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人魚姫
魔女の話を書きたいと思いまして。
足を貰うの。人魚姫は笑う。
「その足は痛むよ」
本来ならば鰭がある場所についてるからね。魔女はあでやかに微笑む。人魚姫は僅かな不安を滲ませた笑みで「それでも、歩けるのでしょう?」と聞いた。
「勿論だとも」
私のお手製だよ。
「ありがとう」
これで幸せになれる。人魚姫は愚かにもそう思った。魔女は笑っていた。
愚かな人魚姫を何人送り出しただろう。魔女は自問する。それでも、彼女はまだ満足しない。
「もっと、もっと、見せて頂戴」
欲を知った人魚の末路を。
「でも、そろそろ幸せな結末も見てみたいわね・・・」
魔女は嘲笑しながら言った。
人魚姫になったのはクジの結果です。




