第二話 レベル1
一応、読み直してますが誤字脱字あるかもしれません。
俺の朝食の要求にリリスは喜んで応えてくれた。
リリスは俺を柵に囲まれた敷地内にある小屋へと招き入れた。
小屋は案外大きくて中の広さは8畳ほどありそうだった。
小屋の中には布団が一組、部屋の右隅にたたまれておかれていて、真ん中には長方形の足の短いテーブルと座るためのゴザが敷いてあり、左側には水瓶や鍋などに火をくべるための土台や調理時に使うのであろう包丁や調理用のテーブル、木製の棚などが置いてあった。
部屋に仕切りなどはなく1Kか1LKかはわからないがそんな感じの室内だった。
(部屋の左側が台所で中央がリビング、右側が寝室の役割を果たしているのかな?)
「飯は今から作るのか?」
俺がおなかをさすりながら尋ねるとリリスは「いや、もうできておる。」といいながら木製の棚から食器を取出し台所にある鍋などから料理を取り出してテーブルに並べる。
手伝ってもよかったのだが俺はテキパキと動くリリスを見て邪魔になると悪いと思いゴザの上で胡坐をかいて座り待つことにした。
(普段は椅子に座っているから床に座るのはなんか落ち着かないな。)
落ち着かない理由が今日あったばかりの他人の家だからというのもあるのだろうが、椅子に座りなれた生活をしてきた俺には普段しない床に座るという行為が違和感の理由に思えた。
「さぁ、用意ができたぞ。」
俺がそんなことを考えながら家の中を見渡している間にテーブルの上に料理を並べ終えたリリスが俺の反対側に座り、一緒に食べようとするのだが俺は「その前に服を着ろ」と言いリリスに服を着ることを進める。
「ワシはお主と一緒に食事がとりたいのじゃ! これから夫婦となり一緒に暮らすんじゃからの♪」
前半は強く主張し後半はなるべく色っぽく言おうと努力しているが色っぽくはなかった。
見た目が子供だからだろうか。それともただやりなれてないだけなのか。
もしくは、冗談という線もあるが、そんな冗談をするために異世界から俺を拉致ったとは考えたくないので考えないことにした。
「服を着るのぐらい待っててやるよ。その格好だと汁物がこぼれると火傷するかもしれないぞ。」
そういって俺は目の前に並べられた食事に手を付けるのを我慢してリリスの着替えを待つことにした。
リリスは「お主がそういうなら」と言い右隅に行き木製の棚を開けて服を取り出し着替える。
先ほどは壁かと思っていたが右隅の壁際には天井までの高さのある棚が壁一面を覆い尽くすように置かれていた。
「これでいいかの。」
着替え終わったリリスを見ると仙人というよりも魔法使いっぽい服装をしていた見た目の幼さとフリルが所々にあしらわれた格好は魔法少女と言われればそうなのかな。と思う程度に可愛く似合っていた。
「似合っているな。」
これからも服を着続けてもらった方がありがたいので俺はリリスの服を褒めることにした。
服装に興味がないからどうでもいいのだが、服を着ていないのは大問題だ。
「ふふふん そうだろう。」
リリスは俺の言葉に気をよくしたのか笑顔で席に着く。
俺もそれを見て箸を手にする。この世界でも箸は存在するようだ。
俺は「いただきます。」と言わずに食事を始めた。もともと元の世界でも面倒なので言っていなかったからだ。リリスも何も言わずに食事を始める。
朝食のメニューはご飯に野菜の入った汁物(コンソメスープっぽい味付け)に煮魚だ。
ご飯の触感はいつもと違って新鮮だった。コンソメスープっぽい味の汁物も食べたことのない野菜の味が興味深く、煮魚は白い身の肉にタレの味がしみ込んでいて美味かった。
「ごちそうさん。」
「もういいのか?」
朝食はいつも軽くしか食べないのでおかわりしなかったからだろうか。朝食を食べ終えた俺にリリスはそう尋ねてくる。
「朝はいつもこんなもんだ。」
俺がそういうとリリスは「それはいつもの日常を送る場合じゃろう?」と首を傾げながらいう。こちらの世界で活動するのだからもっと食べておいた方が言いたいのだろう。が、俺はとりあえず、こっちの世界で何かをするつもりはなかった。
何もしない自堕落な生活を送りリリスに嫌われるためだ。だが、リリスは俺の考えを読んだのか予想外の言葉を吐いた。
「まぁ、これからワシにヒモとして養われるのじゃからそれでもいいかの。」
(やっべ~。自堕落な生活で幻滅させる計画が早くも頓挫した。)
まさか、ヒモ生活を容認されてしまうとは予想外だ。
「くそ・・・」
そう言いながら俺は立ち上がり外に出ようと扉に手をかけ開こうと力を入れたのだが・・・
扉は全く動かなかった。
どう見ても木製の扉なのにまるで金属でできているかのように重くビクともしない。
(おかしい、横にスライドする簡単な仕組みの扉なのになぜ・・・ そういえば入るときも扉の開閉はリリスがやっていたな。もしかして、魔法使いじゃないと開かないとか?)
