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妖花 下
あの子は可哀想だった。本来なら与えられる愛情に足りていないほんの少しの愛情。それさえも僅かな期間で失ってしまった。
それでも、彼らは助けない。一欠けらの愛情も与えないのだ。
それが約定だから。
あの子は可愛かった。だから、選ばれたんだ。
そこに優しさは皆無だった。
さぁ、早くそこから飛び降りて。
私達を役目から解放して欲しい。自分勝手な願いだけど、この役目は怖かった。役目を果たせたら、その先は平穏が約束されてはいるが、もしもあの子が望まれる通りに育たなかったらと思うと発狂しそうになる。
役目は恐怖なのだ。恐怖の象徴。
彼女は宝なのだ。生贄で、花嫁で、侍女で、巫女で、食事で、奴隷。
私は咽び泣いた。
因習村っぱい話が書きたかったんですけどね・・・難しいです。