第五十八話 討伐作戦終了
書いていた小説を記録する前に消えるという事態が次々と起こりやる気を消失していましたが、何とか今回は上げることに成功しました。
昨日も短編で一本書いてたけど3000文字超えたあたりで消失した。
もう僕のやる気ライフはゼロだよ・・・
と昨日は嘆き悲しみましたよ。ええ・・・
モーベンの死後。
モーベンの死体を近くに埋めた俺は無事に自身の肉体に戻り、状況をガラハットさんに報告した。
リリス達からこの巣が他のパラサイトアント達の巣ともつながっていることはすでに知っていたのでそのことについても報告は怠らない。
ガラハットさんはこの報告に驚いていたが、それよりも魔人の敵がいることに対してものすごく動揺していてパラサイトアントの巣についてはそこまで驚いてはいないようだった。
ガラハットさんへの説明後、結局俺達は何日もの討伐作戦により毎日のようにパラサイトアントの巣に潜り敵の殲滅を行った。
結果、俺はレベルが56にまで上昇し、ほとんど戦っていないアーシェ達ですらレベル20の大台にあと少しの所まで来ている。
ここ数日でかなりの金額を稼いだ俺だったが、リリスに借りている装備やその他の支払いを行ったことですべて失ってしまった。
「本当に今まで借りていた装備をワシに返すのか? ワシはすでにあげたつもりなんじゃが・・・」
「いつまでも、お前に頼っているわけにはいかんからな。レンタルって形でいいだろう。」
リリスは俺との関係性を保ちたいのか傍にいようとして最初はお金を受け取らなかったが、俺が強引に押し込む形で支払を終えて装備もすべて返してしまった。
俺の手元に残ったのはこの街で買った服と数本のナイフだけだ。
俺がお金を払ったことでアーシェ達も借りていた装備の代金を払うことになったが、俺同様に格安で借りていた扱いなのでそこまで負担にはなっていない。
本来ならば、リリスから借りた品は全て高級な素材でできた匠の逸品なのでレンタルでもあの程度の報酬では足りないのだが、知ったことではない。
俺の場合はリリスが俺の面倒を見るのはある程度当たり前のことなのでそれでいいし、アーシェ達に関しては払う必要性はなかったのを俺がそうしたために気を使って勝手に払っただけだ。
俺は悪くない。
ただ、少し悪い気がしたので俺は手元にあるナイフに付加魔法をつけて3人に渡した。
3人は俺が付加魔法を使えることに一瞬驚いたが、今までの事を振り返った後で「アルトさんならこれぐらいできるか・・・」と納得された。
まぁ、下級職の俺が上級職で使えるはずのプロミネンスアローを連発しているからな。
そう思われても不思議ではない。
寧ろ、魔人化した今ならば大概の事をしても「魔人ってそこまでできるんだ」で納得される可能性がある。
普通の魔人は魔力吸収しかできないのが普通だけどな。
俺の場合はそれとは違う要素があるのだが、そこまでは説明しない。
なぜならば、彼女達はこの街のダンジョンをクリアするために組んだパーティーだ。
今の俺ならばおそらくはこの街のダンジョンを余裕で攻略できるだろう。
確か、個人での攻略に必要なレベルは30程度のはずだ。
パーティーを組めばレベル20あればいいそうだからアーシェ達でもクリアできるかも知れない。
そんなわけで、俺は明日にでもこの街のダンジョンを攻略して早ければ明後日にでもこの街を去るつもりでいる。
と、そんな内容の話を討伐任務終了後に行われる。この街の街長とギルドが合同で行う慰労会の席で俺は3人に話した。
と言うか、俺達は今現在そのパーティーに出て席について食事をしている。
その最中に今後の予定の話になったのでこの話を切り出したのだ。
3人はその内容にお互いの顔を見つめ合わせて何をどういえばいいのか迷っているが、一緒に行くことはまずないだろう。
俺と彼らではすでにレベル差が30以上ある。
ついてこられても足手まといになるだけでこちらにメリットがない。
それに討伐任務終了時に貰ったお金は3人は俺より少なかったが、リリスから借りていた防具分の代金を返せばいいだけの3人は俺よりも懐が温かい。
おそらくは装備を一新しても少し余るだろう。
この街のダンジョンを攻略するだけならば3人でも十分にやっていけるし、単独でもレベル的にはほぼ問題はない所まで来ている。
食べていけない。
と言うことにはならない。
問題になるとすれば、今まで保険でついて来ていたリリスがいなくなって不安と言うことぐらいだろうが、いつまでも安全圏にいるだけでは冒険者をやっていくのは不可能だ。
「というわけで、このパーティーは解散だ。今まで助けてくれてありがとう。これからはまぁ・・・ 3人がパーティーを組むかは知らないが、それぞれ頑張ってくれ。」
俺は3人にキッパリとお別れを言うと3人は不安気に俺を見つめた。
なぜ俺を見るんだ。
お前たちが気にしているのはリリスの方じゃないのか?
