洋館に現れる黒髪の女性
ホラーでサイコパスっぽい話が書きたくて書いてみたら長くなった上に似非ホラーになりました。
千文字越えてますが元々ここに投稿するつもりで書いていたので、このままここに投稿します。
これは私が幼い頃に経験した話なんです。
そう言って話し始めたサークルの後輩は好青年と呼ぶのが相応しい外見だった。私はこの後輩が気になっていた。だから、怖い話は苦手だったけど、聞いていた。
「家の近くに大きな洋館があったんです。そこは誰も住んでいなかったんですけど、不気味な雰囲気だったので買い手も居なかったんだと思います。でも、子供ってほら・・・好奇心の塊じゃないですか?だから、興味津々だったんですよ」
その洋館に。
彼の言葉を聞きながら背中に冷や汗が流れるのを感じた。これはヤバいんじゃないかと本能が告げている。でも、私は気になった。その洋館が。子供じゃないが好奇心が湧いて来たのだ。
「ある日、何人かで集まってその洋館に入ろうって話になったんです。こっそり夜中に家を抜け出して、勿論親には内緒でしたよ。子供の無邪気な冒険心といえば聞こえは良いですね」
「でも、素敵じゃない?」
興味を引くものがあるのは。
「まぁ、そうですね」
でも、後悔しかないんです。
「誰も住んでいない筈なのに入った途端、声を掛けられたんです。黒髪の綺麗な女性でした。その洋館を買おうかと思ってて試しに少しの間居るのだと言ってました。何故か、自分達はそれを信じました」
ごくりと唾を飲み込む。
「でも、聞いてしまったんです」
「何を?」
彼女の本音をと答えた彼は薄ら笑いを浮かべていた。その笑みに寒気がした。
「どうやって居なくなって貰おうって繰り返し繰り返し呟いてたんです」
そして、自分だけが帰って来れたのだと告げた。
「ねぇ、どうして居なくならなかったの?」
私は気になる事を聞いた。皆帰れなかったのにどうして彼だけが帰って来れたのか。
「ねぇ、どうして?」
積極的に訊ねる様子は可笑しかったのだろう。この手の話を私は苦手だってサークルの人達は知っていた。でも、私は知りたい。
「分かりません。でも、それを聞いて自ら帰ろうとしたからかもしれません」
「そっか・・・」
だから、あの子は帰って来ないのね。
その言葉を聞いた彼は思い出した顔をした。ねぇ、私の妹の事を忘れないでよ。君が犠牲にした子でしょ?そう君は自ら帰ろうとした。でもタダでは帰してくれなかったから、身代わりを連れて行ったんだよね。それが私の妹だっただけ。
でも、私の憎しみの対象だと分かったから嬉しいわ。だから、気になっていたんだもん。
「さぁ、その洋館に行きましょ。大丈夫よ、貴方はもう充分楽しんだでしょ」
これからは妹に人生を返して頂戴。やっと見付けた獲物に私は微笑んだ。
似非過ぎました。語り手がホラーでサイコパスにしたかったんです。




