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騎士様、ミルクは如何?
騎士と少女の組み合わせが好きなので。
「もぅし・・・そちらの騎士様」
控えめな声が彼を呼んだ。振り向いた彼の視線の先には華奢な女の子が大きな瓶を抱えている姿がある。歳は十二か三といった所だろう。彼女の通行の邪魔になっていただろうか、ならば済まない事をしたと彼は身体を動かす。
「ミルクは如何ですか?」
しかし、女の子の続けた言葉でそれは違うのだと分かった。女の子が抱えている瓶の中身は白く、その言葉の通りミルクであると分かる。彼は彼女と目線を合わせて一言、頂こうと微笑み掛けた。彼女が笑窪を作り、ミルクを可愛らしい花柄のコップに注ぐ。
「お代は『おかえりなさいのぎゅー』になります」
「出来るだけ遅くならないように帰るよ」
「ママと待ってるよ」
にこやかにコップを手渡す女の子、彼の娘に彼女を笑顔で送り出したであろう母親を重ねる。母親も中々イタズラ好きであった。ミルクを飲み干し、コップを返すと彼女は大きく手を振って家路につく。
こういう雰囲気のお話好きなんですよ。




