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第三話 Lv2

リリスのお説教を受けて俺は自分の状況の悪さを再認識することになる。

そもそもの原因はリリスが俺を拉致したことなのだが、


「それはそれ、これはこれじゃ!」


と言い張られてしまった。

俺は納得できなかったが、強力な魔法の力を持つリリスに敵わないので何も言えず、逆らう気にもなれなかった。


「で、俺でも安全に採取できる当てはついたのか?」


「まぁね。 でも、採取じゃ時間かかるかもしれないし、やっぱり狩りにしましょう。」


「は?」


武器が持てないからあきらめた選択肢を持ち出すリリスに若干「馬鹿なのかな?」と思うような目を向ける。

リリスはそんな俺の視線を気にかけずに パチン と指を鳴らして鞄を召喚した。

「おお!」と俺は驚きの声をあげてリリスの行動を見守る。


「お主、この世界で使う武器は何がいい? 武器も使い続けるとスキルがついてスキルレベルが上昇していくから使う武器は選んだ方がいい。 複数持つのもいいがそれは後々の方がいいの。 まずは一つに絞った方が効率がいいぞ。 ただでさえ人間は他種族と違い寿命が短いんじゃからの。」


(リリスの言うとおり、効率よくレベルをあげるなら一つに絞った方がいいだろうと俺も思った。しかし、いざ選ぶとなるとなかなか難しい。)


俺は優柔不断で物事を決めるのに時間がかかる。そのため、いまだにこの世界での名前も保留してしまっている始末だ。そんな俺を見てリリスは助言をくれた。


「そうじゃのう。 お主がのちのちなる職業に有利な武器がいいかの。戦闘系なら最初は下級職の 戦士 盗賊 魔法使い 僧侶 狩人の5種から選ぶからそれぞれの使える武器を説明しようかの。」


そういってリリスの戦闘系職業講座 下級編が始まった。


戦士 主に最前線で戦い 重装備で盾を持つことが多い

武器は 剣 刀 槍 斧 拳 鉤爪 トンファー など。

基本職業の中で一番筋力値が優れている。


盗賊 主に前線と中衛で戦い 軽装備で素早い動きで敵を翻弄

武器は 短剣 二刀流 鞭 鎖鎌 など

基本職業の中で一番敏捷値が優れている。


魔法使い 主に中衛から後方で戦い 布や絹製の装備で魔法で敵を攻撃する

武器は 杖 槍 短剣 鉄砲など

基本職業の中で一番魔力濃度が優れている。


僧侶 主に戦場に出ず、仲間の後方支援が仕事 仲間の回復や治療をしたりする

   武器は 槍 棍棒 杖 など あと盾を持って防御専門の人もいる。

   基本職業の中で一番魔力耐性が優れている。


狩人 主な戦場がない。 近距離から遠距離の武器まで使えるので選択武器で戦場が変化。

  武器は 斧 剣 短剣 弓 鉄砲 など 鉄砲は火薬式のものと魔法式のものがある。

  基本職業の中で一番耐久値が優れている。


「この世界にも鉄砲ってあるんだ。」


「と言っても火薬式の鉄砲は猟銃じゃから連射はできんがの。 ただ魔法使いは魔法式の鉄砲しか使わんが狩人は火薬式と魔法式どっちも使えるぞ。」


俺の素直な感想にリリスは補足説明をしてくれる。


(せっかく魔法のある世界なのだから魔法が使える職業がいいよなぁ~。

でも、リリスって魔法使い系だよな。俺と結婚したがっているから俺が生きるために戦う職業に就いたら絶対ついてくるだろうから魔法使いはダメだな。 となると僧侶か 狩人で魔法式の銃ってのもありだけど・・・ )


