第50話 祝福地御前試合 4
「では芸術部門の一番手は私! リオネ・エルダリー・アルビオンが参りますわ!」
シオンの姉?兄?のリオネちゃんが登場した。
これは安心してみてられそうなので魂で拍手を送る。すると何故か俺から拍手した音が出るのだ。
謎現象すぎるがもう今さらなので気にしない。
芸術部門の的は大きく丸いだけで、特に点数の区切りも決められていない。
的がに二枚や三枚並んでいるということもない。
「ソウヤ様、審査ポイントですが、1つ目に投げ方の美しさ、2つ目に的への刺さり方の美しさ、3つ目にエフェクトの美しさです。追加で、何本のダーツを使ったかもポイントに入れます。芸術部門は主観が多い部門になってしまいますが、細かいことは気にせず自由に採点してくださいね」
エルシーさんが審査のポイントを教えてくれた。
うんうん、なるほどー……。
……何言ってるか全然わからん。
エフェクトってなんだよ、エフェクトって……。あと、何本でってのもおかしい。普通ダーツは一回につき一本で決められた本数投げるもんじゃないのか。
「に、……ねーちゃんがんばれー!」
「リオネちゃん頑張ってねー!」
集落の人が応援すると、一番手のリオネちゃんが可愛らしくカーテシーで礼をする。
うーん、本当に深窓の令嬢のようだ。男の令嬢、俺はアリだと思います。
「いやー、本当にかわいいっすねー」
マギネも感心している。頭に小さな花飾りをつけて、裾の長めのピンクのワンピースを身にまとったリオネちゃんは伯爵令嬢もかくやといった雰囲気がある。
「うんうん、ほんまかわええなあ」
聞き慣れない関西弁がして、ぎょっとして声の方向を見る。
振り返るとパワー部門で一位だった魔族のペリュさんが俺の後ろに立っていた。
「うわっ、こんにちは!」
うろたえながらもかろうじて挨拶はできた。
よかった、最低限の礼儀は果たせて。
「世界樹の若君はん、お初にお目にかかります。うちは魔族、ペリュ・ソレニアや、よろしゅうなー! 御前やけれど魔族は目ぇ弱いねん。サングラスは堪忍してや」
「あー、わかります。明るいところだとサングラスしたほうが楽なことありますもんね、全然気にしてないですよ」
そういうとペリュさんの顔がニヤっと笑った。
「物わかりのええ若君やなー」
「ど、どうも……」
久々に聞いたな、関西弁。
おそらく関西弁ではなく、こちらの言葉の方言でニュアンスに合うものが俺の記憶にある関西弁に翻訳されているだけなんだろうけど。
「ソウヤ様ちゃんとご挨拶できて偉いですね!」
エルシーさんにも褒められたが、挨拶とか出来て普通では?
とも思うが褒められたのは嬉しいので素直に喜んでおこう。
そうこうしている間に、リオネちゃんの演技が始まる。
「この一投を、我が祝福地エーリュシオン様に捧げます」
リオネちゃんが高々と宣言すると、指と指の間に挟めるだけのダーツを挟んでいた。
ああ、本数ってそういう……。
「花よ! 風よ! この矢を的へ届けて!」
クロスさせた腕を振り開くと、八本のダーツを勢いよく解き放った。
景気よくロケット噴射のように魔法の花吹雪がダーツの矢羽から吹き出し、渦を巻き観客席にも光の花吹雪と、ほんのりとした花の香が広がっていく。
華麗さに歓声が上がるとカカカッと良い音がして、八本の矢は円形に綺麗に命中していた。
なるほど、さっきはエーリュシオンさんがやっていた魔法の演出を自力でやる感じなのか。
俺は人目に隠れつつこそこそと採点メモを付けた。
盛大な拍手が送られ、リオネちゃんは観客に手を振り返し、一礼して定位置から降りていった。
「ねーちゃんすごーい!」
「うんうん、一番手でこれだけいい感じのを出してくるのは才能があるね、さすがシオンの兄だ」
「あの娘三十くらいやろ? それでしっかり観客に挨拶もできて度胸もあって魔法も筋がええ、うちの部族にスカウトしたいくらいや」
「うふふ、そういう事は成人してからにしてくださいね。リオネちゃんお疲れ様ー!」
様々な声がリオネちゃんにかけられた。確かに一番手って勇気がいるよなあ。
二番手以降なら一番手の戦術を見てから真似することも対抗することも出来る。
順番は志願制で決められたらしいので、確かにリオネちゃんには度胸があるのだ。俺なら無理だろうな……。
二番手以降も、個性溢れる演技が続いた。
何をどうやったのか数十本のダーツを一気に投げて一発で魔法陣を描き出した人、くるくるとバレエのように回転しながら十本の矢を中央に当てる人、音楽に合わせて投げ、的に当たる音を打楽器にした人、的に背を向けて目隠しをして後ろ向きにダーツを投げ、十本全て中央直撃させた人。
パワー部門にも出ていたドワーフの選手が、今度はダーツの矢に詰めていた爆薬を花火の火薬に変えて、的を花火大会の会場のようにしていたり。
他にも個性豊かな参加者が数名続く。
華やかな会場の盛り上がりに、皆酒を飲んだり屋台の飯を食ったりしつつ楽しそうに盛り上がっていた。
いいな、俺も混ざりたい。イベントのご飯ってなんか楽しいよな。
しかし、俺は木な上にやることがあるので無理なのである。無念。
全員の演技が終わり、俺達は少し審議に入ることにした。
お遊びのイベントとはいえ、皆この短期間で頑張って練習してくれたんだろう。
その気持が嬉しいので俺としては全員に一等賞をあげたいんだけどもそうも行かず、結果審査員賞を作ることで枠の水増しをした。
子供部門は審査も表彰も終わっており、パワー部門は的を突き抜けた枚数が成績なのですぐ決着がついた。
問題は芸術部門の方である。
皆の方向がバラバラすぎて採点がしづらいのだ。
花火とライブ、どっちが芸術として優れている? って聞かれて即答出来る人はそんなにいないと思う。そのくらい評価ポイントが違うのだ。
本数だけなら魔法陣の人が一番だが華やかさではリオネちゃんとドワーフさんの花火が上だったし、投げ方ではくるくる回転しながら投げていた人と後ろ向きで全弾集中させた人も俺的には芸術点が高い。
幸い、これはゆるいお祭りであり、審査中も皆でダーツで遊んだり、露店でものを食べたり、エールを飲んで楽しんでいる。皆が楽しんでいる間に決めてしまおう。
「いやー面白かったけど採点しづらいっすね!」
「ルールがあってないようなものだったわね、採点が難しいわ……」
「ふふ、でも楽しかったじゃないか」
「エーリュシオンさん、俺達は楽しいだけじゃ駄目なんですよ」
「あらぁ、祝福地様にも意見が言えるなんて若君は偉いわねぇ~」
集落の長のユージェニーさんが頭……というか、葉を撫で撫でしてくれた。
俺も精神的にはいい年の大人とはいえちょっと嬉しい。
ユージェニーさんはおっとりしたお母さんといった感じの美人です。だめだ俺に優しくしないで欲しい、好きになっちゃう……。
なんだかんだで二十分ほどで話はまとまり、部門優勝者と総合優勝者、各審査員賞が決まった。てっきり俺はエーリュシオンさんはシオンに審査員賞を上げるのかと思いきや「それは公平じゃないだろ」と一蹴した。
意外にこの人、人間?が出来てるんだよなあ。




