国国盗りゲームで例えるならMAXの100(推定)
指示を間違えるなど、ありえないこと。
俺はミーシャと明日の外出を約束。
アリサの両親が戻る前に、素早く衣料品店を脱出する。
続いて俺は、武器屋の看板を掲げるドアを開いた。
「ごめん。武器を見せていただきたい」
「あいよ。好きに見な」
店員は普通のおっさん。
なら特に見るべきものはない。
俺は槍を買った。終わり。
続いて俺は、雑貨屋のドアを開く。
「ごめん。商品を見せていただきたい」
「あいよ。好きに見な」
またもや店員はおっさん。
面白くも何ともない。
俺は薬草を10枚買った。終わり。
これで狩りの準備は整った。
時刻は夕刻。
少し早いが宿を探すとするか。
夜はモンスターが凶暴化すると同時に、俺の光合成も役を成さなくなる。
無理をする必要はない。
翌朝。
「おっそーい。早く早く」
村の柵の手前。
歩く俺に向けて手を振るミーシャ。
危険なモンスター退治に向かうというのにウキウキである。
しかもその隣には、アリサまでもが一緒であった。
「おはよう。もしかしてアリサ君も一緒に行くのか?」
「もちろんよ!」
「はわわ。なんで私まで……」
店番であるアリサ。可愛い。
往々にしてこういう弱そうな奴こそ強キャラだったりするもの。
精霊アイで覗き見るアリサ。
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名前:アリサ
性別:美少女
体力:50
魔力:60
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俺の期待を裏切り、普通に雑魚である。
まるで戦力にならないが、店番の少女であればこんなものだろう。
本当にモンスターと戦うつもりか?
「楽しみにしているところを少々言いづらいのだが、アリサ君には危険ではなかろうか?」
「ノープロブレム。楽勝よ!」
「楽しみにしてないですし、どう考えても危険だよ!」
その根拠のない自信はどこから湧いて来るのであろう?
そもそも2人ともまともな武器、防具すら装備していない。
「アタシは天才よ。モンスターなんてポイよ。ポイ!」
「い、いちおう包丁と鍋の蓋を持ってきたけど……やっぱり無理だよね?」
何が天才か?
確かにミーシャには才能があるのだろう。
だが、いささかその才能に溺れてやしないだろうか?
真の天才は決して増長しないもの。
偉業を成そうとも、また俺何かやっちゃいました? ととぼけるものだ。
真の天才は決して相手を侮らないもの。
まさか手ぶらで外出など。馬鹿のやる事である。
おまけに包丁と鍋の蓋は、ただのギャグである。
そもそもが自分で自分を天才など……とても信用できるものではない。
「何よ? あんた。昨日手ぶらで外へ出たって言うじゃない?」
……あれは若かりし頃の過ち。
人が気にしている忘れたい過去を。
「いいから行くわよ。こっち」
「ま、待ってよー」
そんな俺を置いて、さっさと出入口である門へと向かう2人。
いや。忘れてはならない。
慢心こそが最大の敵。
油断こそが怪我一生。
その結果。俺は片腕を失ったのだから。
だからこそ。今。
うら若き未来ある少女を傷ものにするわけにはいかない。
俺はズタ袋から薬草を取りだし口に入れる。不味い。
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体力:260 ↑70
魔力:50 ↑20
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昨晩からお腹が減るたび、ちょくちょく食べる薬草。
シルフィア様も夕ご飯抜きで魔石を食べてくれている。
お蔭で俺の体力、魔力は飛躍的に向上していた。
未来を創るのは子供だという。
ならば、その子供を守るのが大人である俺の務め。
俺の配下として取り立てる。その前に死なれては困るのだから。




