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元社畜、どんぐりに転生する【完結】  作者: 芥部


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第30話 契約の意味は


 白く光る半透明さんはこちらに光る手を伸ばした。


「木野、手を伸ばせ」

「どうやって!?」


 俺、四葉ぞ。


「伸ばそうと思えば伸びるだろ、魂の方だよ」


 なんとなく、半透明さんに手を伸ばした気持ちになる。

 すると、半透明さんの手が、なんと俺の前世の手に触れたような不思議な感覚があった。

 柔らかくて、そよ風のように温かだった。


「我が名はエーリュシオン、最古の祝福地。原初はじまりの神の下僕にして大地を統べる者。木野草也の庇護者なり。原初の神、天空の星、そして陽の光よ、この契約を見届けたまえ────!」


 手から、温かな力が流れこんで、まばゆい光に視覚が奪われる。

 身体が暖かくなって、力が全身を駆け巡る。


 身体が分解されて、組み替えられ、意識がどこか遠くに引きあげられた。

 気がつくと銀髪のキラキラと光る少女と一緒に手を繋いで、空にいた。


 見下ろすと祝福地が光り輝き、猛烈な勢いで花を咲かせながら面積を広げている。

 よく見ると、下にいるのはエルシーさん、マギネ、シオン、リオネちゃん。流石に男爵は小さくて見えないな……そして、四葉の俺。


「うん、これでお前は僕の世界樹だからな、木野」

「えっ、ちょ、待って……」


 ぼくのせかいじゅってどういうことですかー……!?

 確認する前に意識が途切れた。


 どのくらい経ったのだろう、目を覚ますとドヤ顔の銀髪美少女──さっき俺と手を繋いでいた──が俺を見てニヤニヤ笑っていた。


「いい名前のお陰で、良い外見だ。感謝するぞ木野。僕にふさわしい外見じゃないか?」


 あ、半透明さん……じゃない、エーリュシオンさんか。銀髪に銀色の目。

 白いドレスを着た神々しい美少女である。エーリュシオンさん、僕っ娘だったか。


「そうですね、似合ってると思います! ゴリラとか言わなくて本当に良かったです」


 直後、ズガーン。音と共に身体をつんざくような激痛が走る。


「いってえええええええええ!!!!」


 心からの褒め言葉のつもりだったのだが、無言で静電気を超える電撃が発射された。解せぬ。あとものすごく痛い。エルシーさんにはダメージがないことが幸いである。


「ゴリラってのはわからないけど、なんか僕に似合わないものなことだけはわかるぞ!」

「誤解です! 本当に誤解です!」


 俺は涙目になりながら叫ぶ。


「エーリュシオン様、本当に誤解ですよ。ソウヤ様は他の候補も素敵なお名前を考えておいででした」

「ほんとかー?」


 めっちゃ疑わしい顔で俺を見ている。俺の信用のなさすごいな。


「本当ですぅー!」


 俺の悲しみの叫びが、新生祝福地エーリュシオンに響いてい消えていった。


 十分後、俺は息をついた。


「誤解が解けてよかった……」


 お叱りなら魂のブラック企業パッシブスキルで受け流せるのだが、お仕置き(物理)はそれが不可能である。

 異世界にはコンプライアンスがない。

 かよわい世界樹の四葉なのだから、もっと優しくされたい。


「まあ他の二つもいいけどな、このエーリュシオンてやつがやっぱ一番いいよ。命名ご苦労」


 エーリュシオンさんはいたくご機嫌である。


「"シオン"が含まれる名前ってのにセンスを感じるね」


 なるほど、そこか。

 因みに他の二つの候補は『スカーヴァティー』と『アヴァロン』だった。

 半透明さんの名前でもあるが、土地の名前でもある。

 どちらにしてもかっこよく、意味的にも良いものを考えた結果でたのがこの三つだった。

 でも言われてみれば、名付け親にしようとしていたほどのエルフの名前が入っている名前なのだ、気に入らないわけがなかったな。


「あっ、ソウヤ様、芽……ではなく、なにか蕾がついていませんか?」

「えっ、俺生まれたばかりの…ええと、たしか九日目の四葉なんだけど……?」

「あ、本当だ。若君様成長してますねー。うぇひひ……」

「季節外れの蕾、マジうけるッス!」


 この学者肌ペアはブレないな……。少しくらい心配して欲しい。


「僕と契約したんだからね、少しは身ぎれいにしておきなよ」


 エーリュシオンさんは済まし顔で言う。

 命名したせいで何かが育ったのかな。成長が早いのは良いことだ。多分。


「まあ、でも無事に命名が終わってよかったです。リオネちゃん、そういえばエーリュシオンさんに用事があったのでは?」

「あっ……はい! エーリュシオン様、今まで悪い子でした、ごめんなさい! あの、これっ……返します。」


 カバンから取り出したのは、きれいなドライフラワーの花冠だった。


「ふむ」


 ひょい、エーリュシオンさんは軽く受け取ると、自分の頭に乗せた。

 指で軽く花冠を弾くと、ドライフラワーだった花冠が急に生気を取り戻し、生花の冠に変わり、花の香りが漂う。


「女の子たちに競うように作られると、蜂や蝶が食事と行き場を失ってしまうから駄目なんだけどね。君のこの花冠は美しいな。たまになら作っていいよ。僕はこれ、気に入ったな」