俺は振り返りリリスに質問しようとするが、テーブルの反対側にいたリリスはそこのにいなかった。
次に台所方向に目をやるがそこにもおらず、最後に布団のあった右方向を見ると布団を敷いているリリスの姿がそこにあった。
リリスは俺の視線に気付いたのか振り返りニッコリと笑った。
リリスはなぜか頬を赤く染めていた。
俺はその笑顔に妙な寒気を背中に感じてリリスから1,2歩下がって尋ねる。
「俺、さっき朝食を食べたばかりなんだけど・・・ なんでリリスは布団を敷いているんだ? もしかしてこっちの世界は今夜とか?」
霧が深くてわからなかったがこの世界が夜であり、リリスが眠たいんだという希望にかけての質問だしてみた。
「いや、今は朝で時間はだいたい9時ごろかの? 布団を敷いておるのはこんな人里離れた山奥ではあまりやることがないからの。 男女二人、一つ屋根の下で行うことと言えば一つであろう?」
リリスは布団を敷き終わったのか。
おもむろに自身の衣服に手をかけて脱ごうとする。
俺はそれをけん制するために声をあげて制止した。
「ちょっと待て!」
「?? どうかしたかのう?」
不思議そうに首を傾けて尋ねてくるリリスに俺は話題をそらそうと質問した。
「と、扉が開かないんだけど、なんでなのかな?」
俺の質問にリリスは俺の頭の上の方を指さして「『注意』が出ておるじゃろう」と答えた。
それを聞いて俺は自分の目線を少し上にやる。
そこには、先程リリスがステータスを見せてくれたのと同じように空中に映像が出ていて『注意』と書かれていた。
俺はそれに指を伸ばすと『注意』と書かれた表示の下に新たな画面が出てきた。
画面の内容はこうだ。
注意
必要筋力値に達していないため扉を開くことができません。
「必要筋力値って何?」
俺が視線をリリスに向けて尋ねるとリリスは「あ~・・・」といいながらバツが悪そうに視線をそらして黙り込んだ。俺は説明を求めて顔に張りぼての笑顔を作りリリスに近づき無言の圧力をかける。
笑顔での無言の圧力の効果は身をもって体感していたので試しにやってみたのだが効果は絶大だったようで、俺の顔がリリスの顔付近まで近づくとリリスは顔一面に大量の冷や汗をかいていた。
「いや、こんなに近くで笑顔で見つめてくれるのはありがたいのじゃが。 そのこの距離では現状を説明しづらいというか・・・」
リリスは両手で俺と自分の顔との間に壁を作り、目線を合わせないようにそっぽを向いてそう応えた。
「わかった。 話を聞こう。」
俺はリリスから距離を取り食事の時に座っていたゴザの上に座り直した。
リリスは俺が座ったのを見て正座して座り直して話し始めた。
「まず、ステータスの確認方法をお主に教えようかの。頭の中で『ステータスオープン』と念じてもらえるかの。それで、出てこなければ声に出して言ってくれればお主のステータスを見ることができるはずじゃ」
俺はリリスに言われるまま頭の中で『ステータスオープン』と唱えた。
すると先程リリスに見せてもらったものより多くの情報が空中に画像として表示された。
名前 名前を入れてください
年齢 15歳
階級 一般人 Lv1
体力 70
魔力量 0
筋力値 9
耐久値 10
敏捷値 7
魔力濃度 0
魔力耐性 0
危機対応能力 13
技量 1
所有スキル 0
(名前のところに『名前を入れてください』ってどういうこと?
