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元社畜、どんぐりに転生する【完結】  作者: 芥部


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第53話 貴婦人(自称)



 そのあたりから、じわじわと野次が飛び始める。


「貴婦人(爆笑)」

「よっ、怒鳴る貴婦人!」

「お淑やかですねー!」


「そうだそうだ、若君わかってるっすねー!」


 あっ、マギネまで野次に加わっとる。やめろ。


「そうだぞ、だからお前みたいな悪臭漂う名付けセンスのない世界樹なんかと契約する祝福地はいないんだ! 貴婦人なら貴婦人らしくしろ!ばーかばーか!」

 エーリュシオンさんまで加わった。もう駄目だ。


『ソウヤ様! どうしてそんなに煽っちゃうんですか!』

『煽ってるつもりはなくて、事実を述べたつもりでぇ……』

『それでも今のは言わないほうが良かったですね……』


 その気はなかったが俺が事実陳列罪を犯してしまったらしい。

 どうやってラ・ベッラさんの怒りを鎮めれば良いんだろう……。


 そうして困惑している間にも、ラ・ベッラさんはすごい勢いで怒鳴り続けている。


 ふと気がつく。俺の方の聖樹族エルフの皆さんは激おこなのだが、ラ・ベッラさん側の聖樹族エルフの人たちは『またか』『面倒』と言わんばかりの顔をしている。

 相手側の士気は明らかに低い。

 ラ・ベッラさんは怒っているので気がついていないようだが。


「私の香水のどこがくさいっていうんですの!? 一瓶金貨二十枚の最高級品ですのよ!」

「つけすぎなんですよ」

「一日一瓶くらい景気良く使いたいじゃない! せっかくのお出かけなんだもの!」


 香水って一瓶あたりの量は少ないけど、一回一プッシュとかでいいはずだ。

 それを一瓶。そりゃいい匂いを通り越して臭いわけだ……。


「高いものをいっぱい使えばよしというのは貴族ではなく成金の発想だと思いますよ」

「私のどこが成金なのよ、由緒正しい世界樹様よ! お金を好き放題使ったっていいじゃない! 私がいないと世界が成り立たないんでしょ、そのくらい好きにしたっていいじゃない!」


 彼女の後ろにいた聖樹族エルフたちの顔がさらに曇る。

 そして、親衛隊長か何かと思しきひときわ華やかな服装をした男のエルフがこちらにこっそりと念話を送ってきた。


『うちの世界樹様が本当にすみません、これでも金遣いが荒くて男を集めたがる事以外、仕事は真面目にするいい世界樹様なので、何卒ご寛恕願いますよう……ほんとすみません……』

『あ、はい……大変そうですね……』


 ある種のブラック職場なのだろうか。なんとなく同情を覚えてしまう。

 しかし、これはどうしたら落ち着くんだろうな。俺が写し身を出せてイケメンならうまく収まったかもしれないが、平たい顔族の地味な顔だもんな……。




「だいたいそんな植えて数年の苗木に私に逆らう権利があるとでも思ってるの!?」

「お言葉ながら、俺の年齢はまだ生後一ヶ月半ほどです」


 俺の言葉に、さらにラ・ベッラさんがヒートアップしてしまった。


「は!? そんなわけ無いでしょ! その年でそんなに口が回る苗木、いるわけないじゃない! 私をたばかるのもいい加減にしなさい! ちょっとばかりいい祝福地と契約できたからって私を馬鹿にしてるのね! このクズ! 土地盗人!」


