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第二十八話 秘密の修行

グラッツさん達との合コン?を終えて俺達は解散することにした。

今日の報告でもしかしたら明日からはダンジョン探索が一時出来なく可能性があるが、この日は特に気にせず明日そうなった時にまた考えることにした。


夜、夕食もお風呂もリリスとの魔法の勉強も終えた後に俺は一人、魔法の練習をする。

今日、カミューさんがやっていた魔力回復法を覚えるためだ。


(まずは深呼吸をしてみるか。)


俺は2,3回深く深呼吸をして体内に自然界の魔力と空気を取り込んでみた。

だが、呼吸なんていつもしているが自然界の魔力など感じたことがないのでやはり感じ取ることはできない。


(まずは、魔力を感じるところからか・・・)


俺は気配探知や魔法による探知魔法を使用して周囲の魔力を探る。

気配探知の方は室内全ての物を感知することはできるがそれだけだった。

探知魔法は指先から魔力を球形に放って見るが、覚えたての為か綺麗な球形にならずに歪な形になりながら広がっていく。


(ううむ。両方とも自然界の魔力に反応を示さないな。)


自然界の魔力は空気と同じようにどこにでも存在するものなので寧ろ感知出来てしまうと支障をきたす様になっているのだろう探知魔法でも魔力を探知することはできない。


(そりゃそうか。どこにでもあるものにいちいち反応してたらきりないもんな。)


俺は別の探知方法を探すことにした。


(自然界の魔力の探知か・・・ どこにでもあるけど、どこにでもあるからといって感じ取れない訳はないだろう。 それができないとカミューさんの様に魔力を回復することはできない。)


俺はとりあえず探知、探査、感知の魔法の術式を解体してどうにかできないかを考えながらそれぞれの魔法を試してみる。


(未知の物を探る『探査』や隠されている物を探す『探知』じゃなくて感じ取る能力である『感知』の魔法が一番有効かな?)


言葉の意味的にも一番合っている感知の魔法も特に何かを感じ取ることはできない。


(それより、魔法の発動時の球形の歪みの方が気になるな・・・)


俺は魔法発動時の球形が歪に歪む理由について考える。


(術式は完璧で魔力の調整も問題はない。なのに、球形に広がるはずの魔法が形を歪めるなんてことがあるのか?)


俺は頭を抱え込んで本来の目的とは違うことを考え出した。


(ゆっくり丁寧に・・・)


俺はもう一度感知の魔法を発動してゆっくりと観察する。

日々の先から広がる球形は徐々に大きくなるにつれて何らかの影響で形を少しずつ歪めていく。


(なんだ・・・? 空気の影響を受けているのか? 所々で広がっていく魔法が早かったり遅かったりしているな・・・ でも、空気の影響なんて受けるほど風もないし・・・!)


俺はそんなことを考えながら右手の指先からゆっくりと広がってく魔法を見ながらあることに気づいた。

球形に広がっていく魔法は指のある下の方や自分が覗き込んでいる手前側の方が早く進みその他の方向では遅くなっていく。

特に奥側と上部への広がりが遅い。


(これは・・・!)


俺は空いている左手を発動している魔法の上部に持ってきた。

すると数秒後に少しだけだが魔力の広がりが早くなった。


(やっぱりだ!)


俺はこれを見て確信した。

俺の発動している魔法は自然界の魔力の影響を受けている。

おそらく、俺自身が無意識にはなっている『正』の魔力が多いと魔法の発動が早くなり、『負』の魔力の影響を受けると遅くなるのだ。


≪魔力を周囲に拡散すると自然界の魔力の影響を受ける≫


という事実を突き止めた俺は右手に魔力を集中して感覚を研ぎ澄ます。


(右手から出る魔力を自分の手の延長と考えて神経を研ぎ澄ませばきっと自然界の魔力を感じることが・・・)


そう思い10分ほど右手から魔力を出したり引っ込めたりしているが一向に魔力を感じ取ることはできない。

ただ、魔力の操作がうまくなっただけだった。

いや、早くなったり遅くなったりしていた魔力がどんどんとその影響を受けなくなってきている。


きっと俺の魔力操作能力が自然界の魔力の影響を受けないまでにレベルアップしたのだろう。


(このままではいかんな・・・)


俺は少し休憩がてらお茶と買い置きのお菓子を口にする。

魔法の修行で疲れた時様に密かに買っておいた品だ。

まぁリリスに頼んだら大量に用意してくれた物なのだが・・・


「ふぅ・・・」


俺は一息ついて少し考えをまとめる。


(魔力操作能力が上がって自然界の魔力の影響を受けなくなってきた。このままだといずれは完全に影響を受けなくなってせっかく手にした手がかりを失うことになる。)


では、それをしないためにはどうすべきか?