あとは・・・魔力関係オール0だな・・・ てか、軒並み低いな。まぁレベル1だしな。)
俺がそんなことを考えながら画像を見ていたらいつの間にかリリスが土下座をしていた。
なぜかは分からないがリリスはきっと大きな失敗をしたのだろう。でなければ、土下座をする意味がない。
俺はとりあえず、リリスの話を聞くことにした。
「アハハハハ・・・ 実はのう・・・」
リリスは頭をかきながら申し訳なさそうに説明を始めた。
リリスが言うには本来なら俺の年齢では一般人Lv16以上あるのが普通らしい。
なぜならば、この世界の住人は生まれた時が一般人Lv1で20歳までは何もしなくても年齢を重ねる毎にレベルが1ずつ上がっていくからだ。
無論、狩りなどで動物や魔物を倒したりすればその分早くレベルアップすることもできるし、畑を耕したり採取などでもレベルアップが早まることがあるらしい。
まぁ、動物や魔物を倒したり採取したりするとゲームでいう経験値的なものが手に入るのだろうと俺は解釈する。
問題は、俺の場合は異世界召喚で途中からこの世界に来たためにこの世界での経験値は皆無なので、生まれたばかりの赤ん坊と同程度の能力しかないそうだ。
「いやまぁ、本当に赤子と同程度ならお主は立つこともできんからの。まぁ、その辺はある程度の便宜で補正がかかっておるのかもしれんが、この世界に一定以上の影響を与えようとするとその能力値による補正を受けてしまうようじゃの。」
リリスはあくまでも自分の推論を語る。
この世界には今まで異世界を見つけたものの記録と異世界から来たものの記録が全くないので俺の存在はかなりイレギュラーらしい。
「おいおい、マジかよ・・・」
朝食時に箸や食器を持つことができたのは世界への影響の範囲外だったのか。
それとも、ただ単に筋力値が足りていただけなのかは分からない。
(でも、このままじゃまずいよな~)
扉も開けられないのではかなり不便だ。日常生活に支障をきたしてしまう。
世界への一定以上の影響がどこからどこまでの範囲なのかは分からないが、日常生活に支障のないレベルには達しておいた方がいいだろう。
でなければ、リリスに依存した生活を送る破目になる。
残念ながら俺は付き合う気のない女性に依存した生活に耐えられるような性格をしていない。
「とりあえず、レベル上げをしないとなぁ~。どうすればいいんだろうか? あと、名前の欄に『名前を入力してください』ってなっているのはなんでなんだ?」
俺の質問にリリスは首を傾げながら困ったように答える。
「レベル上げか~。 なんせ異世界人はワシが知る限りお主が地上初じゃしの~。 おまけに、赤ん坊にレベル上げをさせた例なんて存在せんからわからん。 名前の方はおそらく、この世界に来てお主がまだ名前を名乗ってないから世界がそれを認識してないのだろう。今なら偽名での登録も可能じゃぞ。 というか、ワシはそれを進める。 こっちの世界の文字と言語は、お主の世界の文字と言語は同じじゃが、漢字を使った名前の人間は存在せんからの。 漢字を使った名前をしとるだけで生まれを疑われることになるじゃろう。 カタカナで短い名前で登録した方が便利じゃぞ。」
「そうなのか・・・」
リリスの言葉を聞き俺は顎を手で擦りながら少し考えにふけることにした。
(レベル上げの方法がわからないのは仕方がないだろう。赤ん坊に何かできるわけがないのだから仕方がないだろう。 名前の方は好きな名前を決められるのか。 ありがないようなありがたくないような・・・ )
親からもらった名前をありがたいと思うか思わないかは人それぞれだろう。
もっとかっこいい名前や漢字を使ってほしかったとか。逆に画数が多く難しい漢字を使っているため書き難くて嫌だとか。人によっていろいろあるだろう。
ただ、いざ自分で名前を決めるとなると難しいものである。