 ラ・ベッラさんは怒りに任せて扇子を地面に叩きつけた。

 筋力が5しかないので壊れはしなかったから、汚れただけである。

 しかしやっぱ成長が早すぎるのも良くないな……。こうやってあらぬ疑いを招いてしまう。

 もうどうしようもないんだが後悔しきりだ。


「それ以上のお言葉は世界樹様でも許しません、最後の二つの言葉は取り消してください」


 エルシーさんがスッと立ち上がった。

 今日は祭りの警備も兼ねて帯剣していたので、剣を構えてラ・ベッラさんを冷たい表情で睨みつけている。


「若君をバカにしないで! 若君は物知りで、集落の皆にも優しくしてくれるまだ小さいけど最高の世界樹様よ!」


 リオネちゃんが嬉しいことを言ってくれた。

 この二人を見たラ・ベッラさんの顔色が平静に戻った。


「ふうーん……」


 手をすっと横に出すと、すかさず控えの聖樹族エルフから代わりの扇子が差し出される。

 水商売の接客みたいだな……。

 扇子で顔半分を隠しながらエルシーさんとリオネちゃんを値踏みするように見つめている。


「じゃあ良いわ、取り消すし、許します。ただし、そこのバンビーノ、そして騎士、私のものにおなりなさい」


 扇子でリオネちゃんとエルシーさんを指し示す。

 エルシーさんはそれを聞くと更に表情を冷たくする。


「それもお断りします。 私はソウヤ様にお使えする守護者の代表。お側を離れるわけには参りません。リオネは未成年。未成年者の強制勧誘は戒律で禁じられておりますよ?」


「じゃあ駄目ね。取り消さないし、許さないわ。私のベリッシモ達、この不埒な輩を成敗なさい」


 冷たくラ・ベッラさんが宣言する。

 後ろの聖樹族エルフの守護者達……ベリッシモたちの顔も気が付かずに。 

 後ろに控えるイケメン揃いの聖樹族エルフ達はひどい顔をしている。


『やだ』

『めんどい』

『早く帰りたい』


 そんな気持ちが見るからに伝わってくる顔をしている。

 しわしわになった電気ネズミやチベットスナギツネみたいな顔だ。イケメンでもあんな顔するんだ……。

 しかしラ・ベッラさんは後ろを向かないので気がついていない。


 あー、どうしよう。困惑しつつ俺は言葉をひねり出した。



「わかりました。戦いはお受けします。しかし俺も人死には出したくないし、今は祭りの真っ最中なので……エキシビションマッチということで、試合形式で優劣を競うのはいかがでしょうか。エルシーさんやリオネちゃんをお渡しすることは出来ませんが」


 そういうとあからさまにラ・ベッラさんの顔がどす黒いものになる。

 俺は構わず続ける。


「ただし、貴方が勝てば貴婦人としてのラ・ベッラさんに世界樹の俺が忠誠を誓います。最古の祝福地エーリュシオンと契約した世界樹を下僕とする貴婦人。ラ・ベッラさんの名も上がるのでは?」


 ヒートアップした顔から、計算高い貴族の顔になる。

 表情のよく変わる人だなあ。遠くから見てる分には楽しそうな人だ。


「ふうん、いいわよ? まあ負けないけど。私が世界中から選りすぐった顔と腕の両立するベリッシモ達ですもの。信じているわ」


 後ろのベリッシモ達の嫌そうな顔も見ることなく、彼女はあっさりと言い放った。

 信頼しているのは良いことなんだけど。うーん。



『おいボンクラ! お前万が一にも負けたらどうするんだ!』


 エーリュシオンさんから最もなお叱り念話をいただいた。


『俺は俺の守護者たちが負けるとは思ってないので』


 これは本気である。

 肉体言語を語らせたらこの世界最強クラスの二人がいるのだ。

 それに、知識だけならマギネとアカシアもいる。大体のことはどうにかなるだろう。


「で、どうやって試合しますか? 俺はこの世界のことよくわからないので、ラ・ベッラさんにお任せしますよ」

「決闘といえばピストルが思い浮かぶけれど、ここにはないのよね……」


 ラ・ベッラさんはしばし考え込んでいた。


「まあいいわ、一対一の決闘をしましょう。お互いが守護者一名ずつを選抜して、武器は近接武器のみでいいかしら。ただし殺傷が目的じゃないから真剣以外にしてちょうだい、ベリッシモ達の顔に傷がつくなんて、私には耐えられないもの」


「わかりました」


 だいぶ雑にレギュレーションが決まった。

 真剣仕様じゃなくて良かった。俺もエルシーさんの顔に傷つくの絶対嫌だもん。エルシーさんは気にしなくても俺が気になる。


 一応公平を期し、審判役をドワーフのドルヒさんと魔族のペリュさんに依頼した。


「こっちが負けと思ったら遠慮なくそう仰ってくださいね」

「しょ、承知しました……」

「肝の太い若君やなぁ」


 世界樹同士でのガチ戦闘は周辺の迷惑になるため、基本的にはお抱えの守護者同士の決闘になる。

 本当に世界樹同士の戦いになると気候は大荒れ、落雷や洪水で周辺地域は数百キロ荒れる上短期間で決着がつかないので代理決闘が基本になっているらしい。


 そんなルールが決まるくらい世界樹同士の戦いが多いのか。やだなあ。

 でも今回はそれに救われている。この体力だと正直絶対ラ・ベッラさんに勝てない。俺魔法も武器も使えないからな……。



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