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底をつく
悪女の話。
ここに金が底をついた女が居た。
「どうしよう、どうしよう」
歌うように呟く。心から不安を感じている訳では無い声音に周囲は惹き付けられる。
「どうしよう」
女に声を掛ける男が現れた。女が獲物を捕まえた瞬間でもある。
「どうしよう」
切なげな顔で男を見詰めた女。獲物は女に食い尽くされるだろう。
「ねぇ、」
「私の恋人さん」
「私の寄生主。私の獲物。私の糧」
歌うような女の声に男は全てを食らい尽くされるのだ。悦びながら、女の為に。
男の財産とか精力とかを搾り取るタイプの悪女の話です。
何時か別バージョンの悪女の話も書きたいと思ってます。