しかもカタカナで横文字風な名前だ。変にかっこつけると厨二病っぽいような気もするし、シンプルな名前にすると面白みがないような気もしてくる。名前を決めるというのはなかなか難しいものである。
「名前はとりあえず後回しにしてレベル上げをどうするかだな・・・」
「そうじゃな。 とりあえず、ワシと初体験といかんか? 貴重な経験じゃから経験値がたくさん入るかもしれんぞ?」
俺の宣言に対してリリスは服をはだけさせながら誘うようなポーズをとるが俺は無視を決め込む。
「一番手っ取り早そうなのは狩りで何か獲物をしとめることだな。何か武器になりそうなものはないか?」
そういいながら、部屋の中に武器になりそうなものを物色する俺にガックリしたリリスはは口をとがらせて何かをボヤキながらはだけさせた服を着直して棚から武器になりそうなものを取り出す。
青銅の短剣 小型で木製の弓と矢 手投げ用の短めの槍などを出してくれるが小型の弓と矢以外は筋力値不足で持てなかった。
「まぁ、弓と矢が持てるのであれば問題あるまい。その辺のウサギでも仕留められればすぐにレベル何ぞ上がるじゃろう。」
「いや無理だな。」
リリスの感想を俺はバッサリと否定した。「なんでじゃ?」とリリスはこっちを向きながら聞いてきたが俺の姿を見た瞬間その理由を察して「ああ・・・」と小さくうめき声をあげる。
弓を射たことどころか、初めて触ったので狙って撃てない。
という理由もあるはずなのだが、それ以前の問題が俺の前に立ちはだかった。
俺は弓を持ち矢を構えて弦を弾いてみようとしたのだが残念ながら弓を引くことができなかった。理由はまたも『必要筋力値が足りません』だ。
「何とも前途多難だな。」
俺はそうつぶやいて弓と矢を置きまた扉の前に立つ。
リリスはそれを見て俺が外に出ようとしていることを察して立ち上がる。
俺の代わりに扉を開けてくれようしているのだろうが俺はそれを手をあげて制止した。
「俺はLv1だが、赤ん坊じゃない。扉の取っ手を持つことはできるんだから・・・」
俺は扉の取っ手部分に両手をかけてスライドさせる方向に体重をかける。
本来なら、重い扉や綱引き時に体重をかけて物を引っ張る方法だが今はこうしないと木製の扉も満足に開けないというありさまだ。
現状が特殊な状況下であるため仕方がないのだが何とも情けなかった。
体重をかけたことで扉は少しずつ開いていく、俺はそれを何度か繰り返して何とか扉を開けることができた。
「ふぅ。 扉開けるだけで一苦労だな。」
俺は開け放たれた扉から外に出て霧の立ち込める外へと出た。
リリスも俺に続いて外に出てくる。
「それでこれからどうするんじゃ?」
扉を閉めて俺の方を向きなおしてリリスはそう尋ねた。
「とりあえず、狩りは難しそうだから採取か畑を耕すかだけど。多分、農具は持てないだろうから採取したいんだけど・・・」
そういってあたりを見渡す俺だが、霧のせいで10m以上は見渡せそうもないし、この辺の土地には枯れた木々が所々にあるのしか見えない。
「ここっていつもこんな霧が深いのか?」
「ああ、ここは霧が年中出ておるよ。 余生を魔術の探求と趣味に投じるため人里離れた人の近づかぬ土地を選んでおるからの」
(本当はこやつと結ばれるために、ワシに依存せざるを得ない環境を選んだことは黙っておこう。)
リリスの考えなど露知らず、俺はリリスの言葉だけを聞いて採取が難しいからどうしようかと川のある方へと歩き出す。川に住む魚は無理でも小さなカエルや虫などを捕まえればレベルアップのための経験値にならないだろうかと思ったからだ。
川に近づき周辺を見渡してみるが特に何もいなかった。
川の中では魚が泳いでいる。川の深さはそれほど深くなさそうだが、川に入って素手で魚を捕まえるのは難しそうだ。
「リリスこの辺で何か採取できそうな場所ないか?」
