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元社畜、どんぐりに転生する【完結】  作者: 芥部


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第40話 身体は幼児、心はおっさん



 扶桑さんがくれたチートアイテムをもらったと思ったら、エーリュシオンさんに没収されてしまった。

 現在祝福地のど真ん中で雑談しながら返却待ちである。


「思ったよりも時間がかかってるなあ」

『世界樹の君のお作りになったアイテムですからな、調整も簡単ではないのでしょう』

「なるほどなあ」


 しばらくすると、後ろから声をかけられた。


「若君、本日は挨拶もせず失礼いたしました。また御用の際はいつでもお申し付けください」


 あっ、さっきマギネに引きずられていったジェスロさんだ。


「お疲れ様です、またよろしくおねがいしますね」


 何があったのかわからないが、とりあえずなにかしてもらったらしいのは確かなので社会人としてお礼を言っておいた。

 心無しかジェスロさんの足取りが軽い。

 一体中で何があったのだろうか。


 太陽も真昼の位置をすぎ、そろそろ二時か、もしくは三時近いかな、という頃にようやくぞろぞろとエルシーさん他の皆様が帰ってきた。


「待たせたな、木野!」


 ブンブンと扶桑さんの枝をエーリュシオンさんが掲げていた。


「なんか問題あったんですか?」

「あったあった。でもどうにかしたぞ!」


 エーリュシオンさんが軽く言う。本当か?


「これ一回使うだけで私が魔力切れでぶっ倒れたんすよ! やべーっすねこれ! 超うけるッス!」

「使った瞬間倒れたの笑いましたね……うぇひひひひ」


 マギネとアカシアがゲラゲラ笑っているけど気絶するくらい魔力を使うってやばくないか?

 もしかしてあのままもらったらヤバイ奴だったの?

 それでも笑ってるマギネが一番やばいのかもしれないが。


「うんうん、マギネがいきなりぶっ倒れたのは面白かったね。でも木野、いくら君が面白ボンクラツリーだとしても、魔力切れは体に良いものじゃないからね。成長に悪影響が出るのは見逃せないから、僕が君でも使えるように直しておいたよ」


「ええー、本当にござるかぁ?」


 俺は(いぶか)しんだ。


「ござる? また何かわからないことを言っているが、本当だ。ほら、守護者。使ってみろ」

 エーリュシオンさんはエルシーさんに枝の輪を渡すと、使用を促した。


「今、ステータスを見ようとして思ったんですけど、これ、他人のは見られますけど、自分のステータスをどうやって見たらいいんでしょう? あと、他人の数値を勝手に見るのは失礼ですよね?」


「あっ……」


 エーリュシオンさん……。君でも使えるようにって言ってたのに……。


 やっぱり扶桑さんかエーリュシオンさん、もしくは両方に、俺の希望との行き違いがある気がするな……。


「俺が読んだ大体の本でも、ステータスを勝手に見るのは失礼だったと思う。でも、ステータスを見ることが出来るのは権能の一つになっていて、それを使って困難をうまく切り抜けるみたいなのもみたから、もしかしたら扶桑さんはそっちを意識してくれたのかも……」


 と俺は扶桑さんを擁護した。


「でも俺も、出来たら自分のステータスはみたいかなー」


 だってなんか秘められたスキルとかあったら嬉しいし。

 どんなスキルがあったら嬉しいかは全く想像できないけれど。


「ちょ、ちょっと待ってろ!」


 そう言って慌てたエーリュシオンさんは消えて、数分後戻ってきた。


「今度こそ!今度こそ完璧だからな! これは、発音詠唱ではなく、念詠唱に対応した。心のなかでステータスオープン、木野! みたいに唱えれば名前の相手のステータスが表示されるようにした。もちろんステータスの公開のオンオフもできる。対象を決めない場合自分のステータスが見られるようにしたぞ! 名前がわからなくてもあそこのアイツとか念じることで使えるようにした!」


