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14.薬草


 山での狩りを終えた俺は、冒険者たちに守られ村への帰路につく。


 まあ、モンスターを狩ったというか俺が狩られそうになったというか。

 とにかく無事だったのだから良しとしよう。


「マサキさん。もうすぐ村ですよ。頑張ってください」


 村への道中。

 冒険者4人のリーダーであるイケメン男。

 ケインは、片腕の俺を何かと気づかってくれる良い奴である事が分かった。


────────────────────────────────────

名前:ケイン

性別:男(23歳)


体力:1000

魔力:700

────────────────────────────────────


 世の中、捨てたものではない。

 まさか荒んだ異世界で、このような爽やかで礼儀正しい好青年が存在しようとは。

 やはり外見は心の中を映し出すもの。

 イケメンは心の中もイケメンだった。


 それに比べて……


「きゃは。にしても、おっさんウケルー。まともに歩けないのー?」


 パーティの紅一点。

 女性冒険者であるクレア(20歳)である。


────────────────────────────────────

名前:クレア

性別:女(20歳)


体力:600

魔力:600

────────────────────────────────────


 いきなり片腕になったのだ。

 歩くにも調子が狂うというもの。

 そんな俺の様を見てあざ笑うなど。


 派手な風貌に情け容赦ない言動。

 間違いない。こいつはビッチだ。


「怪我の影響かな? 肩を貸すよ」


 そう言って、ケインが俺の身体を支える。

 ますます惚れそうである。


「キモッ。こいつなんか顔赤くしてるよー?」


 いちいち小うるさい女だ。

 俺とケインの間を邪魔しないでもらいたい。


「いや。僕にそんな趣味ないから」


 残念……ではなくて、そのような趣味。俺にもない。


 俺がいう惚れたとは、あくまで男が男に惚れる。

 その度量に惚れたということ。


「マジでケインは優しいわ。普通はこんな奴。ポイだぜ」

「そら女にもモテるわー。かーっ。うらやましいぜ」


 どうやら冒険者の中でもケインは変わり者。

 それはそうだ。

 いつ死ぬとも知れない冒険者稼業。

 他人を、弱者を気づかう余裕はない。


 他人に関わるとするなら。

 寄生するのであれば、それは強者にのみ。

 目の前でケインに寄生する取り巻きのように。


────────────────────────────────────

名前:取り巻きA

性別:男(25歳)


体力:400

魔力:400

────────────────────────────────────


 ケインに比べれば格段に劣る能力。

 それでも、今の俺が敵う相手ではないが。


「もう。やめてくださいよ……はい。念のためこれをどうぞ」


 照れ隠しなのか、そう言ってケインは俺の口に草を突っ込んだ。


 ごふっ。何を。

 ナウでヤングな俺に草を食わせるなど……ん?


 モグモグ


 なんだこの草?

 身体に力が湧いてくるような?


「薬草ですよ。効くのは軽症だけですが気持ちだけでも……どうですか?」


────────────────────────────────────

体力:170(170)+10

魔力:30 (30)

────────────────────────────────────


 むお!?

 俺の体力が10も増えている。


 片腕を失う重症を負っても、20しか増えなかった体力が。

 薬草を1枚食するだけで10も増えるとは……


 これが薬草。

 これが暴飲暴食。

 これが俺の最強スキル。


 やはり俺は神に選ばれし男。

 最強になれと地球が囁く男。


 であれば、卑屈な演技はもう必要ない。


「ありがたい。この薬草。出来れば他にも売ってもらえないだろうか?」


「なに甘えてんのー? 欲しけりゃ店で買いなよ? つか今の1枚も払いなよ?」


 そう言って、ビッチは俺の足を蹴とばした。

 むかつくビッチだが、その言い分は正しい。


「すまない。先ほどいただいた薬草。いくらだろうか?」


「今の1枚はサービスで。その代わり、誰か困っている人がいたら助けてあげてね」


 ニッコリ笑顔で答えるケイン。惚れた。


 演技でもない。本気で言っているのだとしたら、相当なお人好し。

 そのような考えで、弱肉強食の異世界を生き抜けるのだろうか?


 世の中、良い奴ほど早く死んでいくもの。

 現に品行方正にして聖者である俺は、何度死にかけたことやら。

 俺のような天才ではない。凡人であるケイン。

 恐らく早死にするだろう。


 だが、ケインには借りが出来たのだ。

 もしもの時。俺が近くにいたなら、助けるのもやぶさかではない。


 そう考えるとケインはラッキーであった。


 俺が最強になる。その前に出会うことが出来て。

 俺の力になるという栄誉に授かることが出来て。

 俺が最強になってしまってからでは、貸しを作ることなど出来ないのだ。


「お? おっさん金あるの?」

「ほら薬草や。1枚1万円やで?」


 それに比べて、取り巻きの男2人の何と浅ましいことか。

 ケインに聞かれないよう、こっそり俺だけに話しかける所など、最高に浅ましい。


 結果。ケインの見えない所で、薬草2枚と引き換えに俺の手持ち金。

 2万円が奪い取られてしまった。


「キャハッ。薬草なんて1枚2000円なのにー。おっさん太っぱらー」


 払いたくて払ったわけではないのだがな……


 まあ。良い。

 おかげで薬草が手に入ったのだ。


 そして、この2枚の薬草が連中の命取り。

 薬草の外見が分かったのだから、後は同じ草を探して食べ尽くすだけだ。


 俺が後24枚。

 薬草を食べれば、お前たち取り巻きの体力を超える。

 その時に後悔して泣きついても、もう遅いのだということを。


「ほら。村の入口が見えてきたよ。もう大丈夫だよね」


 そのような騒ぎがあったと知らず、ケインは無邪気な笑顔で振り返る。


「かたじけない。ケイン殿。この恩義はいずれ返すゆえ」


 俺を送り終えたケインは、手を振り踵を返していた。

 村まで帰る所だと言ったのは、俺を村まで送るための方便。

 これから再度モンスターを狩りに行くのだろう。


 俺はケインを見送った後、2枚ある薬草のうち1枚を食べながら帰路につく。


────────────────────────────────────

体力:180(180)+10

魔力:30 (30)

────────────────────────────────────


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