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第十九話 アリス参戦

アーシェとダンジョン探索をした翌日。

俺達がいつものようにギルドに向かうと二人の見慣れた少女が俺達の前に立ちはだかる。


アーシェとアリスだ。

アリスはいつもの修道服だけでなくその上に金属製の防具を装備し、手には盾とメイスを持っている。


(これは・・・)


(面倒そうじゃの~・・・)


俺とリリスは二人の決意に満ちた表情を見て顔を見合わせて溜息をついた。


「今日もご一緒していいですか?」


「私もご一緒させていただいてよろしいですか?」


「却下。」


俺は頭を下げてお願いする二人を余所にその横を通り過ぎていく。

リリスは何も言わずに俺についてくる。


ガシ! 「そう言わずにご一緒しませんか?昨日教えた気配探知のスキルはまだ発現してないでしょう?また、教えてさしあげますから。」


アーシェは俺の服の裾を掴んで苦笑いを浮かべる。

アリス困ったような表情で俺とリリス、アーシェを交互に見ている。

アーシェは昨日の活動時に俺が行動の決定権を持つということを知っているのでリリスとは交渉せず、あくまで俺に対話を求める。


「いや、昨日の内に発現したぞ。」


そう言って俺は昨日、帰り道の道すがらに教えて貰った気配探知のスキルがステータスのスキル欄に増えたことを確認させるためステータスを見せる。


(そんな?! 発現まで早くても3日かかると言われているのに・・・ やはり、この方は侮れませんね・・・)


俺にはよくわからないがアーシェはものすごい驚いて俺の服の袖を離した。


「では、アリスから治癒魔法を教わるというのは?」


「いや、前に教会言って習ったしもういいよ。」


「え?!」


アーシェは疑問の声と共にアリスを見つめる。

アリスはただ無言で頷き俺の発言を肯定する。


「ええっと・・・・」


「じゃ、そういうことで。」


俺は右手を上げて「あばよ」のポーズをとって二人を置いてダンジョン内に・・・


ガシ!!「待って下さい! 私は置いて行って構いませんから、どうかアリスだけは連れて行ってもらえませんか?彼女は今日ダンジョンに潜るために教会の仕事を休んでいるのです。」


「アーシェ。私は大丈夫ですからもうやめましょう。アルトさん達も困ってますし・・・」


駄々をこねるアーシェをアリスが優しく諭すように嗜める。


「お前が事前に明日も俺達と一緒に行こうとか。アリスさんを連れてくるとか言っておけばいいだろう?」


「え、ああ・・・ ゴホン。 そうなのですが、失念してまして、申し訳ありません。」


アーシェは上品な笑顔を見せて誤魔化そうとする。


(意外とおっちょこちょいなんだな・・・)


俺は頭を抱えて二人を見つめる。

アーシェはものすごく残念そうっていうかその眼はまだ諦めていないらしくその瞳には執念の様なものが宿っている。アリスは「もういい」とは口では言いながらも大変残念そうに俺とリリスを交互に見ている。


「はぁ、パーティーリーダーは俺でリリスは極力手出ししないのが俺達のやり方だ。それでいいなら好きにしろ。」


俺はそう言って無理やりアーシェの手を払ってギルドの受付へと進む。

二人の少女の歓喜に満ちた声が背後から伝わってきた。


「ふふふふ、お主は優しいの~♪」


リリスは何がうれしいのか俺の横で微笑を浮かべて俺を茶化ちゃかした。


俺達はそれぞれダンジョンに入るためのアクセサリーを受け取ってダンジョンへと向かう。


「それで? 二人は以前から仲がいいのか?」


「ええ、私がこの町に来てからの付き合いですからもう1年になります。この町で師匠について修行していた際に知り合いました。」


「はい、あの頃はまだ半人前同士でお師匠様に怒られてばかりでして、二人でよく励まし合ったものです。」


アーシェの言葉をアリスは嬉々とした声で肯定する。


「人間と違って他の種族は長命じゃから年の近い子供はすぐに打ち解けるんじゃよ。」


リリスが俺にだけ聞こえる様にそう耳打ちしてくれる。


(へ~。長命だから人間以外の種族は皆同じに見えるけど、やっぱり同世代同士の方が気が合うのか。)


