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第二十七話 魔力回復法

こっちにもついに感想が届きました!

まぁ説明不足のご指摘でしたが・・・

やっぱりそう言うのはちゃんとしないとだめだよね!

今度からはできるだけ頑張ります。


ご指摘があったので訂正させていただきます。

ついでに追加で設定の修正をさせていただきます。

内容は


「・・・・発狂した者は大抵は暴れまわれば体内の魔力がなくなって元に戻るんじゃが。発狂した者の1割が廃人。1割が死亡。そして、何千分の1の確率で魔人になるのじゃよ。」


上記の一文を


「・・・・発狂した者は狂ったように暴れて1割が廃人になり1割が死亡。そして、何千分の1の確率で魔人になるのじゃよ。まぁ、逆に言えば8割暴れ回った後は元の状態に戻るんじゃが、それでも多少の記憶障害や体内魔力の淀みで身体に影響は残るがの。」


への変更です。

俺達はパラサイトアントとの戦いの後、ダンジョンから出ることにした。

魔力が尽きたことやアーシェとセリスの負傷もあるが、一番の理由はパラサイトアントのことをギルドに伝えるためだ。

パラサイトアントの戦闘能力は下級職業の中でもかなり高レベルでなければ倒せない。


そんな魔獣が初心者用ダンジョンに現れたとあっては一大事だ。

リリスの見解ではパラサイトアントの件が片付くまではこのダンジョンを閉鎖することになるかもしれないということだ。


俺は帰り道にカミューさんに話しかけることにした。

魔力が尽きたグラッツさん達のパーティーも一緒に帰ることになったので、今はカミューさんとも一緒だ。

彼らのパーティーは俺達より実力は上だが、リリスには圧倒的に負けている。

なので、安全に帰るために俺達に同行している。


「カミューさんがやってたあの深呼吸にはどんな意味があるんですか?」


「ああ、あれは自然界の魔力を吸収していたんだよ。」


俺の質問にカミューさんは平然と答えた。


「それは魔族特有の方法ですか?」


俺はあっさりと帰ってきた答えを追及する。


「いや、普通に誰でもできるけど・・・ 残念ながら教えてあげることはできないよ?」


カミューさんは俺の意図を察して予防線を張った。

最後が?マークなのは「それでも質問を続けるのか?」という意味だろう。


「教えることができないのはなぜですか?」


無論、俺は質問を続ける。


「あの術は危険が伴ってね。理論だけ説明するとね。」


そう言ってカミューさんは先程の魔力回復法の理論だけ教えてくれた。

なんでも、自然界の魔力というのは生き物や草木の放つ『正』の魔力と死体や魔物、魔獣や汚水などの濁った醜悪な『負』の魔力が大まかに分けてあるらしい。

これは空気中に漂う魔力の中に混ざり合っているそうだ。


呼吸することで、空気と一緒にこの混ざり合った魔力を吸収して『正』の魔力と『負』の魔力を体内で分別して『正』の魔力だけ吸収するのだそうだ。

『負』の魔力は吸収すると人体や精神に悪影響を及ぼすらしい。

良くて狂人になって発狂して暴れ回る程度で、悪ければ廃人か死亡。


そんな危険な魔法なので教えるには高位の魔法使いか、国から許可を得た専門機関などで教わらなければならないらしい。


「なるほど・・・」


俺はカミューさんの話に納得して頷く。


「ここからだと隣町のガルザに行って教わらないと無理かな。」


カミューさんは「僕もそこで覚えたんだ」と付け足して俺に道を示してくれる。


(そんなところに行かなくてもリリスに教われば・・・)


「なぁ! リリス!」


そう思って俺は先頭を歩くリリスに向かって声を張り上げる。


「いやじゃ。」


リリスは俺が呼んだだけで否定する。

俺はそんなリリスに歩み寄って隣に並ぶ。


「まだ何も話してないだろう?」


「カミューの奴がやっておった自然界の魔力を取り込む方法じゃろう? ワシは教えんぞ。」


リリスは俺の意見など聞かなくても察していたらしく、俺に話す間を与えずに切って捨てた。


「理由は?」


俺はせめて理由を聞こうと話を振る。


「危険だからじゃ、あの方法は大変危険な上に慣れるまで自分に合った『正』の魔力しか吸収できんから効率が悪い。事実、使えるものはほとんどおらん。」


リリスの話によると高レベルになれば最大魔力量が上がるにつれて、魔力の回復速度も上がるので必要なくなるそうだ。

つまり、低レベル時には必要に思うかも知れないがレベルが上がれば必要なくなる。

おまけに、低レベルな者は精神も肉体も未熟なので失敗し易く、発狂して暴れ回ることが多いそうだ。


「それに、『魔人』になると厄介じゃしの。」


リリスは最後にそう呟いた。


「魔人ってなに?」


俺はリリスの最後の呟きを聞き逃さなかったのでそう聞き返した。

リリスは独り言のつもりでつぶやいたらしく、俺が聞き返すと驚きの表情を浮かべた。


「・・・・発狂した者は狂ったように暴れて1割が廃人になり1割が死亡。そして、何千分の1の確率で魔人になるのじゃよ。まぁ、逆に言えば8割の暴れ回った後は元の状態に戻るんじゃが、それでも多少の記憶障害や体内魔力の淀みで身体に影響は残るがの。」


