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広瀬理人の日常的被弾劇  作者: どんまち
広瀬理人と生徒会
15/35

姫様少女

 そして、俺が目を覚ましたのは朝の8時ごろだった。

「今日は……土曜日か……」

 遅刻したなと一瞬ひやっとするのを超えて諦めかけた。

 高校生活初めての休日――何より驚きなのはここまでで30000文字以上かかっているということだった。

 一日を書くのによくも5話も使えるよなぁ。

 ――メタネタはここまでとしよう。

「おはよ、お兄ちゃん」

 なんと――今度は俺が快に押し倒されていた。

「仕返しだよ!」


 いきなりの急展開……しかし、

「フン、俺がそんなものにドキドキハラハラとするとでも思ったのか?舐められたものだ」

 半笑いで、言葉の意味があってるかはわからないが、牽制してみた。

「なっ……学年1の美女の異名を持つ私の押し倒しが効かない!?」

「どんな女でも妹は妹なんだよ!キスでもなんでも俺はできるぜ」

 快はイラつくように舌打ちした。

「言ったね……?」

「え」

 どれだけ切羽詰まっているのか、彼女は目を閉じて唇を突き出し近づけ始めた。


――いや、ダメだろ。


「おまっ……!ちょっ!彼氏いるだろお前!」

「別にファーストキスってわけでもないし」

「なんだって!?」

 全身に電流が走るような感覚がした――しれっと妹が初キスを済ませていたのだ。

 今はそれどころじゃない――快は当たる寸前まで唇を近づけたのち、プルプルと震えだした。

「どっ……どうした?」

「いや、ちょっと――――」

 みるみるうちに顔が赤くなっていく。

 どうした?俺は別にいいぞ?

 多分ダメなのは彼氏だぞ?

「なんか――うっ……うわあぁぁぁぁ!やっぱり無理だー!」

 快はどこかへ走り去ってしまった。


 拒絶されたのか、それとも恥ずかしかったのか。

「全く……可愛い妹なんだから」

 そんなわけで、ようやく俺の平穏が取り戻されるのであった。


――さて、何をして過ごそうかな。


 家でゴロゴロするのも悪くはないと思ったが、俺は立ち上がり体を伸ばす。

 足の筋トレがてら、サイクリングでもしよう。

「ちょっと外へ行ってくるよ!」

 と玄関で言ったものの、親は寝ているようで返事は返ってこなかった。


 家を出て春の暖かい空気を体に浴びた。

『うわあぁぁぁぁあああ!』と、彼女は叫びながら街を走り回っている。

 そんなことしてたら近所迷惑になるだろ……。

「ま、いいか」

 俺は自転車を漕ぎ始めた。

 登校という呪縛を解除した自転車の運転は最高に気持ちが良かった。

 快と別の方向へ向かおうと意識していたら、俺は思い切り通学道を通っていたのだ。

 特にゴールになりそうなものも見つからず、しばらく漕ぎ続けた。


――しかし、俺は途中で足を止める。


 1時間ほど経った頃だろうか……俺はコンビニで小休憩を挟んでいた。

 ついでに、購入したのは緑色のハートが描いてあるスポーツドリンクだ。

 結局名前は知らないが、結構気に入っている。


――さて、話を戻そう。


 するとその近くで、俺と同じ高校の制服を着た小柄な女の子が、右往左往する姿を見たのだ。

 まるで迷子の子猫のようだった。

 何かを探しているのか?

 学校への道を忘れた――とかは流石にありえないとしても。

 一瞬、何も考えずそのままサイクリングを再開しそうになったが――よく考えてみれば俺は生徒会だったのだ。

 部活のために登校していたのかどうかは知らないが、こういう生徒を助けてあげるのも俺の役目なんだろう。

「さっきから右往左往してますけど、何かあったんですか?」


 よく近づいてみると、彼女は今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 だが、涙を引っ込めるように咳払いをする。

「失礼しました――私立大蔵高等学校への道がわからなくなってしまって」

「え、」

 流石にありえない返答が返ってきた。

 いや、落ち着け。

「転校生……?」

「まぁ、大体そのようなものですわ」

 ですわ?なぜにお嬢様口調?


 疑問が盛りだくさんだったが、自転車で送り届けてあげることにした。

 彼女には最近取り付けた自転車のカゴの中に体育座りで入ってもらった。

 小柄な子だとは思っていたのだが、正直なぜ収まり切ったのかよくわからない。


「このタイミングってことは、入学が遅れたりしたんです?それとも編入?」

「それは……そうですね――色々と」

 なるほど――なかなかに事情がありそうな感じだ。

 とは言っても、深煎りするほど俺は情報に貪欲ではない。


「私の名前はアリス、メリア・アリスですわ」

「もしや外国人!?日本語が流暢ですね〜」

 これは本心だが、少しお立てるようになってしまう。

「それほどでもございませんわ!」

 自慢げに彼女は返してくれたようなので良かった。

 結構子供っぽいタイプらしい――相手にしやすそうだ。

「日本に引っ越すことになって、必死に勉強したんですわ!大体1ヶ月くらいで!」

「ほぇーすげぇ……」

「返事が雑ですわね」

「なんかもう唖然とするしかないなって」

 あれ?日本語って世界でもかなり難しい方の言語なんじゃなかったかな……?

 もういいや、記憶違いだったってことにしとこう。

 学校までは、俺の足で進めば10分ほどだった。

 それにしても、転校生だとしてなぜ土曜日に登校する必要があるのだろうか。


 外国から来たとなれば留学生かな……?

「日本はいいところだぞ――色々とまぁ、あるけど」

 俺はあえて発言に含みを持たせる。

(働いて生活をするとなれば金銭面において、かなりの苦労をすることになるけど――)

 ということだった。

「そうなのですか!?教えてほしいですわ!」

「そりゃまぁ……この近くだと、東京スカイツリーだとか、色々と?」

 端くれとはいえ東京なので、観光地は近い。

「言ってみたいですわ……」

 しみじみとするように彼女は呟く。

「行ってくればいいじゃん」

「いや……まぁ――そうですわね」


 それから少しして高校へとついた。

「ここまででいいか?」

「はい――本当にありがとうございました」

 彼女は自転車を降りると、深く頭を下げた。

「いや、いいんだよ」

 俺は微笑んで、その場を去っていった。

 思わぬ人助けに少しテンションが上がった俺だったが、思えば、また家に自転車で戻ることになるのだった。


「あの子……なんだったんだ?」

 ――彼女が彼にとって大きな物語を作ってしまうとも知らずに、俺は呟く。

 と、不穏なモノローグを挟んでおく。


 そして次の章へと繋がっていくのだった。

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