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青春?←ラジカル!

作者: 返歌分式

 我輩はマスコットである。

 名前はまだ無い。

 我輩は今、路地裏でニャーニャーと鳴いている生き物にこずかれておる。

 身体を繋げる糸がどんどんとほつれていくさまを見ていることしかできない我輩は、ここが人生の終わり目かと悲観していた。

 立って逃げようにもこの生き物は動くものに敏感らしく、なかなか逃げれん。


 最終的にはニャーニャー鳴く生き物に咥えられて街を優雅に散歩しておる。

 我輩を咥えている生き物はここらのボスらしく、同じ姿をした生き物が後ろをぞろぞろと着いてくる。

 これはこれで面白いのかも知れぬが、なにぶん、唾液が布に染み込んで気色が悪い。

 さて、どうしたものか。


 考え込んでいると、我輩を咥えていた生き物がいきなり威嚇をし始めた。

 シャーッと口から威嚇の声を上げておるので、支えを無くした我輩は地面に落ちる。

 ボスに続いて、他の奴等もシャーッと威嚇し始めた。

 何が起こっているのか理解しえない。

 状況を理解しようと周りの音に気を配ると、上の方からハァハァと言う荒々しい息遣いが聞こえ、ぎょっとしそちらを見やった。



「ね、猫…………」



 どうやらただの変態らしい。

 我輩が理解しえる言語で喋るということは、人間なのだろう。

 シャーッと威嚇する生き物――猫というらしい――に、ハァハァと興奮しておる人間。

 これはなんの光景か。

 我輩は何の生き物にも害を与えず、日々を暮らしていた中では一度も遭ったことはない出来事に困惑していた。



「ね、猫ちゃん……大丈夫だよ、僕はなんの危害もくわえないから……」



 ルールルールールルーと言い始めた人間に、我輩はどうしたらよいのか、ついには分からなくなってしまった。

 何故周りの、通り過ぎる人間はコイツを止めんのだ。放置してよいのか。

 我輩は己に向けられているわけではない感情に、人知れず身を震わせている。

 そして我輩は心の中で嘆願した。誰でもよいから助けてはくれないものか。



「ハァハァ……ぬ、ぬこ…………」



 人間は存外気色の悪い声色で猫に語りかける。

 威嚇しても怯まない、むしろジリジリとにじり寄って来る人間に恐れをなしたのか、ボスを中心にして、ニャァォと一鳴きして猫共は逃げて行きおった。



「あぁんぬこタン!! なんで逃げるんでまぁぁ!!」



 猫に逃げられた人間は、まるで世界の終わりをたった今目にしたような叫びをあげて、コンクリートの地面に手をつく。

 我輩はこの人間の体勢に見覚えがある。捨てられていた本に描いていたのだが……確か、『もうダメポ』だったか……。

 周りの人間共はそんなダメ人間をチラチラと見、ヒソヒソと隣の者に陰口をしておる。

 ……やはりそうなのだな。この人間は、そういう人種なのだな……。



「ぬ、ぬこにフラレタ…………もう生きていく自信が…………ん?」



 ぎくっ



 まさにそんな擬音が似合うほどに、我輩は驚く。

 ダメ人間が、あろうことか我輩を見ているではないか。

 こ、これは危うい……。



「ぬこタンの……落し物……」



 我輩は確かに落とされたが、なにもあの猫共の所有品では無い。

 早々にどこへなりと行って欲しいものだ。



「と、届けなくっちゃね…………」



 ぬっ!? 何をする!!

 ダメ人間はコンクリートの地面から手を離すと、我輩を掴んだ。

 目前まで持ち上げられ、我輩はその目を見た瞬間、戦慄した。



――な、なんと恍惚とした目をしておるのだ……。



 先ほどの猫より危ないかもしれん。我輩は人間の手から逃れようと軽く身体を捻る。が、それを察知したわけではないのだろうが、力強く握りこまれてしまってもがくにももがけない状態になってしまった。



「ぬっこタンの落し物~♪」



 人間はそう鼻歌交じりに言い、スキップをしだした。

 我輩の身体――主に頭――もそれにあわせるようにがくがくと揺れる。



「さーて、僕のマイホームに行こうかマイスイートハニーの落し物!」



 その言葉にガガンという衝撃を受ける。そして後からじわじわと虫に食われるが如く、生まれて初めて味わう絶望に頭を支配された。

 道中、なんとか人間の手から逃れようとした我輩の健闘も虚しく、我輩はコヤツの根城へと連行されるのであった。






ずっと前に書いた小説を発掘したので、それを手直しして晒し。

長編予定だったのものですが、学園物とかどうやって書いたらいいか分からずに断念しました。


ここから妄想の産物のあらすじ的なもの。

猫好き変態な高校生君は、学校では眼鏡をクイッってしてるようなインテリである。

猫好きというのを隠しているが、友人のヤンキー君がもしかしたら猫好きかもしれないと察知し自分は猫が好きだと告白するが、言葉が足らず端から見たらヤンキー君に告白しているようなそんな状況に。

悩みに悩みぬくヤンキー君 (ノンケ)。それに嫉妬する幼馴染(女)。電波な同級生(女)に「神のお告げです」と騙され翻弄される猫好き眼鏡クイッ君。

マスコット我輩君はそんなドロドロとした関係を生温かい目で見守るのであった……。



大体そんな話。

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