「棍棒にするよ。んで僧侶を目指す。」


俺は僧侶を選んだ。


「ほう、そうか。 まぁ、その方がワシも安心かの前線に出んでもいいし。 ま、僧侶になるにはそのための修業がいるから、とりあえず武器だけ渡しておこうかの。」


そう言ってリリスは先ほど出した鞄から長い棒を取り出す長さは俺と同じぐらいだろうか。

どう考えても、鞄より大きいのでどうやって入っているのか不思議に思い首を傾げる俺を見てリリスは「どうかしたかの?」と尋ねてきた。


「その鞄どうなっているんだ? 明らかにその棒が入らない大きさだろう?」


「ああ、これはマジックバックでの中は異空間なんじゃよ。 お主の世界に居る雪ダルマ型ロボットも持っておるじゃろう?」


リリスは「なせ知らないんだ?」的な表情で俺に帰してくるが、俺が知るわけない。

そもそもドラえ○○は猫型ロボットだし、実在しない。


俺は棍棒をリリスから受け取るがやはり重くて持っていられなかった。

俺は棍棒の端を地面につけて方にもう片方の端側を肩に乗せて体全体で支える。

棍棒と言ってもゴブリンが持ってそうな短いのじゃなくて、物干し竿みたいに長く両端が少し丸みを帯びて少しばかり膨らんでいる。西遊記の孫悟空の持つ如意棒的なあれだ。


「やっぱり、重くて持てないな。」


俺が愚痴をこぼすと、リリスがこちら側に片手を伸ばした。

次の瞬間なぜか体が軽くなった。

正確には持っていた棍棒が軽くなった。

最初は気のせいかと思ったが、手に取ってみると簡単にとはいかないが、何とか持ち上げることができた。


「ふふん。 ワシの強化魔法で能力値を底上げしておる。 これでなんとか戦えるじゃろう。 感謝せいよ? ワシがおらねばお主は地べたを這いつくばる羽虫と同等なのじゃからな。」


リリスは得意そうにそういったが、俺は「いや、それはない」と否定した。


「なんじゃとー! ワシのおかげで武器を手にする筋力を得たのにそれはひどかろう!」


「でも、お前のせいで俺は異世界でこんなことしなきゃいけないんだぜ? むしろ、お前が俺を助けるのは当たり前のことだろう?」


激昂するリリスに俺はハッキリと自分の意見を言う。

リリスも「そのことを言われては・・・」という表情で見てくるがそれ以上は何も言って来なかった。

俺は棍棒を手に取り何か獲物がいないか探しに行くことにした。


「おい待たんか! お主はこの辺の狩場を知らんじゃろうが。ワシが案内してやるから!」


リリスは獲物を探しに出た俺の前に出てきて俺を先導するように歩く。


「この周辺には魔物はおらんが、場所によっては魔物がおるし、林の中にはウサギもおるが狼も多い。お主には手におえんぞ。それにお主。棒術は使えるのか?」


「いや、全く使えん。」


「なら、棒術の練習に振り回しておるだけでもええんじゃないか?」


リリスの質問にあっけらかんと答える俺にリリスは半ばあきれ気味にそういった。


(なるほど、棒術の練習で経験値を得るのか。 安全だし、その方がいいか?

いや、その前に確かめねばならないことが・・・)


そう、俺は確かめなければならない。

この世界のウサギは俺の世界のウサギと同じなのかとか。

俺がこの世界で生きていくのに必要なのは戦闘系の職業でなのか。

生活系の職業だけで安全に暮らしていった方がいいのかとか。

俺が動物を躊躇なく殺せるのかとか。

向こうの世界で才能という現実に抗おうとせず、ただ逃げ出した俺が努力すればどこまでもいける世界に順応できるのかとか。

特に最後の二つは重要だ。

動物を殺せないのならば戦闘系だけでなく生活系の職業でも狩りや家畜を飼うなどの農業系の職業には就けないだろう。

この世界で順応できなければ、俺は才能など関係なくただ努力することをあきらめたクズになってしまう。


(そんなのにはなりたくない。しかし、元の世界での俺が実は単なる努力不足なだけの怠け者だったなんて事実を知ってしまったら・・・・


・・・俺は立ち直れるのだろうか)


そんなことを考えながらリリスの後について下を向いて歩いていると左手に誰かがそっと手を重ねてくる。

俺は顔をあげてその方向を見ると、前を歩いていたはずのリリスがいつの間にか俺の左隣を歩いた。

リリスは俺の顔を見るとニッコリと微笑んだ。


「大丈夫じゃ、お主の向こうでの頑張りはワシがこの目で見て知っておる。お主はお主の持つ才能以上に努力を重ねておったよ。 だからこそ、ワシはこの世界にお主を引っ張ったのじゃ、お主の努力をあざ笑う。あの世界はお主には相応しくない。 多分、こっちの世界の方がお主には合っとるよ。」