俺はリリスの言葉になんとなく納得する。


「そういえば、アリスはあと2年ほど教会で修行するんじゃなかったのか?」


僧侶は戦闘系職業にも関わらず戦うのが苦手な職業であるため他の職業よりも修業期間が長く、実戦時も初めからパーティーで入るのが普通らしい。


「はい、私もあと2年はそうしたかったのですが、アーシェがお二人と一緒なら安全だから共に行こうと誘ってくれて・・・ 神父様もあのガラシャワを討伐した方達とならば安心だと許可してくださったのでついて来ました。ご迷惑でしたか?」


「ガラシャワを倒したのはリリスだけだけどな。」


「いやいや、お主が居らねばワシはあそこで死んでおったぞ? 半分はお主の手柄じゃよ。」


「まぁ、そうなのですか?」


「俄かには信じがたい話しですね・・・」


アリスは俺に尊敬の眼差しを向け、アーシェは疑惑の瞳で見つめる。

二人の俺に対する感情が見て取れる非常にわかりやすい対比だ。


「お前、昨日は俺のこと少し尊敬してなかったか?」


「いいえ、私が尊敬するのはリリスさんの様な経験豊富な高レベル冒険者であって、決してあなたの様な優柔不断な低レベルな人ではありません。」


アーシェはどうやら下級職業全選択の自身より低レベルでリリスから高性能武器を与えられている俺が気に食わないらしい。

まぁ、普通に地道に努力している者からすると普通のことなのだが、パーティーを組んで欲しい相手に露骨にそういう態度を取るのはどうなのだろうか?


「まぁまぁ、もしかしたらアルトさんは冒険家を目指しているのかもしれませんし・・・」


アリスがアーシェを宥めているのをなんとなく、眼の端でとらえると同時に俺はアリスの話に出て来た『冒険家』という単語が気になった。


「冒険家って職業があるのか?」


「え、ええ。ご存じなかったのですか?」


俺の唐突な質問にアリスは首を傾げながら答える。


「おお、そういえばそんな職業もあったの。滅多に見んから忘れておったわ。」


リリスはそう言って今思い出したような口ぶりで呟いた。


「冒険家というのはあれか? 職業全選択で一定レベル以上で発現するというすべての能力値やスキル習得値が平均化された凡庸でつまらない職で、さらに最初から選択することができないという存在そのものが無駄な職業だよな?」


アーシェが俺の気になった職業をボロカスに言いながら説明してくれた。


(しかし、それは俺にとっては好都合な職種だな。全てが平均化された凡庸職というのは優柔不断な俺からすれば使い勝手がよさそうだ。)


俺はこの日、新たな目標を手に入れて張り切ってダンジョン内に入っていくのだった。




俺達はダンジョン内に入るとアーシェを先頭に俺、アリス、リリスと続いていく。

後ろから見ていて昨日と違いアーシェからは若干の余裕が見て取れる。

肩に力は入り過ぎてはいないが少し表情が硬い程度で見ていて昨日よりも少しだけ安心感がある。


「昨日の今日であそこまで変わるものなのか?」


「ふふふ。まぁ、いいライバルがおるからの。」


リリスはそう言って俺に不敵な笑いを投げかける。

その表情の意味は読み取れなかったが、気にする必要性もないと思い先を進むことにした。


「どっちに進みますか?」


最初の分岐点に辿り着いたところでアーシェは振り返って立ち止まる。


「右だな。」


「アリスがいるのにですか?」


俺の決定にアーシェは異議を唱える。

いくらリリスがいるとは言っても今回、はじめてダンジョンに入るアリスの安全を確保するために左のルートに進みたいのだろう。


「これだけのメンバーがいるんだ。右でも十分大丈夫だよ。」


俺はそう言ってこれ以上話す気はないと言った雰囲気で一人右ルートを進む。

リリスが黙ってそれに追従するので二人も仕方なく俺についてくる。


「強引じゃのう。そんなことでは女子おなごに嫌われるぞ。」


「だから、連れてきたくなかったんだ。人間の俺と違って二人はエルフ族なんだからゆっくり一年でも二年でもかけてから中に入ればいいだろう。そもそも、無理についてきたのは向こうの方だ。嫌なら二人で左に進めばいいだろう。」