(①魔力以外での感知方法を探す。②魔力での感度を上げる。の二択だが・・・)


①は方法が思いつかず、②は感度を上げる訓練をしている間に魔法操作能力が向上して自信の魔力による自然界の魔力への干渉自体が難しくなる。

最悪は不可能ということになりかねない。


(こういう時は別の事を考えよう・・・)


俺は一旦この件については放置して別のことを考える。

別のことを考えることで何かいい案が浮かぶか。

何処かにヒントの様なモノがあるかもしれない。


(人間関係・・・)


リリスのことは放置しておこう。

考えても仕方がない。

今までの諦めさせる作戦は失敗しているし、一人立ちすれば付きまとわれる可能性はあるがそれだけだろう。

あいつは俺に害意や敵意を持っているわけじゃないからな。


アーシェは・・・

これまでの件で俺を恨んでいるだろうな・・・ (主にセクハラ問題)

だが、未だに同じパーティーに留まっているしそこまで恨んでないのだろうか?

・・・それはないな・・・

身体強化魔法使用時に俺を睨んでくるし・・・

まぁいずれは解散する仮のパーティーなので気にしなくてもいいだろう。

いや、解散後に奇襲される可能性は考慮しておこう。

今はアリスを誘った手前、パーティーからの脱退も解散も言ってこないがこちらから言い出せば向こうも断れないだろうし襲われる可能性がある。

なかなか危険な女だな・・・ (自業自得)

そういえば、彼女の魔法に対する逃げて意識は薄らいだのだろうか?

あれでは今後、必要を迫られた時に苦労しそうだな。

リリスから戦士にとって最低限必要な魔法を聞いて早めに練習させるべきだろうか・・・


アリスは解散しても特に何もしてこないだろう。

俺との間に特に確執もないし・・・

アーシェに協力を頼まれても彼女の戦闘能力ならばアーシェと組まれて二対一の構図になっても勝つ自信はある。

寧ろ、彼女があちら側ならば怪我をしても回復できるから安心だ。

レベルも順調に上がっているし、魔法もリリスからいろいろ聞いて勉強しているようだ。

問題は解散後のパーティーだがアーシェとセリスがいれば一応形にはなるし、グラッツさん達の所に加えてもらえば・・・

一つのパーティーに僧侶3人は無理があるかな?

アーシェとセリスが混じると8人か・・・

少し多い気がするな。

余程稼がないと分け前がほとんどなさそうだ。


セリスは魔法への理解とセンスがある。

ダンジョンからの脱出時に魔法を何個か使わせてみたが問題なく発動している。

威力と精度は戦闘で使えるものではないが、これからの修行次第だし戦闘系職業が盗賊なのも理由の一つだろう。

問題があるとすれば魔獣などとの戦闘で血を見ると怯えることだろう。

ここのダンジョンはアンデット系だけなのでまだいいが、他のダンジョンに行けばゴブリンやコボルト、オークといった出血する魔物も出現する。

今のうちにできるだけ耐性をつけておこう。

問題はやり過ぎてトラウマにしないことだな。

まだ若いからメンタル面が心配だ。

今からでも魔法使いに転職させるべきだろうか?

いや、盗賊のままでも魔法は使えるしそれなら普通に中級職を目指して魔法戦士か魔法剣士、魔法盗賊などの選択肢もありだろう。

本人に「今からでも魔法使いに転職するか?」と聞いてみてからでもいいだろう。

盗賊を進めたのが俺自身だから少し言い出しにくいが・・・

パーティー解散後に彼がどのような進路を取るのか知らないが・・・

まさか、俺についてくるのだろうか?

パーティーに誘ったのは元はといえば俺の「男性の仲間が欲しい」から始まっているし、セリスに関しては自分から脱退を申し出ない限り俺やリリスと一緒に来る権利があると言えるが・・・

アリスやアーシェと同じところに宿を取っているから向こうの三人でパーティーを組んでくれると安心なんだが・・・

アーシェ=前衛 セリス=接近戦闘で前衛、魔法で中衛、後衛 アリス=後衛、回復役

なら三人でも安定して戦えるはずだ。


(う~む・・・)


今後のことや人間関係などを考えても特に進展はないな。

他のことを考えよう。


(魔物や魔獣について考えてみよう。)


パラサイトアントは今の俺のレベルでは倒せないだろう。

リリスを抜いた四人パーティーでも一匹を相手にして勝てる可能性は10%がいい所だ。

あいつがダンジョン内で増殖した場合はここのダンジョンでのレベル上げはできないな。

そうなると別の初心者用ダンジョンに移動か、パラサイトアントが駆除されるまでは待機だな。

一人立ちまでの道のりが遠くなるな。


ワームは俺1人でも魔力さえあれば遠くから魔法銃で倒せることは今日判明した。

接近戦では武器が棍棒では厳しいだろう。

棍棒に近い槍の様な武器を持っておいた方がいいのだろうか?