そう優しく微笑みながら、リリスは俺の手を取り腕に絡みついてきた。

恋人同士が腕を組んで歩くように絡みついて胸を押し当ててきた。

リリスは俺の腕に顔を擦りつけて「ふふふ♪」と笑いながらご満悦な表情をしている。


俺はというと、リリスの胸は無いに等しいのであまりうれしくはなかった。

おまけに、身長差が40cm近くあるので子供に左手にしがみ付かれているみたいで、重く、歩きにくいという結果だった。


(はぁ・・・ こんな見た目が子供の人に励まされるだなんて・・・ 俺って駄目だなぁ・・・

ん? 待てよ? 俺の努力を見てたってもしかしてかなり長期間覗かれてた・・・?)


などと思いながらも胸の中にあった不安感はいつの間にか消えていた。




一時間ほど歩くと山中の林の前までたどり着いた。

林の中も霧が立ち込めており、視界はあまり良くなかった。

いや、先程までいたほとんど何もない荒野に比べて林の中は空気中の水分が多いためか視界がさらに悪く7,8m以内しか見えず、木が乱立して存在するためさらに視界が悪く、木の根や小さな木々、草花などにより足場も悪い。

果たしてこのような悪条件化でウサギを追い回して仕留めることができるのだろうか。

家が多少田舎でも、基本道は舗装されているし、そうでない場所も更地のようにならされていて木の根があちこちに這っているような場所には早々行くことはないのだ。

そんな俺がウサギを追って駆け回る姿など自分でも想像できない。


(いや、迷うな! 元の世界に帰る方法がない以上。 これからこういうことはたくさんあるはずだ! やる前から弱気になってはだめだ!)


俺は顔を両手で叩いて気合を入れる。


(頬が痛いぜ・・・ 少し強く叩き過ぎた。 そういえば、魔物はここにはいないよな?

出合ったらレベル1の俺なんて瞬殺だよな・・・・)


俺は叩いて赤くなった頬を擦りながら悪い方向に物事を考えてしまった。

物事を悪い方向に考えた瞬間、足が震えだしそうになったが(リリスが安全だと判断したんだから大丈夫!)と今日初めて出会った人のことを頑張って信じることにした。

今日初めて会った人物を信じるなんて馬鹿げているが、この世界での俺の知り合いはリリスしかいないのだ。

俺は思考をどのようにしてウサギを探して殺すかという方向に替えた。


(まずは、どうやってウサギを探すかだが、ウサギのいそうなところに心当たりなんてないから手当たり次第に行くしかないだろう。

見つからなければ明日また来ればいいさ!)


そう思い一歩踏み出し林の中に入った。


「お主どこに行くんじゃ? もう準備は出来とるぞ?」


勇気を振り絞って前に出た俺に後ろから声をかけるリリス。

俺は振り返りリリスの方を見るとリリスの足元にはウサギが数匹一列に並んで立っていた。

何が起こったのかわからなかったが、俺は勇気を振り絞ってようやく踏み出した一歩を引っ込めてリリスのそばに向かいながら質問する。


「なんで、ウサギが並んで立っているんだ?」


「魔法で催眠をかけたからじゃ。 逃げも隠れもせんからあとはその棒で殴り殺すだけじゃぞ。」


俺の質問にリリスは平然と答えた。

リリスにとっては当たり前でごく自然なことなのだろう。


(う~ん・・・ 思っていたより状況が楽すぎる・・・ ゲームで言うところのイージーモードだな・・・)


難しいと思っていたことがあっさり済んでしまったため俺は何となく(こんな簡単でいいのかな?)と思ってしまい、つい立ち止まってしまった。


「どうしたんじゃ? まさか、強化魔法が切れたのか? 時間的にはまだまだ余裕なんじゃがの~」


立ち止まった俺にリリスが不思議そうに顔を傾ける。


「ああ、いや大丈夫。 棒で叩いて殺せばいいんだよな?」


俺が焦り交じりに尋ねるとリリスは「うむ」とだけいって頷き肯定した。

俺は棍棒を構えてウサギの前に立つ。


(ああ、とうとうこの瞬間が・・・ 生き物を殺すなんて小学生の時にカエルや虫を殺して以来だよ・・・ どうしよう・・・ 急に怖くなってきた・・・ 農業高校に行った先輩が鶏殺すの『すげ~怖かった』って言ってたの今ならスゲ~わかる。)


恐る恐るウサギに目をやるとウサギは俺を見ていた。

実際は催眠にかかっていて虚ろなのだが、ウサギの眼をあまり直視したことがないのでわからない。

ウサギの赤く輝く眼と目が合うと殺すことを躊躇ってしまう。


(これも生きるため!これも生きるため!)


