第五十四話 牛の悪魔
やばいは~・・・
上田リサさんの『勘違いなさらないで!』読んでたらこの土日があっという間に終わった。
全然自分の小説が進まね~ww
そして、まだ完結してないので小説の続きが気になってしょうがない。
読み専の方が分相応かな?と思う今日この頃。
短くてすんません。
悪魔の様な現状にもかかわらず、ワシは目を閉じずにずっと振り下ろされる刃を見ていた。
別に何かができるわけではない。
この状況を覆すことも、隠していた切り札もない。
それでも、ワシは・・・
最後は胸を張り、相手に屈さず逝く。
例え死んでも惨めなさまは見せない。
いや、正確には見せたくないのだ。
相手にではない。
ワシの愛した。
ワシの大好きな人に・・・
惨めに喚いて逃げ出したそんな表情を焼きつけたくない。
でも、笑って死んだ不気味な顔も嫌だ。
せめて戦士として、戦かう者の表情を残して・・・
そう思い力いっぱいに相手を睨みつけた。
ブン!
ブルデーモンの振り上げた巨大な戦斧が空を切り裂いていく。
落ちるのはリリスのそんな思いとは裏腹にその顔目掛けて真っ直ぐに振り下ろされた。
ガギン!
はずだった。
だが、その刃はリリスまでは届かない。
突如として現れた騎士は青を基調とした鎧を身に纏い、光り輝く巨大な盾を両手でしっかりと握りブルデーモンの振り下ろした刃を受け止めている。
(この鎧は・・・)
その鎧には見覚えがあった。
それはワシがアーシェに貸し与えた鎧だった。
「大丈夫ですか?! リリスさん!」
その声にワシは何が起こったのか分からなくなり言葉を失う。
何を聞けばいいのか分からなくなったのだ。
どうしてここに?
どうやって助かった?
アリスはどうした?
色々と聞きたいことが頭の中を駆け廻る。
だが、そんなワシの思考を切り裂くようにアーシェは言葉を紡ぐ。
「ここは私が抑えます! リリスさんは一旦下がって体勢を整えてください!」
アーシェの言葉に我を思い出した私は一旦下がる。
「ブゴァアア!!」
ワシが一旦下がったことが気に入らないのか。
ブルデーモンは怒り狂ったかのようにリリスを追おうとするがアーシェが間に入ってそれを防いだ。
ブルデーモンはそのことにさらに怒りを強めて咆哮を上げるとアーシェに向けて斧を振り下ろす。
ガギン ガギン
アーシェはブルデーモンが振り下ろす刃を両手で持った大盾で何とか防ぐ。
振り下ろされた斧を受けるたびにアーシェの足元の大地が崩れ、アーシェは膝を折りそうになっている。
「く・・・!」
「リリスさん! こっちです!」
どうすればいいのかわからずに後方に下がったワシを呼ぶ声が聞こえた。
呼ばれた方を振り返るとそこにはアリスがいた。
アリスの背後にはまるで背後霊の様に下半身を地面に埋めたアルトの霊体がいる。
「お主も無事じゃったのか!」
ワシはアリスのいる場所まで下がるとそう声をかけた。
「はい。アルトさんのおかげで何とか。」
アリスはそう言いながらもブルデーモンに対して光魔法を飛ばし、アーシェに対して回復魔法をかける。
「話は後だ。魔力の回復をしてやるから大人しく立っていろ。」
アルトはというと下がってきたワシに対して手を伸ばすとワシの体に霊体である自分の右手を差し込んだ。
よく見れば左手はアリスの体に差さっている。
「これはいったい何をしておるんじゃ?」
「ん? ああ、俺の魔力を2人に送ってるんだ。 俺は魔力吸収で魔力をほぼ無限に増やせるからな。」
ワシの質問にアルトが簡潔に答える。
なるほど、確かにこの方法ならば魔力の回復は以上に早い。
ワシの魔力値も先程よりも早く回復しておる。
ワシは魔力が回復するのを見つつ戦況を見つめる。
戦っているのがアーシェとアリスの実質2人でありながら戦況はほぼ膠着状態じゃった。
光の加護魔法を盾に受けたアーシェが身体強化を施してブルデーモンの攻撃を受け止め、アリスが遠距離から光の攻撃魔法をブルデーモンに飛ばし、回復魔法をアーシェにかける。
悪魔族であるブルデーモンに対して光属性の魔法は有効だが、相手は魔法耐性持ちでおまけにアリスのレベルは低く、使用している魔法も初級魔法であるシャインボールというファイアーボールの光属性版なので威力は高くない。
ハッキリ言って攻撃魔法としての意味はなしていない。
だが、本能的に光の魔法を嫌がったブルデーモンが攻撃してこないアーシェを無視して何度か斧を振り回して攻撃を消し去っている。
おかげで、アーシェの受ける攻撃数が減少する。
これはレベルの低いアーシェの生存率を上げるのに一役買っている。
アーシェは装備は良く、防御だけに徹しているがレベルが低いために例え盾で攻撃を受けたとしても体力値にダメージを受けている。
それを回復するためにアリスは回復魔法を使用しているが、それでもブルデーモンの攻撃が生み出すダメージ量には足りない。
通常ならばアーシェはすぐに体力値を失い死亡するだろうが、アリスの光魔法による嫌がらせのために攻撃回数が減りダメージ量を抑えている。
「悪くない作戦じゃ。」
「同然だ。俺の策だからな。」
ワシが作戦を褒めるとアルトが当然とばかりに反論する。
「もう少し魔力の回復量を上げられんかの?」
ワシは魔力の回復が気になってアルトに尋ねる。
「無茶を言うな。アリスの魔力量が尽きない様に補充しているだけでなく、俺は別の大掛かりな魔法を食っているんだ。それのコントロールしつつ魔力吸収してるんだぞ。」
「別の大掛かりな魔法? なんじゃそれは?」
「後で教えてやる。それよりも、いつになったら戦えそうだ? お前の方には多めに魔力を送ってるんだが・・・」
ワシの質問をバッサリと切りつけて、アルトがワシにしかめっ面で尋ねる。
確かに魔力は徐々に回復しておるがアルト基準で多めと言われてもワシからすれば微々たるものじゃ。
まぁ魔力供給があるとないでは大違いじゃから助かるんじゃが、アルトも何らかの魔法を使用しているからかアリスに魔力を供給しておるからそこまで多くはない。
(まぁしかし・・・ アーシェにあまり無理をさせるわけにはいかんか・・・)
そう思いワシも魔力吸収法で魔力の補充を開始する。
アルトと違い吸収した魔力の選別をする必要があるために吸収量が少なく選別のために意識を集中しないといけないために使いどころの難しい魔力吸収法だが、やはり覚えていると便利だ。
「グォオオオオオ!!」
こうして、ワシが魔力の回復を優先するとほぼ同時にブルデーモンが斧を天高く掲げると咆哮を上げる。
そして、ブルデーモンの持つ斧から紫色の光が周囲へと広がる。
紫色の光が広がると光が広がった場所にある魔法が次々に解除される。
最初にアーシェの盾にかかった魔法とアリスの身体強化魔法に回復魔法。
続いてアリスが飛ばしている光の魔法に準備している魔法が砕けると最後にアルトの体に異常が発生した。
「グ・・・!」
「アルトさん!」
「「アルト!」」
アルトの苦しそうな顔にワシとアリス、アーシェの三人は振り返ってアルトの名を叫んだ。
「な・・・! 霊体も魔法認定なのか・・・?! く・・・!」
アルトは悔しそうに顔を歪めるとワシとアリスの体から手を引き抜き地面の中に潜っていった。




