表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元社畜、どんぐりに転生する【完結】  作者: 芥部


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/174

第63話 忙しい無職の木



「ええと、俺の前世では気の強い令嬢は見慣れておりましたので……。それに、悪気はなかったんでしょう。話せばわかってくれたので、全然構いませんよ。偉大な大先輩ですしね」


 嘘ではない。悪役令嬢物でいっぱい見た。


「大先輩?」


 怪訝な顔をするアルビオンさん。そりゃそうか、この世界で1200歳の世界樹はひよっこなんだもんな。

 メアリーさんは俺より1100歳以上年上だから本当に大先輩なんだが。


「ここでの1200年がどういう扱いなのかはわかりませんが、俺はまだ生まれて二ヶ月も経っていない苗木です。ですので、負けた代償とはいえそのような俺に対等な扱いで物を教えてくれる、偉大で心の広い先輩だと本当に思っているんです」


「なるほど、わかりました……ラ・ベッラ様をご理解いただき、守護者一同感謝を申し上げます」


「俺からもアルビオンさんに聞きたいことがあります。何故皆さんは家族とすらなかなか会えないのにラ・ベッラさん……いえ、メアリーさんの守護者を続けておられるのですか?」


 その質問に、アルビオンさんは迷わず答えた。


「家族と会えないのと寂しいのは確かです。でも、異世界から来た女の子が孤立無援でこの世界のために頑張って働いているのですから、それをお護りするのも我らの使命かと存じます。我ら以外に彼女に味方するものがいないなら、尚更です」


 答えがイケメンすぎる……。俺だったら絶対ろくな答えができないという確固たる自信がある。人格者なのか年の功なのか……見習いたい。できれば顔も……。


「昨晩、家族とはその件でも話し合いました。ラ・ベッラ様は主でもありますが、我らにとっては大事な孫や姪っ子のような存在です。ラ・ベッラ様とは話し合いをもち、お互いによりよい未来になればと思っております」


 その時、木陰からラ・ベッラさん、もといメアリーさんが飛び出してきた。

 まだ呼んでなかったんだけどな。しょうがないか。


「アルビオン!」


 アルビオンさんに抱きついたメアリーさんは感極まったのか目に涙を浮かべている。

 急に出てきたメアリーさんに、驚いている。まさか聞かれてるとは思わないよな……。


「私、あなた達にひどいことをしたのにごめんなさい」

「いえ、他の者も姫君には感謝しておりますよ。週に二日の休みと他に比べても高額な給金。そしてこれは姫君プリンチペッサをだましていたようで心苦しくもあるのですが……」

「な、何?」


「禁足地の周辺に実は我らの家族の集落がこっそり隠して有りまして……週に二日、そこで家族と会ったり、家族が遠くに住む者はそこに年数回家族を呼び寄せて家族の団らんを持っておりました……」


 なるほど、十年に一回というのは表向きだったのか。

 そういやシオンがたまに遠出するとか言ってた記憶がある。なるほどこのことだったのか。


「全然! もうそんなことどうでもいいのよ、全部私のせいなのにルールの範囲内で家族との触れ合いを守った知恵は素晴らしいと思うわ!──禁足地の決まりも今無くすわ、家族と暮らせるように、自由に移動できるようにするわ」


「そうですね、独身の守護者で結婚を希望するものには出会いが必要ですし、そうしていただけると助かります」


 アルビオンさんは頭を下げた。そうか、独身の守護者もいるんだもんな。

 それだと結婚したい人とかもいるだろうしな……。希望してできるかどうかはともかく、チャンスがないのはいただけない。

 俺に言える義理があるとは思えないが。


「そのことについては後でお話いたしましょう、私は姫君の持ち物検査をする任務を命じられましたので」


 そう冗談めかしてアルビオンさんは言うが、確かに急いでもらわないといけない。

 証拠隠滅の恐れもあるからだ。これは、あとでお願いしておこう。

 それに何よりせっかく解呪したのにまた呪われたら元の木阿弥になってしまう。お願いが多岐にわたり心苦しいが、そこはなんとか頑張ってもらおう。うちより人数多そうだし。



 それにずっと俺が手伝っているわけにもいかないのだ。やることが沢山ある、

 このあと、ティエライネン王国の使者にも会わねばならない。

 ティエライネンには問題の世界樹、ミルラさんがいるのだ。

 そして、ペリュさんもかなり待たせてしまっている。気が急くが一つずつ消化する以外にない。


 ペリュさんには悪いがもう少し待ってもらうようにエーリュシオンさんに魔法で伝えてもらった。

 人づてに用件を聞くよりも、噂になっているという祝福地の精霊の魔法で教えてもらったほうが喜ぶかな? という俺のささやかな気遣いである。


 マギネやアカシアはエーリュシオンさんに伝言魔法をもらったときなんてなんでこの音声を保存できないんだ! とか悔しがってたもんなあ。最近は慣れてきたようだが。


 やることが多いが、自由に動けない我が身が呪わしい。

 もう手段を選ばず成長する方法を探る時期に来ているのかもしれないな。


 どんぐり汁一気飲みくらいしか俺には思いつかないけど、落ち着いたらエーリュシオンさんに相談してみよう。


 考えることが一杯あり、頭がショートしてしまいそうだ。

 俺、木なのになんでこんな忙しいんだろう。辛い。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