俺が念仏のように心の中で念仏のように唱えているのを見てリリスが心配そうに俺に視線を向けてきた。

俺は視線に気づいてリリスの方を一瞬見るが、(ウサギを殺すことをせかされているのでは)

と邪推してしまい、すぐに視線をウサギに戻した。


ウサギたちは今も綺麗に一列に整列して俺に殺されるのを待っていた。


(いつまでも、こうしていても仕方がない。 でもその前に一つ確認しよう。)


俺はリリスに「殺したウサギはどうするの?」と尋ねるとリリスは「皮は売って肉は今夜の晩飯かの。」といった。


(よかった。 ただの動物虐待じゃなくて・・・ )


リリスの言葉を聞いて『食うためにしかたなく』という大義名分を得てようやく俺は棍棒を大きく振りかぶり一番右端にいたウサギの顔面目がけて棍棒を振った。


ゴシャ!


鈍く痛々しい音がした。

手からも今までに感じたことのない気色の悪い感覚が伝わってきた。

生々しく、それでいて無機質なものを殴った感触。

おそらく、生々しい感触は肉で無機質な感触は骨。

殺す瞬間、思わず目を瞑ってしまったからだろうか。

殴り殺した後もその感触が手にこびりつく。

俺は棍棒を持ち上げて目を開くとそこにはテレビでならモザイクがかかるような光景が広がっていた。

むしろ、モザイクがかかっていて欲しい光景が広がっていた。

スプラッタ物でみるような赤とピンクのコントラストがウサギの白い体毛にへばりつき、赤い肉片が飛び散っていた。


予想以上の光景に俺は思わず吐いてしまった。

リリスが慌てて俺の背中を優しく撫でてくれるが、俺は声を出すこともできず、無言のままリリスに感謝だけした。

もし、一人でウサギを見つけて追い回して殺していたら俺はこの世界での生活に絶望していたかもしれない。


(ウサギ殺したぐらいでこれか~・・・ 俺って神経細いな・・・)


リリスに用意してもらった朝食をすべて吐き出し多少気分が晴れたところで俺は口元を拭いたいとリリスに言うとリリスはマジックバックから布を取り出して差し出してきた。

俺はそれで口元を拭う。

俺が口元を拭い去るとリリスは竹筒の水筒を差し出してきた。

時代劇でしか見たことのない竹筒の水筒が最初なんだかわからなかったがリリスの「飲んだら多少楽になるぞ。」の言葉を聞いて竹筒に口をつけて飲んでみた。

先程吐いたばかりで気持ち悪かったのに飲んだらすごくすっきりした。

水筒の中身は水ではなくレモンジュースっぽい味だったがそれ以上は分からなかった。

もしかしたら、魔法のかかった飲み物かもしれない。


リリスのくれた飲み物のおかげで気持ち悪さはなくなったのだが、手に残る嫌な感触はなくならなかった。


(こんなことなら、弓か鉄砲にしておくんだった・・・・)


主に狩人の使う武器である弓や鉄砲ならば手に嫌な感触が残ることもなく、標準を合わせてただ放つだけでいい。

ゲーム脳な現代っ子である俺には都合がよかったかもしれない。

そう思いうなだれる。

なんとなく空を見上げると空中にまた画面が表示されていた。

俺はそれに手を伸ばして触れるとこう書かれていた。


お知らせ

レベルアップしました。 一般人 Lv2 


(ウサギ一匹でレベルアップですか・・・ まぁ、赤ん坊にはできないことだからそんなもんなのかな・・・)