「その・・・ アルト・・・ 大丈夫ですか?」
3人はお互いに見つめ合った後、意を決したのか代表してアーシェが口を開いた。
その言葉に俺は「何がだ?」と素っ気なく答える。
すると3人は心配そうに俺を見つめた後で隣にいるリリスを見る。
リリスは一つ大きくため息をつくと俺に視線を向けてきた。
「お主。ワシらに何を隠しておる。」
「・・・何も?」
俺は一瞬だけ言葉を詰まらせるが、何事も無い様に食事を続ける。
「お主は・・・ ウソをつくのが下手じゃのう・・・」
リリスはあきれたようにまた大きなため息をつくと俺を見上げて俺の顔に手を伸ばしてきた。
食事中に頬を撫でられた俺は文句を言ってやろうとジト目でリリスの方を見ると彼女はとても心配そうな顔で俺を見つめていた。
瞳には少しだけ涙を溜めている。
「ワシにも・・・ 話せんことか?」
その言葉に俺はようやく状況を理解した。
アーシェ達が俺を気にしてみていたのも、今後の予定の話を振ってきたのもすべては気を使ってのもので俺が自分から言い出すのを待っていたのだろう。
俺がガラハットさんに報告せず、リリスやアーシェ達にもいっていない事実がある。
それは、モーベンに関することだ。
俺はリリスを「襲った敵が赤い髪だった」とガラハットさんに報告した。
赤い髪を持つのは魔人だけということですぐにこの情報は街中を駆け巡った。
おかげで、最近は周囲の俺を見る目が険しい。
赤みがかった髪と瞳のせいで警戒されているのだ。
ただ、赤い髪の敵は目撃しただけと言うことになっておりモーベンの事やそのほかのことは報告していない。
だが、モーベンとの約束に間に合わなかったことや魔物化したモーベンを殺したことは俺の中で罪悪感となって残っている。
どうやら、他人の死という事実は予想よりも重くのしかかってくるらしく、「俺が間に合っていればモーベンは死なずに済んだ」などいう確証もない妄想を思い描いて夢に見てしまうのだ。
おかげで、最近はよく眠れていない。
彼らが俺のことを心配して「何かあったのだろう」と予想することは難しくないことに今更ながらに気づいてしまった。
「ふぅ・・・」
俺は一つため息をついてからコップに入った水を飲み干すと、4人にはモーベンのことを話すことにした。
話す内容は特に多くない。
魔人化していたモーベンと出会い戦闘を行い勝利。その時に魔人化から元状態に戻したこと。
そして、モーベンの仲間も同じく魔人化しているのでそれを治すと約束したこと。
ただ、約束には間に合わずモーベンを死なせてしまったこと。
最後に、モーベンがなぜか魔物化していたのでそれを倒したこと。
「・・・」
話を聞いている時も話し終った後も4人は言葉を発しない。
おかげでスムーズに話は終わったがなぜか宴の席で俺達だけがだんまりなので周りから浮いてしまう。
周囲は賑やかに食事をしながらも、俺達を遠巻きに見ている。が、近づいては来ない。
俺がパラサイトアントの巣内で2度もプロミネンスアローを放ったことはガラハットにより周知の事実だ。
おかげで俺は2日目以降の討伐作戦で後方支援しかしていない。
前線で人を戦わせればそんな大技は出せないだろうという判断だ。
ちなみに、初日での2度のプロミネンスアローでの被害者はほぼゼロ。
理由は俺達の進攻速度が他よりも早かったために直撃することがなかったためだ。