いや、魔力回復法が手に入れば魔法で何とかできるだろう。


骨系のアンデットは魔力さえあればこれも問題ない。

魔力量に限りがあるから倒せる数に限りはあるだろうが、身体強化魔法を使って棍棒を振るえば時間はかかるが倒すことはできる。

接近戦でも中遠距離戦でも負けることはないだろう。


問題はゴーストだ。

今日は戦うことができなかったから勝てるかどうかは不明だ。

アーシェとアリスの3人で協力して一度だけ倒したが、あの時はリリスがアーシェに魔法をかけていた。

その分をセリスが補ってくれれば4人で勝つことも可能だろう。

いや、俺かアリスの光魔法が当たれば一撃で倒せるかもしれない。

当たるかどうかは試してみないとわからないが、あの時よりも魔法の威力と精度、速度は上昇している。

当たる確率は前より高いはずだ。


(まぁ交戦してみないことには結果は分からないな。)


俺はそこまで考えてからベッドに倒れ込んだ。

天井を見上げて気持ちを落ち着かせる。

精神空間内での仮想ゴースト戦を行うことはできるが、相手の強さや速さはこちらのイメージに依存している部分があるので実際の戦闘でないと仮想ゴーストが実物より強いのか弱いのかはよくわからない。


(そう言えば、ゴーストって何でできてるんだろう? 魔力の塊? 本当に霊魂の類なのか?)


・・・霊魂?


そこで俺は一つの考えを閃いた。


「ドッペル。起きてるか?」


俺は自分自身に話しかけるという頭のおかしな人特有の行動をとる。


(なにかよう?)


すると脳内で自分とはまた違う自分が話しかけてくる。


「実験したいことがある。少し協力してくれ。」


(それは精神世界じゃだめなの?)


ドッペルはすっかり精神世界での生活に馴染んでしまったのか、あまり協力的な態度ではない。


(まぁ精神世界は思いのままだし、現実に出てくるのは今の状況じゃ不可能だしな。)


俺が代わってやれば不可能じゃないが代わってやるつもりは今のところない。

そして、それ以外で現実に出てくる方法がドッペルには今のところない。


「今からやることが実現できれば、お前も外に出られるぞ。」


(・・・! 本当か?!)


ドッペルは俺の言葉を聞いてやる気が出たのか、声に張りがある。


「ああ、何せ幽体離脱の練習だからな。」


こうして、俺はドッペルと幽体離脱の練習をする。


肉体や魔力を使っての自然界の魔力感知ができないなら霊体でそれを行えばいい。

それが俺の出した結論だった。


俺はドッペルに体を乗っ取らせるために体を明け渡す気持ちで抵抗する気がないことを示す為にベッドに寝っころがりリラックスした状態でいる。

ドッペルは俺を精神世界に引きずり込むのではなく、体外に追い出すようなイメージで力を入れる。


(ふぬぬぬぬ!! ・・・やっぱ無理じゃね?)


「諦めるの早いな。」


ドッペルは1分もたたないうちに諦めてしまう。

俺の記憶を継いでいるとはいえ、元が5歳児だからだろうか?


(だってさ~。どうすればいいかわかんないし・・・)


ドッペルは言い訳をする子供の様な態度でそう言った。


「まぁいきなり全身は無理か。今度は右手だけやってみよう。」


俺はベッドに座り直して右手に魔力を集中して今度は魔力と共に自分の霊体を引っ張り出すイメージを持つ。

更にそこにドッペルによる肉体の押し出しを行えば効果は2倍のはずだ。


そう思いながら3分ほど続けてみたが特に変化はない。


(やっぱ無理。)


ドッペルはそう言ってまた諦めてしまう。


「よし、今度はお互いの精神情報を交換してお前が表に出てやってみるか。」


(本当に?!)


ドッペルは表に出るのがうれしいのかやる気を出してくれる。

俺はドッペルに何とかやる気を出させながらこの方法を続ける。


すると、深夜を過ぎた頃に俺達はようやく指先の幽体離脱に成功した。


「よっ・・・!」


(うるさい!!)


俺はうれしさのあまり大声を出しそうになったドッペルを精神正世界に引っ込めて黙らせる。

その後、俺達は情報を交換して幽体離脱の訓練を続ける。


(なるほど、霊体に魔力を流すと自然界の魔力と反発して感じ取ることができるのか。)


俺は霊体の指先で自然界のある魔力を感じ取って指で転がす。


(いや、魔力を流さない方が霊体内に自然界の魔力が入ってきてわかりやすいよ?)


するとドッペルの奴がもっと最適な方法があると教えてくれる。

俺はドッペルの言う通りに霊体内の魔力をできるだけ少なくしてみる。

すると、霊体内に自然界から魔力が流れ込み薄く白い透けた霊体に白や赤、青に黄色といった様々な色が混じり合いながら入ってくる。

だが、その約半分は黒い靄の様な色が占めている。


(この黒いのが『負』の魔力なのかな?)


ドッペルは黒い靄を見つめてそう言った。


「多分な。」


俺は簡単な相槌を返しながら自然界の魔力を感じてその感受性を高めていく。


コンコン


そんな俺の部屋を誰かがノックした。

俺は急いで手から出た霊体を体に戻す。


「はい、誰ですか?」


俺は鍵のかかったドアの向こうに声をかける。


「・・・? 何を言っておる。ワシじゃよ。もういつもの時間じゃぞ?」


するとリリスが、ドアのかぎを開けて中に入ってくる。

俺はその言葉に驚いて窓の外を見ると太陽が燦々と輝いていた。


どうやら、いつの間にか朝になっていたらしい。


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