 珍しく息を切らしているうえに早口だ。めちゃくちゃ急いだのかな……。

 珍しくエーリュシオンさんから人間味を感じる。


「素朴な疑問なんだけど、俺、どうやってそれ覗き込めば良いんだろ……」


「あー、もう、扶桑ー!! なんでこんな若い木に手がないと使えないような道具を与えるんだ! 虫歯おばあちゃんめ!」


 俺の疑問にエーリュシオンさんが珍しく謎の単語を発して壊れてしまった。

 本当に申し訳ない。手、使えれば良いんだけどなあ……。


 それだけで大分生活が便利になるとは思うんだが。

 木になって初めて痛感したのが手を使えない不便さである。水耕栽培のときは根を動かして対応していたが、根は今は全て地中にあるのだ。


「扶桑様も、多分もっと大きくなってから使うと予想していたんでしょうが、ソウヤ様がこんなにも予想外の精神面の発育の良さで……」

「若君、見かけは子供、中身はおっさんなんスよね……」

「うぇひ……わかります」


 マギネ。その言い方はやめて欲しい。

 変なフラグが立って死人が出るから。アカシアも同意しないように。

 それにまだ三十路にもなってない、エルフなら幼児の年齢だ。おっさん呼ばわりは不本意である。


「しょうがない、ちょっと我慢しろよ木野」


 あっ、ろくでもない予感がする。でもどうにもならないのもわかる。


「若き聖樹よ、土地のしるべに従い手を伸ばせ、葉を広げ、枝を伸ばして我が意に従え」


 エーリュシオンさんがそう呪文のようなものを唱え、光る指で俺の枝に触れた。

 パキッと、身体から音がした気がする。


「パキッ!?」


 以前、普通のどんぐりの芽にどんぐり汁をかけたときのように、急に俺の身体が育ち始める。全身からパキパキと枝が折れるような音がする。

 折れるような、じゃなくて、折れてる気がする。


 痛い?

 ……痛い。けっこう痛い。

 目に見えるスピードで枝が伸び、葉が生える。


「い! いたっ! いってえええええええええ!」


 全身に、こむら返りに似た強烈な痛みが広がっていく。どこか一箇所だけなら耐えられるが、全身である。しかも、根も痛い。


「無理! めちゃ痛い! エーリュシオンさん!」

「もうちょっと我慢しろ」

「ぐええええええ!」

「枝が伸びたら動かせるようにしてやるから我慢しろ」


 エーリュシオンさんがそう言うが、痛いものは痛い。俺の絶叫はまだまだ続く。


「エーリュシオン様、因みにこれ、人間で例えるとどのくらい痛いんです……? ソウヤ様、大丈夫なんですよね?」


「うーん、強制的にこむら返しを全身にを起こして治癒魔法する感じ? もちろん大丈夫だとも! 僕の魔法だぞ!」


「絶妙に痛そうッスね……」

「普通の成長魔法は世界樹にはちょっと弱いんだよな。これなら効果はすぐ出るし、抜群だぞ!」


 エルシーさん、そしてアカシアとマギネまでが微妙な顔で俺を見ていた。

 見ても聞いても絶妙に痛すぎるけど、すぐ止めるほどでは無いんだよな。絶妙だ。まあ、すごく痛いんだけど……。


 数分苦しみ悶えた結果、二十センチほどだった俺は三十センチほどに成長していた。


 そして、その分枝も伸びていた。特に、枝の先。多くに分かれていて、まるで手のようだった。


「どうだ、木野! 手を動かすつもりで枝を動かしてみろ」


 エーリュシオンさんがドヤ顔でおっしゃるので、息も絶え絶えながら動かしてみる。

 そうすると、思ったように枝が動いた。


「うわー、すっげー! これ便利じゃん!」

 

 俺が感動していると、他の面々は


「う、動いた!?」

「キモ! ありえないっス!」

「食人樹以外で枝が滑らかに動くの始めてみました……」

『……わしもです。人食い植物のツルのように滑らかな動きですな……』


 なんとも微妙な反応である。そしているんだ、食人樹とかいう物騒な植物。

 ファンタジー世界はこれだから……。


 それにしても俺一応世界樹だぞ。人食い植物はちょっとひどいいいようだと思う。

 人権保護組織とかがあれば訴えたい。

 俺、人じゃないけど。



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