俺の質問にリリスは右手で頭をかきながら目を閉じて考える仕草をとる。おそらく、俺の安全や能力を考えてなるべく簡単に採取できる近場のポイントがどこかを考えているのであろう。
(こやつをワシに依存させるためにはレベルをあげない方が好都合じゃ。
だから、助言などを行わない方がいいんじゃろうが・・・。
色々とレベル上げの手伝いをした方が好感度が上がってアヤツとの関係がうまくいくかもしれん。
なんせ、ワシは異次元を覗く能力でアヤツのことを知っておるが、アヤツはワシのことをよく知らん。
ここは好感度アップ狙いで手助けするべきか。依存させるためにしないべきかじゃが・・・。
まず、成功を失敗をした場合をシュミレートしてみよう。
手助けしない。
成功→ 一人で勝手に自立。ワシのもとを去り一人で去っていく。
失敗→ しかたなく、ワシに依存して生きる。が、何か機会があればワシから去っていく可能性大
手助けする。
成功→ ワシに感謝し好感度アップ これからもワシを頼りにする可能性あり
失敗→ 懸命なアシストに感謝し好感度アップ ワシに依存する上に離れていく可能性低下
うむ。ここは手助けじゃな。)
リリスが長いこと考えているみたいなので俺は枯れた木の枝を掴んでぶら下がることにした。決して暇で遊んでいるのではなく、木の枝を体重をかけて折るためだ。
俺はなるべく、折れそうな気の枝を探してそれに飛びつき掴んだ枝は俺の体重で下にしなって折れそうになるが、なかなか折れてくれなかった。俺はそのまま棒体操の選手のように体をゆすって遠心力も加えて棒をへし折ることにした。
ボキッ!
両足が腰の上に行くぐらい大きく体を揺すったら、枝は予想通りに折れてくれた。
ただ、足をあげてゆすった瞬間に折れたのでうまく着地できそうにない。
おそらく、尻餅をついてしまうだろうが(まぁいいか。)と俺は深く考えなかったのだが・・・
「お主何をしておる!!」
声の方に目をやると俺のもとに必死の形相で駆け寄ろうとするリリスの姿が見えた。
ワシが手助けすることを決めて目を開けると木の枝にぶら下がり体を揺すっておるワシの未来の旦那の姿が見えた。
次の瞬間には木の枝が折れ、落下を始める未来の旦那。
ワシは全力で駆け出した。
おそらく、あの状態では自分では着地できないだろうと踏んだからだ。
本来ならば、大の大人が木から落ちて尻餅をついた。
それだけで終わってしまう話だろう。アヤツもそう思って迂闊な行動に出たのだろうが、実際は着地に失敗すると死亡の恐れがある危険な行動である。
(アヤツの能力はLv1 つまりは、赤ん坊と同程度の能力しか持っておらん。それが木から落ちたら下手したら死ぬぞ!)
リリスの考えは間違っていない。
体は大人でも能力が赤子と同程度の異界から拉致された少年は赤子並みに弱い。
そんな少年が180cmの体から両手を伸ばしてさらにジャンプして飛びついた木の枝から落ちた。しかも腰よりも高い位置に足が来るように体を大きく揺すってだ。
それは、1m以上の高さから赤ん坊を地面に落とすことに等しい。
リリスは無詠唱で飛翔魔法を唱えて高速で移動して見事に地面に着く前に少年をキャッチすることに成功した。
リリスが近づいてくると思った瞬間。リリスは俺のそばにいて俺をお姫様抱っこしていた。
まさか、こんな小さな女の子にお姫様抱っこされるだなんて思ってしまった俺は驚いてしまう。
おまけに、俺にはリリスのいた場所からから俺のところまで来るまでの5,6mの距離をどう移動したかが目に追えなかった。
(これがレベル差か・・・)
そう思いながら俺はポカンと口を開けてリリスを見ることしかできなかった。
「この馬鹿者! お主は死にたいのか!!」
リリスは俺を見て一瞬安堵したかと思うとそう俺を怒鳴りつけた。
俺にはその理由がよくわからなかったら「は?」としか言えなかった。




