庭師の恋
身分差の恋を書きたくて。
お嬢様は旦那様の子では無いのだろう。輝く銀色の髪である旦那様と艶やかな金色の髪である奥方様の子のお嬢様は黒髪だった。瞳の色は奥方様と同じ青である。
それでも、母親に似たお嬢様は大変美しい少女だった。父親に似たのは髪の色のみなのだろう。
「お前が母に似ていれば」
旦那様はよくそう呟いている。その真意は分からない。ただ隠しきれていない感情がそこにあった。
「お嬢様、お戻り下さい」
「何故」
自分の言葉にお嬢様は首を傾げる。奥方様ならばしないであろう仕草であった。
「ここはお嬢様の居る場所ではありません」
「そう」
でも、貴方が居るわ。ねぇ、庭師の分際でお母様と結ばれた時はどんな気分だったの?パパ。
お嬢様の言葉はこちらをめった刺しにしていく。彼女は何時から知っていたのだろう。笑顔のお嬢様は可愛らしい。美しくも冷たさを感じる奥方様だが、自分が整えた庭を見つめる目は温かく優しかったのだ。それに似ている。自分が愛したのは、それだった。
「ふふ・・・」
旦那様は知らない。お嬢様が旦那様に向ける目は自分が見てきた奥方様の目と同じ事を。
彼女の墓前に良い報告が出来たのはほんの少し後だった。
時代設定とか考えなかったですが、結構気に入っているのでもう少し考えて書き直したいです。