 花冠を戴くエーリュシオンさんは、花の女神もかくやの美しさだ。

 祝福地の精霊だから、かなり近いものはあるかもしれない。


「あああああああ、エーリュシオン様、ありがとうございますうう!」


 絶叫するリオネちゃん。

 そのありがとうございます、がどこにかかるありがとうなのか、若干気になる……。


「エルシーお姉様に、エーリュシオン様……美しいものに囲まれて……私は、私はっっ……!」


 あー、やっぱそっちのありがとうでしたか。

 薄々感づいてはいた。だってシオンの兄だもんな……。

 限界オタクブラザーズだったか。


「シオン、お前の兄は面白いね」

「にーちゃん……。でもエーリュシオンさま、ゆるしてくれてありがとう。おれもうれしい。おなまえも、よべるようになったのもうれしい」


 エーリュシオンはニヤリと笑った。


「これで、大体解決かな」

「そうだな、木野。よくやったな」

「ありがたき幸せ」


 俺は魂で記憶の中の漫画にいた執事のようにお辞儀をしてみせた。


「お前、本当に珍しいな。扶桑も礼儀は正しかったが、お前みたいに腰が低くはなかったぞ」

「俺は元ブラック企業の社畜ですから……」


 俺は遠い目をした。

 そういえば、俺の死体、どうなったんだろうな……。死んだのは間違い無いんだろうけどさ。

 誰かの迷惑になってたり、困らせることになってなければ良いんだが。

 もう火葬とかされてるのかな。なんか死んだはずなのに現実感がないままだ。


「はー、祝福地の命名なんて、二千年生きてても一回も見れないイベントですよね……見られて幸せです……『記録』に残しときますよぉ……うぇひひ……」

「わかるッス……。契約直後の領域拡大現象が凄すぎて。魔法研究者としてこれを生で見られたのは本当に良かったっす……」

「ソウヤ様がエーリュシオン様と契約なさるなんて、守護者として大変嬉しいです! このまま成樹まで立派に成長しましょうね!」


 エルシーさんが喜んでいるので頑張って考えてよかったな。

 前世のオタク知識と通勤電車で暇つぶしに読んでた百科事典Wikiの知識よ、ありがとう。趣味げいは身を助くってホントダナー。


『エーリュシオン様、我が主、ご契約誠におめでとうございます……!』


 男爵がプルプルしてるのを見て、シオンが周りでハラハラし始めている。

 大丈夫だよ、嬉し泣きっぽいし。とは思ったが、あえて口には出さなかった。無粋だからね。

 なんか、身体も心も軽い。今日はよく寝られそうだ。


「よーし、じゃあ今日は、もう帰るか!」


 俺はさっぱりした気持ちで叫んだ。


「えっ??」


 皆が斉唱する。


「えっ?」


 俺も疑問だ。皆さん、なんで『えっ?』なの?


「木野、お前、契約の意味わかってなかったのか?」


 エーリュシオンさんが、エーリュシオンさんになって最初のキレ顔を披露しておられる。

 キレ顔もかわいい。しかし、俺には叱られポイントが判らぬ。


「俺ちゃんと名前、つけましたよね!?」

「名前をつけるってことの意味教わってないのか、木野ぉ!」

「えっ。かっこいい名前をつけて、半透明さんを美人の神様にレベルアップさせれば良いんですよね? それは成功してるしオッケーじゃないんですか?」

「こら、守護者! なんだこのボンクラ世界樹は! 僕に対して失礼すぎるぞ、しつけがなってない!」


 エーリュシオンさんの怒りがエルシーさんに向かう。ヤバい。俺はいくらお仕置きされてもいいが、エルシーさんにお仕置きは困る。


「ソウヤ様はお優しいし、才能あふれる、いい世界樹様なんです! でも!」


 エルシーさんが俺をかばってくれる。優しい。……でも?


「でも?」

「常識が、壊滅的に、無いんです……っ!!」

「あー……」

「わかるッス」


 あっ、マギネ! お前はこっち側だと思ってたのに!

 こいつにだけは言われたくかったなあ。



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