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第69話 意外な職業



「さて、じゃあ解散して、明日以降の準備をそれぞれしますか……」


 俺がそう言うと、エーリュシオンさんが魔法で作った幕が一瞬で消えた。

 すると、俺達の周りには、集落の民や昨日の試合で残っていた何人かの他の村の人や来賓の人たち、メアリーさんのベリッシモ達がいた。


「若君! 今の何だったんですか! 教えて下さい!」

「わーかーぎーみー、酷いですうううううう、マギネにだけずーるーいー」

「エーリュシオン様! 今の魔法なんだったんですか!」

「ラ・ベッラ様ご無事ですか!」

姫君プリンチペッサ!何があったのですか!」

「なあ! ティエライネンのお偉いさん来とるって聞いたんやけどほんま!? 紹介してや!」


 エルシーさんが散らしきれてなかった、というか説得されて一旦大人しく待っていた人々が俺とエーリュシオンさん、エルシーさんを取り巻き各々好きなことを問いただし始め、収集がつかなくなった。



「うるさーい! 僕は帰る! 守護者エルシー! ティエライネンの使者と相談して公表できるところまで説明しとけ!」


 そう叫んでエーリュシオンさんは消えた。おそらく祝福地に帰ったのだろう。

 俺は広場に残されたままである。酷い。


 皆好き勝手に叫んでいるが、俺は聖徳太子ではないので全然聞き取れない。困った。エーリュシオンさんなら聞き取れるんだろうが、さっさと逃げ出したし、そもそもあの人うるさいの嫌いだしな……。その割にレスバはするからよくわからない人だ。


 エルシーさんが苦慮の末、翌日に住民向け発表会と、メアリーさんの契約お披露目会を開催することにしてなんとか皆には解散してもらった。しかし明日はペリュさんとの商談がある。


 どうしたものかと思っていると


「なぁなぁ! 若君はん、ティエライネンのお偉いさんと知り合いなったんか!?」


 今日もサングラスでキメキメのペリュさんがフレンドリーな関西弁で話しかけてきた。


「知り合いって言って良いのかな。とりあえずご挨拶はしましたよ」

「ええなー! うちティエライネン方面に進出したいと常々思っててん。紹介してくれんやろか」


「うーん、そもそも俺、ペリュさんがどういうご商売をしてるかもまだ詳しく聞いてませんし、夜にでも一緒にご夕食いかがですか? 俺が飲むのは水だけですが、ペリュさんにはちゃんとしてる食事を用意してもらいますよ」


 そう、俺はペリュさんから商談を持ち込まれOKしたものの、ペリュさんが商人であるということしか知らない。なので詳しいことを聞かねばならない。

 実は死の商人とかだったら嫌だしな。無いとは思うけど。


「ほんま? じゃあいくわ! 正直こっちは眩しいから夜の方が目が楽やから助かるわー。ほなまた夜に!」


 そういって手を振って颯爽と帰っていった。

 あれ、あっちにあるのマギネの家じゃなかったっけ。マギネの家は実験とかで変な煙や爆発の危険があるから、一件だけ離れて建ててあるんだよな。

 それとも、別の人の家が実はあったりするんだろうか。


「エルシーさん、ペリュさんと夕食をご一緒したいんですけど、ペリュさんが好きそうな物用意してもらえますか?」

「はい、畏まりました。ソウヤ様はどうされます?」


 そう言われて俺は悩んだ。水でいいんだけどそれだとペリュさんに自分だけ食べるの気が引ける、みたいな気遣いをさせるかもしれない。


「ちょっといいグラスとかあります?それにどんぐり汁を……俺が飲むのとインテリア的な感じで、ほら」

 キラキラしてる分誤魔化せるし話のネタになるという下心もある。それにイロイロナオールEX錠の原料でもあるし安全性もアピールできるはずだ。


 お食事で商談。前世だとコンプラと勘定科目が気になるところだが、ここは異世界なので監査も税務署もない。安心だ。……無いよな? と思って一応聞いた。


「税務署というものははございませんがが徴税人はおりますよ」


 あ、やっぱそれっぽいものあるんだ……。そりゃあるよな、税金。


「えっ、じゃあ領収書もらって科目は接待交際費とかで上げればいいかな!?」

「何を仰っているかわかりませんが、この大陸中央部を治める世界樹はソウヤ様ですので、どちらかと言うとソウヤ様が徴税人でございますね……」


 なんてこった、木だけではなくあんなに嫌ってた税務署に俺はなってしまったのか……。せめて俺だけはいい税務署でありたい……。

 俺が、俺達が税務署だ……。


 こういう出費とかも帳簿につけておいたほうがいい気がするな。エルシーさんに相談しよう、落ち着いたら。問題はトラブル続きで全然落ち着かないことだが。


 そして食事会はどこで開けばいいだろう。祝福地の使用許可が貰えればそれが一番なのだが。ここでお食事会は衆目が厳しいな。

 エーリュシオンさんに頼むと案外すんなり祝福地の使用許可が出た。


「ソレニアの娘だろ? いいぞ。あいつの父には何回かあったことがあるし、。あいつ魔族の王女だからな、商売にはいい相手なんじゃないか」


 衝撃の情報がもたらされた。まさか、あの関西弁レディーがお姫様だったとは……。


「あれ、族長の娘、って仰ってませんでしたか?」


「あいつはあいつで大変なんだよ。250年くらい前の魔王騒ぎで、魔族がこの騒ぎの張本人みたいになりかけて叩かれたんだが、魔王が魔族も皆殺しにし始めてやっと魔王個人がヤバいだけで種族に関係ないってわかってもらえたんだ」


 それは想像するだに辛すぎるな……。身内同士の殺し合いとか考えたくもない。


「そんで、魔王ってソレニアの祖父さんなんだよね。正室じゃなくて側室の息子だけどな。そして、ソレニアの父が自分の父を殺した。だからなんとか許されたんだ」

 確かに、この世界そう言うのに厳しそうだもんなあ……



「王家という枠組みをなくして、部族であり商会であると言い換えてなんとか続いてるんだ」


 すごく大変そうな理由だった……。


 準備を手伝おうと思ったが、そもそも動けない俺にやることは何もなく、座して時間を待つだけとなった。



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