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広瀬理人の日常的被弾劇  作者: どんまち
広瀬理人と恋心
19/35

人の個性はあまりにも大きい

 俺が自転車を降りて軽く挨拶をすると、みそねは怪訝そうに顔をしかめた。

「ヒロはもったいないことするね〜今日は牛丼だったのに……」

「だから朝飯からそれは重いって!」

 全く――どういう胃をしているんだよ。

 そして黒蝉も何普通に牛丼食べてんだよ。

 さっきまでだいぶ気持ちが沈んでいたというのに、急にどうでも良くなるような気がした。

 それが和気藹々とした日常というやつなのだろう。


「それより――」

 黒蝉が切り出す。

「その子は一体何者かしら」

 アリスへ鋭い視線を送った。

 彼女は思わず目を潜める。

「あぁ……入学手続きが遅れたみたいでさ!留学生なんだよ、日本の文化わからないだろうって、いろいろ頼まれてんだ」

 ふーん、と黒蝉は相槌を打つ。


「嘘でいいのよね?」

 完全に見抜かれていた。


 だが、彼女はそれ以上追求することもなかった。

「まぁいいわ――あなたも食べる?」

 黒蝉は牛丼を持つ手をアリスの方へやったが、ハッとしたように。

「《英語》」

 多分だけも――英語に言い直した。

 アリスは照れくさそうに笑って、

「日本語はわかるから大丈夫ですわ、それはぜひいただきます」

「「お嬢様口調……?」」

 みそねと黒蝉は同じような反応を見せた。

 まぁ、そりゃそうだろうな。


 しかしアリスは特に気にしない様子で、もらったスプーンで牛丼を一口食べた。

 そして黒蝉に返す。

「そう……ですわね――とても……」

 彼女は言葉に詰まらせる。

 ――口に合わなかったのかな?

「形容し難いほどに……美味しいですわ」

 行儀のいいやつなだけだった。

 返された黒蝉も黒蝉で少しポカンとしていた。

 にしても、目を輝かせていてなんとも可愛らしい――高級なものには慣れているだろうに。


「まぁ――それはともかくとして」

 みそねは咳払いをすると話を変えた。

「宿題写させてくれないかな……?ヒロ」

「ダメ」

「そこをなんとか……!」

 宿題といっても、中学生の復習がポツポツ出されたりしただけだった。

 計画性のないやつはあまり好きじゃない。

「どうせまたゲームをしていたんだろ?」

「うっ…………まだ会って5日くらいしか経ってないのに――」

 彼女は悔しそうに唇を噛んだ。

 そんな顔をされても見せてやるわけがない。


 ――ピコン。

 スマホの通知が鳴ったみたいだ。

 二つ聞こえた気がする。

「あぁごめん、俺だ」

「私もね」

 俺と黒蝉――生徒会のことだろう。

 いつのまにかできていた生徒会のグループチャットだ。

 天野からのチャット。

『やーやー!生徒会の諸君!本日は部活動や役職についての会議がある!一年生のみんなに仕事として説明したちょっとした仕事内容色々――の部分だな』

 役職とか一番大事まであるだろ!?

『放課後に生徒会室だ!用事があるならそれまでに連絡を求む!では!天野からであった!』

 なんでこんなビックリマークが過密なのか。

 全く不思議な人だな……。

「生徒会ですって!?広瀬さん生徒会なんですか?」

「あぁ……そうだけど」

 アリスはそのチャットの内容になぜか食いついた。

「私いってみたい!学校の長とやらをみてみたいんですわ!」

 長って……。

 彼女は想像の倍くらいグイグイ迫ってきて、少しのけぞる。

 とはいえ、その探究心には好感が持てた。

「黒蝉――連れてっていいと思うか?」

「私は何も言わないわ、ただ天野さんには許可を通しておくのよ」

「OK」


そこで話を切り上げ俺たちは学校へ向かった。


 そしてみそねは宿題を忘れた。

「くそー!ヒロが見せてくれれば!」

 なんてことをほざく彼女であった。


 ――放課後。

「この留学生のアリスさんが――生徒会の活動を気になるみたいで、少し見学といいますか……」

「いいよ!というか入れちゃおうよ!」

 一応というか、ダメ元で天野先輩に聞いてみたのだが、予想の斜め上の返事が返ってきてしまった。

 本当に大丈夫かこの生徒会……。


「メリア・アリスと言います!よろしくお願いします」

 初めて会う日本人ばかりだろうし、本人の緊張は少し気掛かりだったが、彼女は大丈夫そうだった。

 なぜだか俺は懐かれているようで、アリスを愛でようとするギャル達に敵意を向けられかけた。


――話を戻そう。


「俺にとっても知らない人だらけなんだよな……」

 会議室にはすでに10数人がすでに席についていた。

 大型の机の周りを囲うように椅子が置かれている。

 俺は黒蝉とアリスと共に、ダニエルの隣へと座った。


「《英語》」

「『わかるぜ』とのことです」

 ダニエルはアリスの方を物珍しそうに見た。

 俺はアリスに2人を紹介しておく。

「なるほど!黒蝉さんにダニエルさんですね!よろしくお願いします!」

「《英語》」

「『日本に来てから外国人と話すの初めてかも』とのことです」

 しかしそれを聞いたアリスは小首を傾げた。

「《英語?》」

 彼女は何かを言う。

「……よくわからないのだけど、多分スペイン語ね」

 呆れる様子の黒蝉――流石に翻訳はできなかったようだ。


 おそらく2年生と、まだ会ったことのない3年生の先輩方だろう。

 全員をひとまず見回してみる。

 人間ってのは――意外と個性が大きいものなんだな……。

 とにかく俺はそう思い知らされた。


「じゃあまぁ……会議を始めます」

 会議の内容としては、改めての自己紹介に新しい役職決め、そして部活動についてだった。


 自己紹介をされたものの――人が多くあまり頭に入ってこなかった。

 ……まぁ、それらをフォーカスするのはセリフが出てきてからでいいでしょう。


 そして新しい役職決めはアリスが来たこともあり後日となった。

 もう入ることは決まってるのね。


「では次に部活動について……部員の少なかったり活動の報告がなかったりする部活――それに私たちは訪問しないと行けないんだよねぇ」

 天野先輩は、ホワイトボードにいくつか部活動の名前を書いた。

 ロック音楽研究部。

 漫画アニメ研究部。

 ソフトボール部。

 英語部。

 現状としてこの四つが部員数を満たしていないみたいだった。


「今日の会議はここまでとして、この部活動らへ訪問して、脅しに行く感じです」

 会議の内容をだいぶ割愛してしまっているが、一応真面目な雰囲気が作られてはいた。

 天野先輩も真面目だった。

 ――やたらと声がデカかったり、黒蝉とはまた違うカリスマタイプだったり……先輩方は個性派揃いのようだ。

「人のこと言えないけどなぁ……」

 俺は誰にも聞こえないように呟いた。


 学年ごとに分かれることとなり、俺たち一年生ズはロック音楽研究部へ訪問することとなった。

 なんと部員が1人しかいないらしい。


 メンバーは

 広瀬――つまり俺。

 黒蝉――武力のある女。

 ダニエル――地味にガタイが良い。

 アリス――お嬢様口調。

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