そう思いながら俺は体を倒して空を見上げる。

そんな俺を見て心配そうにリリスがこっちを見てきたので、俺は出てきた画面をリリスに見せた。

リリスはレベルアップを喜べばいいのか俺を心配すればいいのかわからない複雑な顔をしていたが、「おめでとう」とだけ言ってくれた。


「リリスのおかげだよ。こちらこそありがとう。」


俺はそう返した。




俺は少し休憩しつつリリスにいくつか質問した。

この世界で、人里で暮らすなら一番何がいいかとか。リリスの職業である『仙人』になるのは難しいのかとか。 覚えておくとためになる豆知識とか。


「一番楽なのはワシの旦那になることじゃ。童貞も捨てられて欲しいものはワシの力で大概は手に入るぞ♪」


と言ってきたが却下した。


(というか、俺が童貞ってバレてる? そういうオーラ出ているのかな?)


と心配になったがとりあえず保留した。

あまり思い悩むとリリスとそういう関係になりそうだった。

リリスのことを悪いとは言わないが、「合法ロリ万歳!」的な感じがして嫌だった。


リリスとの話で分かったことはこの世界で生きるなら『流浪人』が一番いいらしい。

流浪人とは、魔物や魔獣を倒してそれの肉や皮、牙などを売って生きている人のことらしい。

流浪人という言い方は地方によっては『冒険者』 『探索者』 『ハンター』などと呼ばれているらしい。

呼び方が四つあるが一応こういう風に分けてあるらしい。


流浪人 → 旅をするのが目的でその旅費として未開の地で魔物などを狩る人

冒険者 → 未開の地に行くのが好きで旅をしている人

探索者 → 一つの拠点を中心に珍しいものや新しいものを探す人

ハンター → 金になるものを求めて未開の地に入る人。


未開の地=魔物や魔獣のいるダンジョン。

未開の地で手に入れたものはギルド(協会)が引き取ってくれるらしい。

そのほか、ギルドでは街中でできる仕事なども斡旋してくれるらしい。

ギルドは大陸中の国家の合同出資によって運営されているらしいので登録すると国境を渡るときに便利らしく、商人なども登録しているらしい。


ステータスは設定で非公開状態にできるらしく、それをしておくとステータスを開いても自分には見えても他人には見えないらしい。

それをせずに、赤の他人の前でステータスを見せると色々と面倒なことになるらしい。

弱いと思われるとカツアゲなどに遭いやすく、こいつ強いと思われると弱いやつにパーティーに誘われて寄生される。

この辺はオンラインゲームなどでよくあることなので、納得して俺は非公開状態にした。


最後に『仙人』だが、歴史上でリリスを含めて二人しかいないらしい。

遡れる歴史書が4000年ほど前までしかないらしい。

<伝説級>の職業にたどり着いたのは歴史上には十人ほどいるらしい。


(リリスってかなりすごい偉人なのかな? こりゃ、世界で初めて異世界を見つけたって話は事実かもなぁ~。)


俺はより一層、元の世界に帰ることをあきらめなければならなくなったが、不思議と絶望感はなかった。

元の世界に未練がないと言えば嘘になるが、『どうしても帰りたい』と思わないのは元の世界が好きだったとかやりたいことがあったという目標がなかったためだろうか。


(それとも、ただ逃げているだけなのか・・・・)


あまり考えたくないことを考えそうになってしまい、俺は武器を手に取り立ち上がる。

ウサギたちは未だ催眠状態のようでまだ並んで立っていた。

俺はもう一度、レベルアップのために棍棒を振るうことにした。

なんとなく2、3回棍棒を振るい感触を確かめる。

今度はただ殴るだけでなくもう少し動きを意識しながら殴ることにした。

そうした方が訓練っぽい感じがしたからだ。


そんな俺の意図を察してかリリスが不安気に俺を見ていた。

リリスは俺が『先程のようになるのでは』と思っているのだろう。

その可能性は大だが、何もしなければ進歩がないどころか駄目だったいう失敗と後悔だけが残ってしまい、結局リリスに依存した生活を強いられる。


(ヒモ生活とか、そんなみっともない人生は嫌し、何より人間には『慣れる』っていう良くも悪くもそういう習性があるんだから今はそのためにやれることをやるだけだ。)


そう思いを込めて俺は二匹目のウサギに棍棒を振るった。

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