ただ、やはり完全になかったわけではなく進攻の速かった上位パーティーには怪我人が出たらしい。
一応、謝りに向かったが俺の髪の色と瞳を見て警戒されてしまったので代わりにリリスに謝ってもらう事態になってしまった。
そのことはすごく反省している。
この世界に来て以降で手に入れた魔法と云う力に少し頼り過ぎているかもしれない。
半魔人化して魔力吸収を覚えて以降、それが顕著に表れている気がする。
今回の反省を期に、この街を離れる前のダンジョン攻略では魔法を極力使わずに進もうと心に誓う。
「さて、俺の話は以上だ。今後の予定でも話すか。」
俺は沈黙に疲れてきたのでそう話を切り出した。
「今後の予定・・・ ですか?」
不思議そうに尋ねてきたのはセリスだ。
既に俺から今後の予定として明日にはダンジョン攻略。明後日にはこの街に立つという話は伝えているがこれは俺の定めた予定であり、異論があるならば聞いた方がいいだろうと思って尋ねたのだが、基本的に俺の決定は覆ることはないので4人は決定事項だと思っているのかもしれない。
「さっきの予定はあくまでも俺個人の意見だからな。何か異論がある場合は聞いておいた方がいいだろう。俺は半魔人化していて正直、お前ら以外とは今後はパーティーを組み機会はないかもしれない。そう考えるとダンジョン攻略はパーティーで戦う最初で最後の練習になるかもしれないからな。3人の予定に合わせて攻略は行うつもりだ。まぁ、お前たちがここでパーティーを解散したいと言えば止めはしないがな。」
「そんなことはありません!」
「それはないです」
「そんなことないですよ!」
アリス、アーシェ、セリスの3人が声を合わせて俺の言葉を否定する。
どうやら、ダンジョンの攻略は俺の予定通りパーティーで行うことになりそうだ。
「お主らならワシがついておらんでもここのダンジョンぐらいならば攻略できるじゃろうから、ワシは暇になりそうじゃのう。」
リリスが俺達を見ながら残念そうにつぶやいた。
確かに今までならば無理をしない様に見守っていたが、今の俺や3人のレベルなら多少の無茶は押しとおるだろう。
「まぁ、そう言うな。ダンジョン攻略が終わって旅立てば俺とお前の2人旅に逆戻りだ。そうなったら頼りにさせてもらうさ。」
「なに・・・?」
俺がなんとなく発言した言葉にリリスが意外そうな顔をしてこちら見つめてくる。
装備などを返したことでついてくるなと言われるとでも思っていたのだろう。
前にいる3人も俺の発言が気になったのかこちらを見つめて驚いている。
「お主・・・ ワシがついてくることに反対せんのか?」
リリスは意表を突かれた俺の言葉に疑問を投げかけてくる。
俺はその質問に対して実にあっさりと答えを返すことにした。
「しょうがないだろう。半魔人化の影響でお前がそばにいないとギルドや国から追いかけられることになりそうなんだ。街の店も利用できないだろうしな。そうなると魔人化した奴らを探す旅が面倒になるし、生活面で苦労しそうだからな。お目付け役としてついて来てもらわないと困る。」
俺はあくまでも「仕方なく」というニュアンスを漂わせつつそう言葉を返した。
「おお・・・ アルトがデレた・・・」
リリスは驚きの声を挙げつつ意味不明な言葉を口にする。
何だよデレたって・・・
普通に状況からそれがベストだと判断しただけだよ。




