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第82話 呪いの代価



 オカルト、グロ、嘔吐、絶叫。

 ホラー映画のお約束をいい感じに取り揃えた呪詛イベントを俺は無事終了することが出来た。

 予想よりも大分ひどいものだったが、無事乗り越えられたような、そうでもないような……。

 とりあえずみんなに結果を報告せねば……。


「ソウヤ様ー!ご無事でしたか!」


 真っ先に走ってきたのはエルシーさんだった。


「うーん、なんとか。呪詛って怖いですね……」

「頑張りましたね、さぞかし怖かったでしょうソウヤ様! それにこんなに大きくなって……!」


 エルシーさんがぎゅっと大きくなった俺を抱きしめてくれた。

 柔らかく温かでいい匂いがする。全身を包むこのぬくもりよ……。前世で最後に誰かに抱きしめられた記憶は多分親なので、実質初めてのハグである。ハグとはこんなに温かい気持ちになるものなのか……。

 呪詛、十分元が取れました。ありがとう、ペリュさん……!


「あー、若君もう呪詛解けてるッスー! どんな呪詛かみたかったのに……」

「私も見とうございました、何しろ呪詛が初体験なので……」

「うぇー、解呪早すぎませんかぁ? 私も見たかったですぅ……」


 魔法使い三人組め、俺がどんな目にあったのかも知らずに気楽な発言を……!

 マギネとアカシアはともかく、ハールバルズさんはまともだと信じていたのに!


「キノぴ大丈夫だった? なんかペリュぴがいつもの十倍くらい気力振り絞って呪ってたから大分怖かったんじゃない? 大丈夫?」


 そういってチカさんが頭を撫で撫でしてくれた。あまりにも嬉しすぎる。

 優しさが五臓六腑にしみわたる。魔法使い三人組、見とけよ、これが正しい対応だからな!


「チカさんありがとうございます、なんとか耐えられましたよ……!」

「耐えてたかなぁ、まあ耐えてたか……」


 エーリュシオンさんは微妙な顔をしている。

 一番最後にペリュさんが現れた。


「いやー、最初の十分で全然聞いてる気せーへんかったから全力で呪ってもーたわ……若君、無事やった?」

「あ、全力だったんですか……めちゃめちゃ怖かったですよ」

「持ってる呪霊全員でも足りんくてそのへんに漂ってる闇属性の精霊にも手伝ってもらってようやく成功したわ。さすが世界樹や、生半可な呪詛じゃ全く通じひん。人生でやった呪詛で一番魔力つこたで」

「それは……大変お手数をおかけしました……」


 俺は魂で頭を下げた。


 その後呪詛がどれだけすごかったのか見たかったという魔法使い三人組の要望があまりにもしつこかったので根負けしたエーリュシオンさんが、記憶の中から再現映像を作って全員に見せてくれた。


 改めてみると他人事のようだが、大変にグロい。和洋中、それぞれの要素が調和したすごく怖い感じの動画だ。あまりにも怖くて視線をそらしながら見ていたが、自分に起きた出来事だと思うとゾッとする。

 エルシーさんのハグがあってようやくプラマイゼロといった感じだ。


「これ、お側にいなくてよかったです。ソウヤ様ごと呪霊を切り捨ててしまっていたかも……」


 エルシーさんの衝撃発言。エルシーさん意外にホラー駄目なのかな。


「本当に、見ないでもらっていて正解でしたね……」


 最後まで家で待ってもらっていて正解だったようだ。流石にエルシーさんに斬られたら死ぬと思う。物理的に。


「うひょー……これ、耐え抜いたんですか? 若君すごすぎッス……」

「本当にこれは生き地獄レベルの時間ですな……」

「うぇええええ、怖いよぉおおおおおお」

「えっ、ペリュぴこんなことしてるの? ちょっと友達だけど引くわ……」

「え、呪霊たちこんな全力だったんに耐えられたんか、若君我慢強すぎやで」


 皆がそれぞれに感想を述べるが、皆改めてドン引きしている。

 俺はあれを乗り越えたのだからもう人生で怖いことはないなと思えてしまう。それほどの恐怖だった。


「とにかくよかった、無事に済んで。太らせたから多少の術や魔法にも耐えられるようになってるはずだ。よし、今度は横じゃなく、縦に伸ばすぞ。おあつらえ向きのポーションが有るからな」


 そう言うとエーリュシオンさんはどこからかどんぐり汁の瓶を取り出し、何も言わずにいきなり俺の根本に遠慮なく撒き散らした。

 ねえ、ちょっとそれ俺の私有財産なんですけどなんで勝手に使うの!?


 すると、最初は何もないと思っていたのだが、数分経って地面に染み込み根に届く。

 すると身体の中からメリメリという音がして、そこから一拍おいて記憶に新しいあの痛みがやってきた。足がつるような痛みが上半身に広がっていく。


「エーリュシオンさん! また痛いんですけど!」

「痛みなくして成長無しって言うし……」


 エーリュシオンさんも口の辛さに冴えがない。


「ゆっくり一年くらいかけてやれば痛みはもっと少なくて済むんだがなあ。急ぎだし、諦めろ」

「痛み止め魔法とかないんですか! いで! いでででで!」


「あってもお前に通らないんだよ、さっき樹皮塞いじゃったもん。お前自分の魔法抵抗の高さをわかってないな」

「もっかい! もっかい樹皮削ってえええええ」


 俺の叫びをエルシーさんは制止した。その瞳には諦めと残念さが浮かんでいる。


「駄目です、あれ以上ジェスロさんに辛い思いをさせてはなりません。それにもう寝てますよ」


 寝てるならしょうがないか……でも、そこまで辛かったかなあ!?

 そう言ってる間にも、首や頭皮が攣るような、意味不明な痛みが俺を襲う。 


「我慢出来ないほどじゃないけど絶妙に痛い! なんで俺はいつもこんな変な目に合うんだ!」


 俺の叫びを皆神妙な顔で見つめていた。


「痛ああああああああああい!」


 悲しい俺の絶叫が夜の祝福地に響き渡っていた。



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