リリスは少しだけ考えた後にそう答えた。

その表情からは何やらただならぬ雰囲気があり、それ以上は追及できそうになかった。

余程のことがないと起きないことらしいが、魔人になることはリリスが警戒するほどのことらしい。


(その方法を教えてはキスによる魔力供給法が使えんからの。絶対に教えてはならん。)


実はリリスの目論見は別にあるのだが、この時の俺にはよくわからなかった。


(しかたない。独学で頑張るか・・・)


もっとも、誰も教えてくれなくても勝手に覚えるつもりの俺にはあまり関係はなかった。




その後、俺達はギルドに戻って換金とパラサイトアントについて報告する。


「パラサイトアントですか・・・」


豹の獣人リズさんは左手を頬に当てて困ったようにそう呟いた。


「何かあったの?」


その後方から兎の獣人の人が話しかけてくる。


「あ、先輩。実は・・・」


どうやらリズさんよりあの受付をしている兎の獣人の人の方が先輩らしい。


「分かったわ。ガラハットさんには私から話しておくから、リズちゃんは皆さんからダンジョン用のアイテムを回収しておいて。」


兎の獣人の人はリズさんにそうお願いした後に裏方の方に行ってしまった。

リズさんは兎の獣人の人が去る前に「わかりました」と返答を返してから俺達に振り返り、ダンジョンに入るために貸し出してあるアイテムの返却を求める。


俺達はそれに応じてアイテムを返却した。


「さて、どうしよか。」


とりあえず、ギルドへの報告は済ませたので俺達はどうするのかを話し合う。

いつもは街を適当にぶらついてどこかのお店に入って軽く食事(おやつを食べる)をして解散という流れだが・・・


「これから一緒にお食事でもどうですか?」


グラッツさんは俺達のパーティーの女性人を見ながらそう言ってきた。

他の4人も女の人との食事を楽しみにしているのかグラッツさんを止めようとはしない。


「どうしますか? いつもならこのあと軽く食事をしますから、それをこの人数で行いますか?」


アーシェは俺達のパーティーのみんなにそう尋ねてきた。

俺達は顔を見合わせてどうするかを考える。


「ワシはアルトがそれでいいなら構わんぞ。」


リリスは「俺が行くなら行く」という答えをいち早く出す。


「私もアルトさんに従います。」


「僕もそうします。」


アリスとセリスは考えるのが面倒なのか、一応リーダーの俺を立てたのかは分からないがリリスに追従する答えを出した。

アーシェは「私は質問した側だ」という表情でどうするかはこちらに任せる方向らしい。

そのせいだろうか、グラッツさん達の視線は俺に集結する。

その眼には「俺達もつれて行け」と訴えかけるモノが宿っていた。


(ここで解散って選択肢はないな・・・)