リリスの俺をおちょくる様な態度にイラつきを覚えながら俺は先に進む。


俺の気配探知はかなり低いので相手にすごく接近しないと全く効果がない。

それでも、曲がる直前でボーンが待ち構えていることは察知できるので不意の一撃をあらかじめ予測する程度のことはできる。


(ただ、今回は・・・)


俺は曲がり角で待ち構えていたボーンの棍棒を避けて態勢を整える。

それを見て後方の二人も戦闘態勢に入るのを一瞥して確認する。

リリスはその二人の後方から両手を組んで見守っている。


「俺がボーンの攻撃を捌くからアリスは魔法、物理どっちでもいい攻撃してみてくれ。アーシェはアシストしてやってくれ。」


俺はアリスの戦闘能力を確認するためにボーンを見つめたまま指示を飛ばす。

二人は俺の指示に納得したのか「はい!」といい返事が返ってくる。


「光よ。我に加護を与えたまへ!」


アリスが何かの魔法を発動するために呪文を唱えた後。

俺がボーンの棍棒を受け止めている内にアッサリと側面に回ってメイスを振るい一撃でボーンを仕留めてしまう。

アリスの振るったメイスは光の加護が宿っているのか、白く光り輝いていた。


「ほう・・・ それは付加魔法か?」


「いえ、光の魔法を武器に宿しただけですので、付加魔法とは別物ですね。付加魔法は物体に魔法を付け加える魔法ですからその武器に半永久的に取り付ける類の魔法で習得はかなり難しいそうで、私には使えません。」


アリスの持つ光るメイスを指さして尋ねるとアリスから丁寧な解説が返ってきた。


「それは付与魔法ですね。付加魔法は熟練の魔法使いでなければ習得できませんから。」


アーシェは戦士なのに魔法について俺より詳しいようでさらに補足をしてくれる。


「ん?」


俺は少し疑問に思って自分のステータスのある項目を確認する。

『付加魔法 Lv1』

リリスの講義と日頃の練習により昨日発現したそのスキルを俺は見間違いで無いことを確認してからステータスを閉じる。


「先を進むか。」


気を取り直して先を進む一行。

その後、昨日辿り着いた広間につく間にアリスは遠距離からの攻撃魔法も披露してくれたので近距離と遠距離からの攻撃ができることが確認できた。


「僧侶って本当に戦闘に向いてないのか?」


広間に辿り着いた俺は一撃でボーンを仕留めていくアリスの鮮やかな戦いぶりに疑問を投げかけた。


「僧侶は光の魔法が得意じゃからアンデット系の魔物と相性がいいんじゃよ。それ以外の魔物に対しては先程まで使っておった魔法の威力では力不足じゃの。それに今はレベルが低いから正直ここまでの戦闘で魔力を使い果たし取らんか?」


「いえ、このメイスには魔法石がハメ込んであるのでまだ大丈夫です。ただ、あと4回の魔法の使用が限界ですね。」


リリスの質問にアリスは苦笑いで答える。

初めての戦闘で疲れているのか顔色はあまりよろしくない。


「よし、ここからの戦闘は俺とアーシェだけで行おう。アリスは回復用に魔力を温存。もし、危なくなったらその時は戦ってくれ。リリスはいつも通り待機でまぁ、適当に見守ってくれ。」


「「はい。」」「うむ。」


そこからは昨日と同じように俺とアーシェだけで危なげなく敵を蹂躙していった。

昨日よりもレベルが高くなっている上にここまでの戦闘での消耗がなかったのでお昼までには昨日と同じ広間の先の道に進み。

昨日よりも奥を目指すことにした。


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