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元社畜、どんぐりに転生する【完結】  作者: 芥部


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第49話 祝福地御前試合 3




 一人目はこの集落ではない、近くの村の人間のおじさんだった。ジョンさんというらしい。


「うおおおおおおお!」


 そう気合を入れた雄たけびを上げると髪の毛を含む全身が金色に光り輝き始める。

 サイヤ人っぽい見た目になったが、あの光は筋力強化魔法らしい。


(エルシーさんこれ魔法ありなんですか?)

 と俺がヒソヒソ声で質問すると


(ありですよ、的を射抜くのが目的ですからね。使えるものは何でも使っていいんです!)

 というお答えが返ってきた。

 異世界のレギュレーションは俺が思っていたダーツのルールと大分違うようだ。


「どっせえええええい!!」


 乾坤一擲、という気迫で投げられたダーツは光を放ちながら飛び、当たった的をバシバシ粉砕しながら四枚目で止まった。


「やるじゃねえかジョン!」

「おつかれー!」

「練習の時よりいいじゃねえか!」


 歓声と労いの声が湧き上がり、和気あいあいとした雰囲気に包まれる。


 なるほど、パワー部門もハチャメチャである。

 エーリュシオンさんの魔法の演出がなくてもド派手だ。


 続く選手もだいぶ無茶苦茶だった。

 ドワーフの選手は筋力強化に加え中に火薬を仕込んだダーツを筋力でミサイルのように発射し大爆発を起こして的を射抜く。


 他の参加者も大体肉体強化してパワーで的を抜くか、それに加えてダーツの矢に魔法や加工を施し強化する、もしくはその双方。

 強化の方法も様々で鉛よりも重い金属で出来た物、先端がドリル型、特大サイズの物、的の枚数だけ分割して発射されていく物など皆様々な工夫をダーツに施している。


 爆発、轟音、閃光。

 皆きゃっきゃと楽しんでいるが、俺の記憶の中に似ているものがあるとすれば自衛隊の演習が近いかもしれない。

 もはや手で投げるライフル弾といった趣だ。平和からは程遠い光景に見えるが、本人たちは実に平和そうな顔をしている。


 ド派手な爆発や破壊行動が続くなか、さっき気になっていたサングラスの人が出てきた。

 白い肌に、人間とエルフの中間ほどの僅かに尖った耳、そして、このあたりでは見かけない長い黒髪。

 今まで出てきた人たちは明らかに筋肉ムキムキの人ばかりだったので浮いているが、本人は気にしている風もない。


「それではパワー部門最後の参加者です! ご来賓でもあるペリュ・ソレニア様、よろしくお願いします!」


 そうエルシーさんが紹介すると、周りからは歓声が起きた。


「おおー! 大魔導師ソレニアの娘さんか!」

「魔族の魔法、久々に見るなあ、黒くてかっこいいんだよなあ」

「頑張れー!」


 魔族という言葉に俺は反応した。魔族は確か、魔王を生み出した種族だと聞いている。

 しかし、皆に応援されているようだ。どういうことだろう。


 俺はコソコソとエルシーさんに質問する。


(エルシーさん、魔族って大丈夫なんですか?)

(大丈夫ですよ、魔族って魔法がすごく得意な種族ってだけですから)

 

 俺が現世で持っていた魔族という言葉の印象とだいぶん違うな。

 なんか青肌に牙や角が生えててマッチョで怪力無双なのに魔法も使えるみたいなイメージがあった。

 翻訳技能EXくんも異世界の細かいニュアンスまでは翻訳しきれていないのかもしれない。

 翻訳しづらい単語って意外にあるっていうもんな。


(あの人は私と一緒に魔王を封印した大魔導師さんの娘さんなんですよ)

 エルシーさんが追加で情報を教えてくれた。

 この応援されっぷりも、来賓であるのも納得だ。



 的の前、規定の位置に立つとサングラスの人……ペリュさんは両手を合わせ、祈りを捧げた。

 するとペリュさんの周りを黒いどんよりとした暗闇が覆い始める。



「我が矢の前に立つものよ、呪われよ、道を開けよ、ソレニアの名において我が下僕に命ず、夜闇を抜け、門を開け、叫びを上げよ、開いたる後に在るべき場所に戻るべし」


 ペリュさんはそう唱えると、子供よりも軽くダーツを投げ放った。


 ゆっくりと歩くような速度で、落ちもせずに進むダーツだが、的に向けて黒いレーザー光のようなものが照射される。

 ダーツが闇を纏いながらゆっくり進むうちに、じわじわと黒いレーザー光がダーツの通れる隙間分だけ、的をドロドロに溶かしていく。


「おおー! 的に魔法を放つって手があったか! 新しいな!」

「いいじゃないか、さすが天才魔導師だ!」

「いやー闇魔法ってかっこいいっすよねぇ……!」


 マギネまで感心している。


 え、ええー……。

 あれもありなんだ。観客からは好意のある反応が多い。

 出来たばかりの競技だから、むしろ今こそ何でもありなのかもしれないな……。


 ダーツが一枚的を通過する度に、甲高い女の悲鳴のような声が上がり、また次の的に穴が開き……それを繰り返しているうちに、最後の鋼鉄の的も溶かすとダーツの矢は絶叫を上げて消え去った。



 ペリュさんは自分の出番がおわるとペコリと観客に向けて頭を下げる。

 観客はスタンディングオベーションでそれを迎えた。

 いやー、すごかった。ホラー方面で。爆発や光がないのにここまで盛り上がるのはすごいな。


 それを見た子どもたちは、絵本のお化けを見た程度の怖がり方できゃあきゃあ騒いでいたが、大人たちは本場の闇魔法が見られるのは珍しい、と喜んでいた。

 爆発や光だけではなく、どうもホラー耐性も強い人が多いらしい。


 闇属性はただの属性の一つだと言うし、ホラー方面のエンターテイメントといえなくもないのか。

 もっとも、俺はホラー映画を一人で見られるほどのホラー耐性はない。最後ののダーツの矢が絶叫して消えるやつもエルシーさんが手を握ってくれていなければ耐えられなかったと思う。


 次に開催されたのは最後を締めくくる芸術部門である。


 ダーツと芸術、もうわけがわからないけど、パワー部門も判らなかったので俺は気にしないようにすることにした。

 いちいち気にしていたら存在しないはずの胃に穴が空いてしまうので。


 なるようになるのを見守るしかない。



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