表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/43

12.光合成


 サーベルキャットマンの撃退に成功した。


 しかし、俺の怪我もシャレにならないものがある。

 たかが猛獣ごときに左腕を食べられるなど。


 たかが田舎のイモ臭いモンスターと侮ったのが間違い。

 人の手の入らない辺境の地。

 文明の根付かない場所にこそ、凶悪なモンスターが巣くうもの。


 気を引き締めねばならない。

 危うく死ぬところであったのだから。

 本気でかからねばならない。

 俺は一人ではない。守るべき者があるのだから。


 それでも撃退に成功するのが、天才が天才たるゆえん。

 倒れたサーベルキャットマンからザクザク魔石を取り出し、手早くその場を離れる。


 死体から溢れる血の匂い。

 匂いを嗅ぎつけた他のモンスターが、じきにやって来る。

 当然。やって来るモンスターは、俺の手に余る猛獣ども。


 ここはいち早く村まで戻り、一度態勢を整えたい所だが……

 やっかいな事に、俺は山の奥深くまで入り込んでいた。


 獲物を探して奥まで入りすぎたのだ。

 ここまでの道中、襲われなかったのは、ただ運が良かっただけ。

 タートス村まで戻るには、猛獣の徘徊する山を抜けねばならないという。


「ギャオーン!」

「ギャルルー!」


 背後で。サーベルキャットマンの死体の辺りで音がする。

 血の匂いに引き寄せられた猛獣どもが、死体を漁っているのだろう。


 俺は手早く樹木の足元。

 藪の中へと身を潜めた。


 回収した貴族御用達服でもって血を拭いとる。


 引き裂かれた左腕。

 患部からの出血は既に止まっている。

 さすがは体力自動回復。

 これもシルフィア様のおかげ。

 そうでなければ、俺は出血多量で死んでいた。


────────────────────────────────────

名前:マサキ+シルフィア


体力:60(160)20UP

魔力:0 (25) 10UP


契約スキル

 精霊アイ  :F

 精霊ボックス:F


魔法スキル

 光魔法: F

 風魔法: E

 水魔法: E


物理スキル

 ひっかき : B

 かみつき : A

 たいあたり: A

 パンチ  : A

 体力自動回復:C


特殊スキル

 暴飲暴食

────────────────────────────────────


 大怪我からの回復で、体力のMAXが20。

 魔石の摂取で、魔力のMAXが10増えていた。


 しかし、新たなスキルは習得できていない。

 いくら手強いモンスターを退治。食しても。

 習得済みのスキルしか有していないのなら意味は無い。


 俺が食するべきは、未知のスキルを有したモンスター。

 精霊アイ。鑑定眼の熟練度が上がれば、狙って退治できるのだがな……


 現在の魔力は0で、怪我も治り切ってはいない。

 敵の包囲を脱するためにも。

 まずは、魔力の回復。体力の回復を優先する。


「うにゅ……」


 だが、シルフィア様は魔石を手にして渋い顔。


 それはそうだ。

 俺の怪我を治すため。

 その小さな身体で、すでに魔石を1個完食している。

 いくら魔力を回復させるためとはいえ、そうポンポンとは食べられない。


 魔力は時間経過でも回復する。

 およそ1日。24時間の経過で失った魔力は全回復するという。


 血の染み付いた服を再び精霊ボックスへ。

 これで血の匂いから俺を辿るのは難しくなったはずだ。

 しばらくこの藪の中でゆっくり身体を休めるとしよう。


 ちびちび魔石を舐めるシルフィア様。

 お腹がいっぱいにも関わらず、何とか魔力を回復させようとしているのだろう。


 頑張るシルフィア様を、ただ見ている事しかできないとは……

 いや。俺にも出来る事はあるはずだ。


───シルフィア様情報───


 薬草。

 森には、怪我を癒す薬効成分を有した植物が生息しています。

 食べる。患部に貼り付ける事で、小さな怪我なら即座に治療できます。

 人間の街に持ち込めば、お金に替える事も出来ますので、覚えておきなさい。


──────────────

 

 薬草。

 辺りに生い茂る植物のうち。

 いったいどれが薬草なのか?


 森に居た頃の俺は、治療魔法。

 光魔法が使えたため、薬草など気にする必要はなかった。


 草を食べる、草で怪我を治療するなど。

 そのような野蛮な行いは庶民に任せておけば良いと。


 だが、今の俺は庶民以下の存在。

 ただ、シルフィア様の契約と魔力で力を得ていただけの存在。

 誰もが魔力を有する中。魔力を有しない落ちこぼれ。劣等生。


 パクリ


 ならば、草を食べてでも。

 這い上がらねばならない。


 パクリ


 持たざる者が成り上がるには。

 泥水をすすってでも前へ進まねばならない。


 パクリ


 暴飲暴食。

 その副次効果として、何を食べようが決して腹下りする事はないという。


 どれが薬草か分からないなら。

 精霊アイで鑑定できないなら。

 手当たり次第に食べるだけだ。


 パクリ


────────────────────────────────────

獲得スキル 

光合成 :F(NEW)

────────────────────────────────────


 雑草を。木の葉を手あたり次第、口に放り込み続ける俺の脳内に電流が走る。


 スキルの習得。相手がモンスターじゃなくとも良いのか……

 そこにいち早く気づくとはな……やはり俺は天才でしかない。


 光合成。

 植物が光を浴びて水をどうとか二酸化炭素がこうとか。

 詳しい事は知らないが、とにかく日光を浴びると植物は成長する。


 という事は──


 俺は身を潜める藪から顔を出す。


 照り付ける太陽。

 朝方に村を出たのだから、時刻はお昼過ぎか?


 太陽が最も強い光を発する時間帯。

 山中。木々に囲まれた薄暗い中でも、十分な光が辺りに満ちていた。


────────────────────────────────────

体力:100(160)

魔力:5  (25)

────────────────────────────────────


 身体に活力がみなぎるのを感じる。

 光を浴びて、俺の体力が回復していく。

 脳内が澄み渡っていくのを感じる。

 光を浴びて、俺の魔力が回復していく。


 これが光合成。

 自然の力。大自然の驚異。

 いかに文明が、化学が発達しようとも。

 大自然の前には、カスのようなものでしかないという。


 そして今。

 俺は大自然の力。その一端を手に入れたのだ。


 モンスター。凶暴な猛獣。

 それがどうしたという?

 奴らとて自然から生まれた生物の1つにすぎない。


 対する俺は大自然そのもの。

 自然の力を自在に操る魔法使い。

 風水導師となったのだ。


 たかがモンスター如き。恐れる必要など何もない。


 いや……そんなわけがないだろう。

 体力魔力がチョビチョビ回復する程度で、どう猛獣と渡り合うのか?

 一撃で食い殺されては、おしまいである。


 危ない危ない。

 ここで調子に乗っては、先ほどの二の舞。

 天才軍師は同じ過ちを繰り返さないもの。


 とりあえず、体力魔力の全回復まで大人しくしておくとしよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