さすがに、そんなことをすれば俺の立場が「女性に恵まれたパーティーにいる男」から完全に「ハーレムを作った男」になってしまう。

ただでさえ、周囲の眼が痛いのだ。

グラッツさん達と行動をともにすればもしかしたらそのイメージが払拭できるかもしれない。


「じゃ、一緒に行きましょうか。」


俺はそう言ってグラッツさん達を含めた皆で行動することを選んだ。


「ヨッシャ!」


グラッツさんは俺の言葉に声を出して喜んだ。

後ろにいる4人は声こそ出していないが、その表情はどこか嬉しそうだった。

俺達は早速、ギルドを後にしてどこかの店に向かう。


「場所は俺達がよくいく店を案内するよ。」


カルトさんはそう言って先導して案内してくれる。

俺達はただそれについていくだけなのだが・・・


「ねぇねぇ、君って教会で働いてる子だよね?」


「ナイフ使いか、ナイフ捌きなら少し教えられるよ?」


「リリスさんってレベルどれぐらいなんですか?」


「君は戦士だろう? よければ今度、一緒に訓練しないかい?」


パントンさんはアリスを、オルドさんはセリスを、カミューさんはリリスを、グラッツさんはアーシェに話しかけていく。

その様はまさにナンパのようであった。

アリスとアーシェ、セリスの3人は戸惑いながらも普通に会話をしているようだった。

リリスはレベルには触れなかったが、魔法についての議論をカミューさんとしているようだった。


「~♪」


先頭を行くカルトさんは平然とした表情で鼻歌交じりにお店に向かう。

そのお店に何かあるのだろうか・・・


店につくとその答えはすぐに分かった。

カルトさんは店の1人のウェイトレスの女の子に積極的に話しかけていた。

4時過ぎという比較的暇な時間帯とはいえ、話しかけられているウェイトレスの子は少し困っているようだった。


席に着くとそれぞれ道中の話の途中だったので、隣の席に座って話し始める。

その様子はまるで合コンの様であった。

カルトさんはウェイトレスの女の子がお気に入りなのか頻りに話かけている。


(合コンでハブられた感じになってしまったな・・・)


俺は一人取り残された可哀想な存在になっていた。

セリスを女とすると女4人男6人の構図なのでどうしても二人余るのだが・・・

カルトさんが店のウェイトレスに夢中なので俺だけがボッチのこの状況は少しさびしいものがあった。


「すみません。チョコレートパフェひとつ。」


とりあえず、俺はパフェのお代わりを頼むことにした。


「あ! はい。 少々お待ちください。」


カルトさんに捕まって動けなかったウェイトレスの女性は俺の言葉にうれしそうに声を張り上げて厨房にオーダーを通しに行った。

よほど、カルトさんとの話が嫌だったのだろうか?

カルトさんは「俺の女を横取りしやがって」とでも言いたげに俺を睨みつけてくる。


(いや、他のウェイトレスさんこないんだから仕方がないじゃないか・・・)


店内には暇そうなウェイトレスさんは他にも数名いるのだが、みな遠巻きにこちらを見て何かを話していた。

人数の中途半端な合コンが珍しいのか。

それとも、カルトさんに絡まれていたウェイトレスさんを憐れんでいるのか。

真相は分からないが、俺は居心地が悪いのでパフェを食べたら帰ろうと心に誓った。


俺がパフェを食べ終わり「そろそろ解散にするか」と言うと女性4人(セリス含む)は普通に「そうしましょうか」という感じで賛成してくれた。

逆に男性5人(グラッツさん達)は「まだ一緒にいたい」と言わんばかりに目で訴えてくるが、俺は集団内でボッチでいるのが嫌なので気づかないフリをした。


集団から離れてボッチになるのと集団内でボッチになるのではその意味は別物だ。

集団から離れているのは一人でいたいからで、集団内でのボッチはその集団に馴染めていないからだ。

そんなわけで、俺はボッチが嫌なので解散することにした。


「あのさ、この後時間ない?」


グラッツさん達は必死にアーシェ達に話しかけてナンパを続けていた。

カルトさんだけは店を後にすることを嫌がっているのか遠くにいる先程からずっと話しかけていたウェイトレスさんを見つめている。

ウェイトレスさんは迷惑なお客さんが帰るのがうれしいのか。

営業スマイルなのかはわからなかったが、ご機嫌な笑顔を浮かべていた。


「じゃ、俺はこれで。」


俺は面倒そうなので一人、早足に帰ろうとした。


ガシ


だが、そんな俺の服の袖を4本の腕が掴んだ。

振り返ると女性陣4人が俺の服の袖を掴んでいた。

顔を見ると4人とも「助けてください」と書かれていた。


「はぁ・・・ すみません。実はこの後、ちょっとパーティー内での連携やこれからのことについての話し合いがありまして・・・」


俺はグラッツさん達に嘘をついてなんとかその場を切り抜ける。


(あの5人は少々がっつき過ぎではなかろうか?もっと落ち着いて女性に話しかけた方がいいのでは?)


俺はそんなことを思いながら、後ろから羨ましそうに睨みつけてくる4人から女性陣を守りながらその場を後にした。

グラッツさん達から大分遠ざかった後で女性陣はようやく底で一息つくのだった。


「ずっと話しかけられ続けるのはなんだか落ち着きませんね。」


アーシェはそう言って髪をかきながら溜息をついた。


「私もなんだか、尋問を受けているようでした。」


アリスは胸を撫で下ろして深呼吸をする。


「僕。なぜか女の子に間違われてなかったかな・・・・」


セリスは自分の胸に手を当てて自分が男であることを再確認していた。

だが、その仕草は傍目には胸の大きさを気にする少女にしか見えないのが彼の残念なところだろう。


「あのカミューというやつ。ワシが好みじゃないくせに散々話しかけて来よって・・・」


どうやらカミューさんはリリスの容姿に興味がなかったらしく魔法の話ばかりしていたらしい。


「あんなやつのことはワシだってどうでもいいが、他の4人には積極的なアピールでワシだけ魔法の話ってどうなんじゃ?!」


リリスは大変お冠だった。

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